厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

文字の大きさ
上 下
45 / 47
第二章

◇29 嫉妬心丸出しだな

しおりを挟む
 使用人が俺達を呼びに来るのを待っていたら、ピモが何かをふところから取り出した。


「では奥様、僭越せんえつながら私達から奥様にプレゼントをご用意しました」


 どうぞ受け取ってください、と出してきたのは……プレゼントボックス。背の低い手のひらサイズだ。これに何が入っているのだろうか。

 開けてみると……うわぁ、なんだこれ。カチューシャ?


「皆で出し合って特注でご用意いたしました」


 葉っぱと花の形が並べられた、金属のカチューシャ。金色だ。


「宝石まで付いてるじゃん。特注だなんて、結構高かっただろ」

「前々から用意はしてはいたのですが、思わぬ収入がありましたので」


 ……あれか、チェス大会。用意した小切手は結構高かったからな。なるほど、そういう事か。

 自分の為に使えって言ったのにさぁ、ここで使っちゃうのかよ。まぁ、使い道は本人達の勝手だけどさぁ。


「うん、ありがとう。嬉しいよ」

「そう言っていただけて光栄です」


 でも、これ俺に似合うか? まぁ、今日は髪を金色のアクセサリーで止めてはいるけど……


「これ、選んだのピモか」

「いえ、デザインはテワールです」

「さすがだな」


 ぴったりじゃん。こんな特技があったのか、あいつ。今までアクセサリーとか付けた事がなかったから知らなかったけど。服だって気にしたことなかったし。

 マジか……


「これ、ヴィル知ってるの?」

「知っておりますよ? それで、こちらは旦那様から預かったものです」

「……マジか」


 またまた貰ったプレゼントボックス。そして中身は……ネックレスか。もこもこの服の上から付けるやつだろ、これ。

 まさか、張り合ってるのか。分かりやすい奴だな。


「さすが旦那様ですね」

嫉妬心しっとしん丸出しだけどな」

「いつものことではありませんか」

「まぁそうだけどさ」


 アクセサリー付けすぎは嫌なんだけどなぁ……いつも付けてる指輪とピアスもしてるし。

 まぁでも、晴れ舞台だからいっか。


 そうこうしているうちに時間になり、使用人が俺達を呼びに来た。旦那様がお待ちですよ、と。さ、本番だ!

 よっしゃ気合い入れるぞ~! と、思っていたその時。


「……マジか」

「リューク」


 この世界での結婚式は、バージンロードを新郎と新婦の二人で歩く。だから当然扉の前にヴィルがいるのだが……

 ……これは、やばい。

 くるっと回って恐ろしい姿のヴィルに背を向けた。俺、今日大丈夫かな。そんな危機感を覚えるのだが。

 何あのイケメン、100割増しだろ、あのタキシード。あと、あの微笑付き。ミヤばぁさん、あなた恐ろしいものを作ってしまいましたね。

 そう思っていたら、トントン、と肩を叩かれた。その相手は他でもない、ヴィルだ。


「どうした、リューク」

「……もう白は着ないでください」

「ククッ、リュークがそう言うのであればそうしよう」


 ……いや、例えタキシードや白を着ていなくてもヴィルは殺傷効果さっしょうこうか抜群のイケメンだ。もうこれは終わったな。諦めた方がいい。


「リューク、そんな事よりもリュークのドレス姿をもっと見たいんだが?」

「……」


 いや、これはそんな事よりもじゃないだろ。重要案件だろ。


「こっちを向いてくれないか」

「……あ~も~ほらっ!! これでいいでしょっ!!」


 そう言ってくるっとヴィルの方に戻り、両手を広げて見せた。色々と恥ずかしいが、今日は初めてのパンツドレス。ミヤばぁさんの力作なんだから見てもらわないと意味がない。


「……」

「……」


 ……おい、なんか言えよ。何真顔で……と、思ったら抱きしめてきた。


「これが見たかった」

「あ、はい、そうですか」

「よく似合ってる、リューク」

「ミヤばぁさんの腕がいいんですよ」

「リュークは美人だから何を着てもよく似合う」


 ……いや、それはお前の方だろ。何が美人だ。と、思っていたら……首元にチクリと痛みがあって。


「こらっ!」

「見えないところだから別にいいだろ。本当はこんなに綺麗なリュークをアイツらに見せたくないんだ。このまま屋敷に連れて帰りたいと思っているが、それではリュークが怒るからな。だから結構我慢がまんしてるんだ。これくらい大目に見てくれ」


