23 / 47
第二章
◇7 よく頑張りました
しおりを挟む
今日は何故か寝室で捕まってしまっている。ベッドから全く出してもらえない。朝目が覚めてからかれこれ数時間ずっとこのまま。朝食は食べたけど寝室でだし、またベッドに戻されたというわけだ。
「あの、俺、図書室行きたいんですけど」
「ダメだ」
「何でですか」
「俺が無理だ」
「……いや、だったら一人で寝ててくださいよ」
「リュークがいないと意味がない」
「……」
あ、はい、そうですか……と、呆れてしまう。腹ん中の赤ちゃんに呆れられても知らないぞ。
医者には少し運動をした方がいいって言われてるんだけどなぁ……なんて思いつつ、もう一つ医者に言われたことを思い出した。
顔を合わせて寝っ転がっているだけなんだが……俺は起き上がり、ヴィルの肩を押して仰向けにさせ、ヴィルの腹に跨った。
「重い?」
「軽い」
「……流石ですね、辺境伯様」
「それは関係ない」
「いや、白ヒョウに一人で立ち向かえるくらい強いんですから。もし赤ちゃん生まれたらいっぱい武勇伝聞かせてあげましょうね」
「俺のはつまらん。それよりリュークがここに来てからの話を聞かせてやれ」
「二人で雪だるま作った話? ヴィルがブサイクだなって言ったのまだ覚えてますからね」
「根に持ってるのか」
「さぁ?」
と、言いつつ……少し後ろに下がった。ヴィルが少し顔を強張らせたのを俺は見逃さなかった。
「……リューク、降りろ」
「どうして? 医者は大丈夫って言ってたじゃないですか」
「だが……リュークは身重なんだぞ。無理はさせたくない」
「無理なんてしませんよ。それに、そこはヴィルが調節してくれるでしょ」
「……」
俺が妊娠してから一ヶ月以上経った。エッチはもちろん、キスすら全くしていない。このキス魔なヴィルがだぞ。妊娠する前なんてもう一週間に何回もシてたのによく我慢出来るなこの人。
医者なんてニコニコしながら「ベッド上での夫婦のスキンシップも大丈夫ですよ」と言ってきたし。その時俺の顔はだいぶ熱くなってたのを覚えてる。いきなりそんな話するなって言いたかった。
でもその時のヴィルは俺に全く顔を見せなかった。一体何を思ったのやら。いや、覚悟でも決めてたか?
「……何です、こんなに腹出た俺だと萎えます?」
「そんな事はっ! ……ないが」
「じゃあどうしてですか」
「……」
右に目を逸らして視線を全く合わせてこない。それまで我慢強かったか。いや、もうギリギリか?
「妊娠して結構経ってるのに、ヴィルにキスしてもらえないのは寂しいなぁ~」
「う"っ……」
「メイド達に教えてもらったんですよ。男が浮気するのはこういう時だって。奥さん妊婦になると色々と我慢させられちゃうから、我慢が出来なくて他に手出しちゃうんですって」
「浮気はあり得ない!」
うわぁ、めっちゃ力入ってたな。
「ふ~ん、本当に?」
「本当だ。信じられないか?」
「いや信じますけど。でも俺ずっと口寂しいんですよ。これ全部今まで何回も何回もヴィルがチュ~してきたのが原因ですからね。責任、取ってください」
そうだそうだ。これは全部ヴィルが悪い。ヴィルのキス魔が移ったんだ。俺のせいじゃない。
なんて思っていたら、ヴィルのクスクス笑い声が聞こえてきた。
「そうか、俺のせいか」
そう言って、上半身を起き上がらせてきた。
「リュークに無理はさせたくないし、身体に負担もかけさせたくない。分かってはいるんだが……キスなんてしたらそれ以上は我慢出来そうになかったんだ。これだけ我慢させられたんだ、リュークに無理をさせてしまうのは目に見えてるからな」
「医者はOKって言ってましたけど?」
「本当に酷いな、俺の妻は。俺の忍耐力でも試しているのか? これまで拷問に耐えてきた俺の頑張りを褒めてもらいたいものだな」
あーはいはいそうですかー。
その様子だと、だいぶ頑張っていたようだな。妊娠してからどれくらい経った。偉いな。
「じゃあ、頑張ったヴィルにはご褒美が必要ですね」
そう言いつつ、ヴィルの両頬を両手で包み、キスをした。その行動にヴィルは……俺の頭の後頭部を手で押さえてきた。だいぶ久しぶりだったからちょっとびっくりはしたが。長いキスの後、すっごく大きなため息をついて。
「俺の妻は本当に酷いな。なら、ご要望には全力でお答えしよう」
「やった」
くるっと回りヴィルと俺の位置を前後ろ入れ替えられて、後頭部と背中を抑えゆっくりとベッドに寝かされた。そしてヴィルが覆いかぶさる。
「二人分、愛させてくれ」
「はい、ど~ぞ」
二人分、って所がすごく嬉しい。
