6 / 110
■5 初めての依頼
しおりを挟む騎士団長との契約が成立した次の日、私達はギルドに赴いていた。
このサーペンテイン王国で獣と契約している人が珍しいらしく、当然私とルシルに視線が集まる訳で。早く依頼を選んで行こうと思い直で依頼ボードに。
貼ってあるのは採取だったり、討伐だったり、護衛だったり。
私は今FランクだからFかEだよね。そうだな……
「コボルト、ゴブリンあたりがいいかな……えっ、美味しくない?」
隣にいたルシルが視線で訴えてきた。えぇえ、でもこれ以上は受けられないよ?
あ、でも依頼を受けなくてもいいのか。
「ちゃんとゴブリンとコボルトを倒せたら違うの食べていいよ。それでいい?」
おぉ、満足顔だ。
そうして、依頼書を受付に持っていき受注した。
「え、もう倒したの?」
薬草採取中にもうお亡くなりモンスターを複数咥え、背中にも乗せて持ってきたルシル。体の大きさを変えることのできるルシルは、いつもより大きな身体で運んできたのだ。凄い血塗れですよ?
『展開』
水魔法_______
『Aqua』
目の前に降ろされたコボルト5体を血抜き。耳をナイフで切り落として、モンスター用の収納魔法陣へ投げ入れた。
そうしてルシルも血を落としてあげようと思った時にはもう彼女はいなかった。次の依頼、ゴブリン10匹を狩りに行ってしまったらしい。
「さすがグリフォン……」
このままじゃ私が採取終わる前にルシルが終わっちゃう。
今回、私は採取の依頼の他に自分が使う材料を取りに来た。あの昨日契約したポーションの材料だ。
あの時、材料の提供は断った。あの錬金術のお店の状態を見たからだ。ああいった材料を渡されてしまうと、かえって大変になってしまうし、騎士さん達も大変だろう。
それに、王宮の騎士団の他に扱っているお店にも納品しようとも思っている。
アルさんに、サーペンテイン王国自体ポーションなどが回っていないと教えてくれた。だとしたら、ギルドに所属しているハンター達にも十分に回っていない事になる。
なら、作って出回らせればいい。まぁ、材料を採取するのには限りがあるから大変ではあるけれど。後で、扱っている店を見つけて納品させてもらえないか見つけなければ。
「あった!」
やぁーっと見つけたわよ! クレカ鉱石!!
「会いたかったよ~。よし、『展開』!」
火魔法_____
『Ignis』
クレカ鉱石と、収納袋の中に入れておいたメリカ銅。そして火魔法。
『Creare』
三つが聖水と溶け合って、形を成す。出来上がったのは、ナイフだ。
「ちょっと欠けちゃってたからね、新調できて良かった!」
材料に使ったのは、どちらも非常に頑丈で硬い鉱石。しかもだいぶ扱いずらい。もし鍛冶屋にこれを持っていったら嫌がられる代物だ。
だから、毎回自分で錬成して作っている。今回は結構切れ味がいいかもしれない。
試し切りで採取していた木の幹を斬り落とす。と、軽く振っただけでドサッと音を立てて落ちてしまった。やっぱり、大きさの割には大きなものでも簡単に切れる。
「うん、いい感じ」
葉っぱと木の枝を選別して、いい物だけをどんどん収納袋へ入れ魔法陣に。うん、これだけあれば沢山ポーションを作れるね。じゃああとはエクリカ鉱石を大量に集めなければ。
これから薬瓶が大量に必要になってくるからね。あ、出来上がったものを収納するための木箱も沢山用意しなきゃいけないなぁ。
一体私は材料をどれだけ集めなければいけないのだろうか。
「これ全部集めたら明日は宿の部屋で籠って錬成しまくりだね」
5日後に取りに来ますと連絡が来ていた気がする。
その前にこれ全部終わらせなきゃいけないなぁ。とは思っても、今までの鍛錬で何徹もした時に比べればなんてことないわね。あっはは。
「あら、お帰りルシル……毎回思うけれど、よく10匹背中に乗せてこられるね」
力持ち? いや、あぁあとバランス感覚の問題?
「……」
「はいはい、血抜きね」
血抜きで一部分を一匹ずつ採取し始めた時にはまたもやもうルシルの姿は消えていて。お腹が空いて狩りに出かけたようで。
まぁいいや、ルシルのお陰で依頼を達成できそうだし。依頼の報酬はルシルのお陰で貰えるんだし。
「これで、何日かはルシルのご飯に困らないね」
そんな事を言いながら収納魔法を開いてモンスターを収納していった。
15
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?
海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。
そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。
夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが──
「おそろしい女……」
助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。
なんて男!
最高の結婚相手だなんて間違いだったわ!
自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。
遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。
仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい──
しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる