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第二章
◇13 悩みの種
しおりを挟む最近、中々寝付けない。
夜、ヴィルと一緒にベッドに入りおやすみと目を閉じても、全然眠気が来ない。
「眠れないか」
「あ、いえ……お腹が動いちゃって……」
「そうか。元気なのはいい事だが、困ったものだな」
嘘だ。
本当は大人しくしてくれてる。けど、目を瞑っても中々眠れない。寝返りを打つのは結構大変だから寝返りが出来ないのと、お腹が重たいってのもあるんだろうけど……
けど、そのせいでヴィルを起こしてしまう。鋭いからな、ヴィルは。俺が起きるとヴィルが気がつく。だから、そのせいでヴィルを寝不足にさせてしまっている。
こんな天気だけど仕事はたくさんあって毎日大変なのは分かってる。だから、夜くらいはぐっすり寝てほしい。
けど、これでは疲れが溜まってく一方だ。
別で寝る? いや、きっとヴィルはダメだの一点張りになる。心配だから、って。じゃあどうする?
「奥様、ハーブティーをどうぞ」
「うん、ありがとう」
好きな読書も、読んではいるけど頭に何も入ってこない。文字の羅列を眺めてるような、そんな感じにしかならない。
ここの図書館は大量の本が並んでる。だから、色々な本があって、その中には医療系、出産や子育ての本なんかもたくさんある。一応ピモから教えてもらってはいるけれど、自分でも勉強しようと度々ここに赴いてる。
それなのに、これでは意味がない。
こんなんで、出産なんて大丈夫だろうか。俺の母親は出産時に亡くなってる。じゃあ俺は? 俺を出産する時は離宮でだったからちゃんとした設備もなければ、未熟な助産師しか寄こしてくれなかったそうだ。
ここではどうだ? ヴィルはちゃんとした助産師も呼んでくれるし設備も整えてくれるって言ってた。けど……遺伝とか、そういうの、どうなんだろう。
それに今俺は19歳。日本だったら、まだ成人していない。だからそう考えると……色々と心配になるな。
前世の日本では、機械とかそういう医療技術はここよりも高かったみたいだし……ここだとどうなんだろ。
……もしものことがあったら? もし、俺の母親のようなことになったら?
ヴィルとここでお別れだなんて……考えたくもない。
「えっ、奥様っ!?」
「え?」
「いかがしました!? どこか痛む所がおありですか!?」
慌てふためくピモ。一体何が? と思ったら……開いてた本が濡れてて。ぽたぽたと……涙が流れてたことに気が付いた。
「あ、いや、何でもない」
「そんなわけないでしょう! お医者様をお連れします!」
「いや、不調とかそういうんじゃないから。ちょっと考え事しただけだから」
「ほ、本当ですか……?」
「うん」
悪いなピモ、驚かせちゃって。と思いつつ袖で涙を拭いた。ピモがハンカチを出してきたから受け取ってそれで拭いた。
まさか涙が出るとは思わなかった。はぁ、最近ダメだな俺、周りに迷惑かけてばっかだ。本も汚しちゃったな。これ大丈夫かな。
「で、でしたら旦那様を……」
「ダメ」
「えっ」
「ヴィルには言わないで」
「ですが……」
「絶対」
忙しいヴィルにまで迷惑なんてかけたくない。ただでさえ睡眠不足にさせてしまってるんだから。
こんなんで、この子のママになれるだろうか。今から不安な事ばかりだ。でも、そんなのヴィルにバレたくないし。
と、思っていたら、ピモがソファーに座っていた俺の前に両膝を付き俺を見上げてきた。
「奥様、今は気持ちが不安定になる時期ですから、不安などが出てくることは分かっています。ですが、そんな時こそ旦那様を頼らなければならない時ではないのですか?」
「……」
「お二人は夫婦ですから、それは当たり前のことです。互いを支え合うのが夫婦ではないのですか?」
「……」
「もし旦那様が困っていた時に、奥様は遠くで見ているだけだなんて事はしないと私は知っています。ですが、それは旦那様も一緒ですよ。奥様が大変な時、旦那様はどう思っていらっしゃるか。奥様はよくご存知でしょう?」
放っておかないのは、よく知ってる。心配性で過保護なのも、知ってる。
でも、迷惑はかけたくない。
「旦那様をお呼びしますか?」
「……」
「分かりました。ですが、そのまま一人で考え込んでしまっては負担になります。気持ちの整理が整いましたら、旦那様か、他の誰かか。もちろん私でも構いません。相談してみてください。口に出してしまえばスッキリすることもありますからね」
「……うん、ありがと、ピモ」
「奥様のためでしたら私は何でもするつもりですから、何でもおっしゃってください」
はぁ、誰かに相談する、かぁ……でも、どう言ったらいいんだろう。難しいな。
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