 おい、何恐ろしい事言ってるんだこの人は。俺を屋敷に連れて帰りたいだって? じゃあその後どうなるんだよ。


「……はぁ、しょうがないですね。……って! 何また付けてるんですか!」

「これで最後だ」


 はぁぁぁぁぁ……勘弁してくれよ、全く。これから結婚式だってのにさぁ。


「早く行きましょう、ヴィル。みんなが待ってますよ」

「そうだな、俺の妻が怒り出すと大変だ」


 分かってるならやるなよ。

 なんて思いつつも、待機していた(気付かなかった)使用人達に扉を開けてもらった。めっちゃ恥ずかしいけど今は我慢がまん。そして、二人で一歩を踏み出した。

 長いレッドカーペットの先にあった祭壇、そしてカーペットの両脇に設置されてる椅子には、今日来てくれた、俺のよく知る人達ばかり。


「……マジですか」

「お前の家族だろ」

「そうですけど……」


 なんで元離宮使用人達がいるんだよ。しかもウチに就職したテワール、タリシス、ボレスの他のやつら全員。え、呼ばれたのか? 実家に帰ったやつもいたよな。あ、まぁ、今夏だから移動魔法陣使えばここには簡単に来れるけどさ。

 ……おい、何泣いてるんだよ。泣くところじゃないだろここ。


「……ありがとうございます」

「俺じゃないぞ。言ってきたのはあの3人だ。俺はただそれを許可しただけだ」

「……」


 お前ら……何勝手な事してるんだよ。一言言えよ、一言。全く……と、心の中でため息を一つ吐いてしまった。まぁ、嬉しいことに変わりはない。


「煩いもんだな」

「自由人ばっかりなので、大目に見てください……」

「分かった」


 大泣きだぞアイツら。テワール達も。まぁ、小さい頃から俺の事を知ってる家族だしな。けど、もうすでに1年前に結婚してたんだが。

 とりあえず、この後行ってやるか。元気か、って。

 なんて小声でヴィルと喋っていたらいつの間にか祭壇に到着していて。神父だろうか、筋肉ムキムキの方が待ち構えていた。筋肉ムキムキって事はこのメーテォス領の領民なんだろうなぁ。と思いつつも話している言葉を聞いていた、が……

 なんか、色々と端折はしょりすぎないか? 俺がピモから聞いたものよりだいぶ短いぞ。あ、まぁ、ヴィルが短く済ませるって言ってたけど、ここも端折はしょるのか!? いや、ここ大事な事だろ!!


「誓います」


 あ、待て待て、落ち着け俺。何考えてるんだって視線を隣の奴から感じるけど集中しろ。聞かれてるぞ。


「は、はい、誓います」


 とりあえず、あとで問いただそう、そうしよう。なんて思いつつ、ジト目を向けつつもヴィルと向き合った。

 そんな俺の視線に、一体どういう事だと分かっていない様子だ。いや、そこ普通に理解するところだぞ。

 ヴィルが、俺の両頬を両手で包み、そしてキスをしてきた。すごく幸せそうに微笑んでいる。はぁ、しょうがないな。なんて思いつつ、離したと同時に俺からもキスをした。だいぶ驚いている顔を見せてきて。


「いつも人前は嫌だと言ってるだろ」

「慣れました。けど、今日だけです」

「ククッ、つれないな」


 なんて小声で話しつつ、どちらからでもないキスをもう一つした。

しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。