3 / 110
■2 サーペンテイン王国
しおりを挟む「見えました! あれがサーペンテイン王国の首都です!」
空に上がり、彼の指さす方角の先に沢山の建物が密集している場所を見つけることが出来た。ルシルちゃんのおかげで1時間で首都の城門まで辿り着くことが出来たのだった。
サーペンテイン王国首都には城壁で囲ってあるのが見えた。降り立ち近くで見ると、城壁には頑丈な《碧鉱石》が使われていて、マナを大量に込め固定されている。ちょっとやそっとじゃ壊れなさそうだ。
通るために城門に立っている兵士に、アルさんが何か首にかけていたらしい小さな四角いものを見せているのが見えた。
そして、何かを話しながら私とルシルを見ていて。
吃驚した様子でどうぞどうぞと冷汗をかきながら通してくださった。一体何を言ったのだろうか。
「ここが、首都……」
「はい!」
まだ門をくぐっただけなのに、とても素敵な国だと感じる。夕方にもかかわらず、とても活気があって、国民には元気がある。
「こんな時間ですから、とりあえず宿にご案内いたしますね」
「アルさん、そんな畏まらないでください」
「えぇっ!?」
「お願いですから」
あれから、王宮にお連れしますって言われ、何か面倒事に巻き込まれてしまう事は確実だと思い「嫌です」ときっぱり断った。ただ助けたってだけでそこまでする必要は全くない。
彼は、ん゛ん゛~っと悩みに悩んで善処しますと返してくれた。
「あら! アルじゃない、お帰りなさい。って、え、何々彼女連れ!?」
綺麗な宿に連れてきてもらったかと思ったら、受付に立っていた美人さんにそんな事を言われていて。彼女って私の事か。申し訳ない。
「なっ!? なわけないだろ!! この人は、ゆ、友人だ!!」
慌てた様子で、それよりも部屋空いてるかと聞くアルさん。丁度一部屋だけ空いていたらしい。
後ろの備え付けられている沢山のテーブル席にはお酒や料理を楽しんでいるお客人が沢山いる。それだけ人気な宿らしい。
「ベットもう一つ用意してあげよっか?」
「俺は泊らないっ!!」
「えぇ~、残念」
友人、なのだろうか。凄く仲がいいね。
「す、すみません。幼馴染なんです」
「初めまして、ここの店主のルナンよ。分からないことがあったら何でも聞いて!」
「ステファニーです、よろしくお願いします」
「とりあえず、長期宿泊でいいですか? 食事付きで」
「あ、はい。お金はこれでいいでしょうか」
「ちょちょちょちょっと待ってください!!」
私が出した硬貨に驚いたアルさんは私の手の中にある硬貨を手で隠す。そしてコソコソ話。
「そっその硬貨! 一体どこで……」
「え?? だいぶ前に寄った町で手助けしたら、気持ちだって貰ったんです。マズかったですか??」
「そ、それは、ずいぶん前に使われていた物なんです。素材が不足し、今のこの硬貨に変わったんです。とりあえずそれは仕舞ってください、絶対に出してはいけませんよ!!」
「は、い……??」
まさか、未開拓地を彷徨っていた間にこうなっていたとは知らなかった。すみません、アルさん。
それに、ここは私が出します、助けて頂いたんですからそれくらいは払わせてください。とまで言われてしまい、お礼しか言えなかった。
そうして案内されたのは綺麗なお部屋で。荷物を綺麗にベッドメイキングされたベッドの上に置いた。
そういえば、ルシルちゃんのご飯を考えなきゃ。ルシルちゃんはいつもモンスターの肉を毎日食べていた。実はこの子、結構食べるのだ。
困ったな。どうしたものかと先程のルナンさんに聞いてみると、
「あら、こんなに小さくて可愛いのに! そうねぇ、それなら知り合いに精肉店の店主がいるから、持ってきてもらうよう頼んであげる!」
代金はアルに請求するから、いっぱい頼んであげるね! と悪戯をする子供のような顔をしていた。いいのかな……まぁ、早くお金を稼いで返そう。
それから、私達は空いた席へ。
「さ、どれがいい??」
そうして渡されたのは……薄くて文字が書いてある四角いもの。
「これ、何ですか??」
「え? メニューだけど」
「違います、これです」
「……えっ!? あなた、紙を知らないの!? 外国から来たらしいけれど、どれだけの田舎から来たのよ!?」
「え??」
「これは紙っていう、文字とかを書く時に使用されるものなのよ。この国、いやほとんどの国に使われるものだから、そこら中にあるの。
ほんっと吃驚!! まぁその服装を見て田舎だと思っていたけれど、そこまでとはね……」
「あ、はは」
