大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫

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■2 サーペンテイン王国

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「見えました! あれがサーペンテイン王国の首都です!」


 空に上がり、彼の指さす方角の先に沢山の建物が密集している場所を見つけることが出来た。ルシルちゃんのおかげで1時間で首都の城門まで辿り着くことが出来たのだった。


 サーペンテイン王国首都には城壁で囲ってあるのが見えた。降り立ち近くで見ると、城壁には頑丈な《碧鉱石》が使われていて、マナを大量に込め固定されている。ちょっとやそっとじゃ壊れなさそうだ。

 通るために城門に立っている兵士に、アルさんが何か首にかけていたらしい小さな四角いものを見せているのが見えた。

 そして、何かを話しながら私とルシルを見ていて。

 吃驚した様子でどうぞどうぞと冷汗をかきながら通してくださった。一体何を言ったのだろうか。


「ここが、首都……」

「はい!」


 まだ門をくぐっただけなのに、とても素敵な国だと感じる。夕方にもかかわらず、とても活気があって、国民には元気がある。


「こんな時間ですから、とりあえず宿にご案内いたしますね」

「アルさん、そんな畏まらないでください」

「えぇっ!?」

「お願いですから」


 あれから、王宮にお連れしますって言われ、何か面倒事に巻き込まれてしまう事は確実だと思い「嫌です」ときっぱり断った。ただ助けたってだけでそこまでする必要は全くない。

 彼は、ん゛ん゛~っと悩みに悩んで善処しますと返してくれた。


「あら! アルじゃない、お帰りなさい。って、え、何々彼女連れ!?」


 綺麗な宿に連れてきてもらったかと思ったら、受付に立っていた美人さんにそんな事を言われていて。彼女って私の事か。申し訳ない。


「なっ!? なわけないだろ!! この人は、ゆ、友人だ!!」


 慌てた様子で、それよりも部屋空いてるかと聞くアルさん。丁度一部屋だけ空いていたらしい。

 後ろの備え付けられている沢山のテーブル席にはお酒や料理を楽しんでいるお客人が沢山いる。それだけ人気な宿らしい。


「ベットもう一つ用意してあげよっか?」

「俺は泊らないっ!!」

「えぇ~、残念」


 友人、なのだろうか。凄く仲がいいね。


「す、すみません。幼馴染なんです」

「初めまして、ここの店主のルナンよ。分からないことがあったら何でも聞いて!」

「ステファニーです、よろしくお願いします」

「とりあえず、長期宿泊でいいですか? 食事付きで」

「あ、はい。お金はこれでいいでしょうか」

「ちょちょちょちょっと待ってください!!」


 私が出した硬貨に驚いたアルさんは私の手の中にある硬貨を手で隠す。そしてコソコソ話。


「そっその硬貨! 一体どこで……」

「え?? だいぶ前に寄った町で手助けしたら、気持ちだって貰ったんです。マズかったですか??」

「そ、それは、ずいぶん前に使われていた物なんです。素材が不足し、今のこの硬貨に変わったんです。とりあえずそれは仕舞ってください、絶対に出してはいけませんよ!!」

「は、い……??」


 まさか、未開拓地を彷徨っていた間にこうなっていたとは知らなかった。すみません、アルさん。

 それに、ここは私が出します、助けて頂いたんですからそれくらいは払わせてください。とまで言われてしまい、お礼しか言えなかった。

 そうして案内されたのは綺麗なお部屋で。荷物を綺麗にベッドメイキングされたベッドの上に置いた。

 そういえば、ルシルちゃんのご飯を考えなきゃ。ルシルちゃんはいつもモンスターの肉を毎日食べていた。実はこの子、結構食べるのだ。

 困ったな。どうしたものかと先程のルナンさんに聞いてみると、


「あら、こんなに小さくて可愛いのに! そうねぇ、それなら知り合いに精肉店の店主がいるから、持ってきてもらうよう頼んであげる!」


 代金はアルに請求するから、いっぱい頼んであげるね! と悪戯をする子供のような顔をしていた。いいのかな……まぁ、早くお金を稼いで返そう。

 それから、私達は空いた席へ。


「さ、どれがいい??」


 そうして渡されたのは……薄くて文字が書いてある四角いもの。


「これ、何ですか??」

「え? メニューだけど」

「違います、これです」

「……えっ!? あなた、紙を知らないの!? 外国から来たらしいけれど、どれだけの田舎から来たのよ!?」

「え??」

「これは紙っていう、文字とかを書く時に使用されるものなのよ。この国、いやほとんどの国に使われるものだから、そこら中にあるの。
 ほんっと吃驚!! まぁその服装を見て田舎だと思っていたけれど、そこまでとはね……」

「あ、はは」


 ま、まぁ確かにそうだ。筆記の際に使われる物って言うと……木を薄く切断して使うものだと思っていたのに……ここまで発展しているとは。知らなかった。後で買ってみよう。


「この服、目立つから後で見繕ってあげるよ。何でもいい?」

「え、でも……」

「いーよいーよ、私がやりたいって言ってるんだから気にしないで。私のお店に泊まってくれるお客様なんだから、おもてなしの一つだと思って。どうせ請求先はアルだしね~」

「あ、はは……じゃあ、お願いします」

「素敵なの選んであげるから楽しみにしてて!」


 じゃあ料理はおすすめでいい? と聞いてくれてそれでお願いしますと言うと楽しそうに戻っていったルナンさん。数分後に持ってきていただいたお肉と、私の夕飯がテーブルに並んだ。

 生肉が並んだお皿を見たルシルちゃんは大喜び。どうやらお気に召したようだ。

 さぁ、私も食べよう。見たことのない食材達が調理され、いい匂いを嗅ぐわせている料理。

 添えられた、フォークと呼ばれる銀色の道具を持ち、周りの人達と同じように使って。この白い野菜を刺し口の中に運ぶと、口の中で野菜の味が広がった。自然とフォークは次の野菜を突き刺していて、口に運ぶ。その手が止まらない。

 この野菜達も、このお皿の主役であるお肉も、何と美味しいものなのだろうか。今まで味わったことのない、素晴らしいものだった。




 今までは殆ど未開拓地を旅してきたが、こんなのは久しぶり過ぎて、知らないものも沢山あってわくわくが止まらない。


「ご飯、美味しかったね、ルシル」


 お腹いっぱいで眠たそうな彼女はもうタオルケットに包まって夢の中に飛び立とうとしている。

 さあ、明日が楽しみだ。一体どんなもの、人に出会えるだろうか。

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