そして、甘い甘いキスを交わした。
「あの、俺、図書室行きたいんですけど」
「ダメだ」
「何でですか」
「俺が無理だ」
「……いや、だったら一人で寝ててくださいよ」
「リュークがいないと意味がない」
「……」
あ、はい、そうですか……と、呆れてしまう。腹ん中の赤ちゃんに呆れられても知らないぞ。
医者には少し運動をした方がいいって言われてるんだけどなぁ……なんて思いつつ、もう一つ医者に言われたことを思い出した。
顔を合わせて寝っ転がっているだけなんだが……俺は起き上がり、ヴィルの肩を押して仰向けにさせ、ヴィルの腹に跨った。
「重い?」
「軽い」
「……流石ですね、辺境伯様」
「それは関係ない」
「いや、白ヒョウに一人で立ち向かえるくらい強いんですから。もし赤ちゃん生まれたらいっぱい武勇伝聞かせてあげましょうね」
「俺のはつまらん。それよりリュークがここに来てからの話を聞かせてやれ」
「二人で雪だるま作った話? ヴィルがブサイクだなって言ったのまだ覚えてますからね」
「根に持ってるのか」
「さぁ?」
と、言いつつ……少し後ろに下がった。ヴィルが少し顔を強張らせたのを俺は見逃さなかった。
「……リューク、降りろ」
「どうして? 医者は大丈夫って言ってたじゃないですか」
「だが……リュークは身重なんだぞ。無理はさせたくない」
「無理なんてしませんよ。それに、そこはヴィルが調節してくれるでしょ」
「……」
俺が妊娠してから一ヶ月以上経った。エッチはもちろん、キスすら全くしていない。このキス魔なヴィルがだぞ。妊娠する前なんてもう一週間に何回もシてたのによく我慢出来るなこの人。
医者なんてニコニコしながら「ベッド上での夫婦のスキンシップも大丈夫ですよ」と言ってきたし。その時俺の顔はだいぶ熱くなってたのを覚えてる。いきなりそんな話するなって言いたかった。
でもその時のヴィルは俺に全く顔を見せなかった。一体何を思ったのやら。いや、覚悟でも決めてたか?
「……何です、こんなに腹出た俺だと萎えます?」
「そんな事はっ! ……ないが」
「じゃあどうしてですか」
「……」
右に目を逸らして視線を全く合わせてこない。それまで我慢強かったか。いや、もうギリギリか?
「妊娠して結構経ってるのに、ヴィルにキスしてもらえないのは寂しいなぁ~」
「う"っ……」
「メイド達に教えてもらったんですよ。男が浮気するのはこういう時だって。奥さん妊婦になると色々と我慢させられちゃうから、我慢が出来なくて他に手出しちゃうんですって」
「浮気はあり得ない!」
うわぁ、めっちゃ力入ってたな。
「ふ~ん、本当に?」
「本当だ。信じられないか?」
「いや信じますけど。でも俺ずっと口寂しいんですよ。これ全部今まで何回も何回もヴィルがチュ~してきたのが原因ですからね。責任、取ってください」
そうだそうだ。これは全部ヴィルが悪い。ヴィルのキス魔が移ったんだ。俺のせいじゃない。
なんて思っていたら、ヴィルのクスクス笑い声が聞こえてきた。
「そうか、俺のせいか」
そう言って、上半身を起き上がらせてきた。
「リュークに無理はさせたくないし、身体に負担もかけさせたくない。分かってはいるんだが……キスなんてしたらそれ以上は我慢出来そうになかったんだ。これだけ我慢させられたんだ、リュークに無理をさせてしまうのは目に見えてるからな」
「医者はOKって言ってましたけど?」
「本当に酷いな、俺の妻は。俺の忍耐力でも試しているのか? これまで拷問に耐えてきた俺の頑張りを褒めてもらいたいものだな」
あーはいはいそうですかー。
その様子だと、だいぶ頑張っていたようだな。妊娠してからどれくらい経った。偉いな。
「じゃあ、頑張ったヴィルにはご褒美が必要ですね」
そう言いつつ、ヴィルの両頬を両手で包み、キスをした。その行動にヴィルは……俺の頭の後頭部を手で押さえてきた。だいぶ久しぶりだったからちょっとびっくりはしたが。長いキスの後、すっごく大きなため息をついて。
「俺の妻は本当に酷いな。なら、ご要望には全力でお答えしよう」
「やった」
くるっと回りヴィルと俺の位置を前後ろ入れ替えられて、後頭部と背中を抑えゆっくりとベッドに寝かされた。そしてヴィルが覆いかぶさる。
「二人分、愛させてくれ」
「はい、ど~ぞ」
二人分、って所がすごく嬉しい。
そして、甘い甘いキスを交わした。
2,957
お気に入りに追加
7,562
あなたにおすすめの小説
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。