ま、まぁ確かにそうだ。筆記の際に使われる物って言うと……木を薄く切断して使うものだと思っていたのに……ここまで発展しているとは。知らなかった。後で買ってみよう。
「この服、目立つから後で見繕ってあげるよ。何でもいい?」
「え、でも……」
「いーよいーよ、私がやりたいって言ってるんだから気にしないで。私のお店に泊まってくれるお客様なんだから、おもてなしの一つだと思って。どうせ請求先はアルだしね~」
「あ、はは……じゃあ、お願いします」
「素敵なの選んであげるから楽しみにしてて!」
じゃあ料理はおすすめでいい? と聞いてくれてそれでお願いしますと言うと楽しそうに戻っていったルナンさん。数分後に持ってきていただいたお肉と、私の夕飯がテーブルに並んだ。
生肉が並んだお皿を見たルシルちゃんは大喜び。どうやらお気に召したようだ。
さぁ、私も食べよう。見たことのない食材達が調理され、いい匂いを嗅ぐわせている料理。
添えられた、フォークと呼ばれる銀色の道具を持ち、周りの人達と同じように使って。この白い野菜を刺し口の中に運ぶと、口の中で野菜の味が広がった。自然とフォークは次の野菜を突き刺していて、口に運ぶ。その手が止まらない。
この野菜達も、このお皿の主役であるお肉も、何と美味しいものなのだろうか。今まで味わったことのない、素晴らしいものだった。
今までは殆ど未開拓地を旅してきたが、こんなのは久しぶり過ぎて、知らないものも沢山あってわくわくが止まらない。
「ご飯、美味しかったね、ルシル」
お腹いっぱいで眠たそうな彼女はもうタオルケットに包まって夢の中に飛び立とうとしている。
さあ、明日が楽しみだ。一体どんなもの、人に出会えるだろうか。
5
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

大聖女様 世を謀る!
丁太郎。
恋愛
前世の私は大賢者だった。
転生した私は、今回は普通に生きることにした。
しかし、子供の危機を魔法で救った事がきっかけで聖女と勘違いされて、
あれよあれよという間に大聖女に祭り上げられたのだ。
私は大聖女として、今日も神の奇跡では無く、大魔術を使う。
これは、大聖女と勘違いされた大賢者の
ドタバタ奮闘記であり、彼女を巡る男達の恋愛争奪戦である。
1話2000〜3000字程度の予定です
不定期更新になります

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ
柚木 潤
ファンタジー
実家の薬華異堂薬局に戻った薬剤師の舞は、亡くなった祖父から譲り受けた鍵で開けた扉の中に、不思議な漢方薬の調合が書かれた、古びた本を見つけた。
そして、異世界から助けを求める手紙が届き、舞はその異世界に転移する。
舞は不思議な薬を作り、それは魔人や魔獣にも対抗できる薬であったのだ。
そんな中、魔人の王から舞を見るなり、懐かしい人を思い出させると。
500年前にも、この異世界に転移していた女性がいたと言うのだ。
それは舞と関係のある人物であった。
その後、一部の魔人の襲撃にあうが、舞や魔人の王ブラック達の力で危機を乗り越え、人間と魔人の世界に平和が訪れた。
しかし、500年前に転移していたハナという女性が大事にしていた森がアブナイと手紙が届き、舞は再度転移する。
そして、黒い影に侵食されていた森を舞の薬や魔人達の力で復活させる事が出来たのだ。
ところが、舞が自分の世界に帰ろうとした時、黒い翼を持つ人物に遭遇し、舞に自分の世界に来てほしいと懇願する。
そこには原因不明の病の女性がいて、舞の薬で異物を分離するのだ。
そして、舞を探しに来たブラック達魔人により、昔に転移した一人の魔人を見つけるのだが、その事を隠して黒翼人として生活していたのだ。
その理由や女性の病の原因をつきとめる事が出来たのだが悲しい結果となったのだ。
戻った舞はいつもの日常を取り戻していたが、秘密の扉の中の物が燃えて灰と化したのだ。
舞はまた異世界への転移を考えるが、魔法陣は動かなかったのだ。
何とか舞は転移出来たが、その世界ではドラゴンが復活しようとしていたのだ。
舞は命懸けでドラゴンの良心を目覚めさせる事が出来、世界は火の海になる事は無かったのだ。
そんな時黒翼国の王子が、暗い森にある遺跡を見つけたのだ。
*第1章 洞窟出現編 第2章 森再生編 第3章 翼国編
第4章 火山のドラゴン編 が終了しました。
第5章 闇の遺跡編に続きます。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる