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◇37 こんな俺、いや?
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その日の夜は、思った通り凄い雪になった。もうゴーゴーしていて外に出られないくらいだ。
けど、俺は驚いてしまった。
「えっ、ヴィル、帰ってきてないの……?」
「はい、早めにお帰りになる予定だったのですが、色々とトラブルがあったようでして」
トラブル……視察って言ってたよな。どんなトラブルが起きたんだろ。危ないやつ? いや、ヴィルの事だからすぐ解決しちゃったかな。
でも都市って言っても広いから、屋敷より一番遠いところに行ってたのかもしれないし。だから帰ってこられなかったのかもしれない。
外は、ちょっと先すら見えないくらいの強い吹雪。大丈夫かな。あ、でもヴィルはここを治める辺境伯様だ。多分大丈夫だろ。
「大丈夫、だよね」
「恐らく。ですが、視察の内容は私はお聞きしていません。どこまで行ったのかは分かりませんし……」
あ、まぁでも空を見ればこれから降ってくるって分かるし、大丈夫だろ。
都市には宿泊施設が少ないけれどいくつかある。なら、降る前にそこにたどり着いているかも。
けれど、その吹雪は次の日も、その次の日も続いた。一向に止まない。いや、むしろひどくなってる。
「……雪だるまになってないかな」
何て呟きつつ、バラの間のソファーに座り天井を眺めていた。うん、雪積もってる。
……いや、それはないか。ここに来て一年も経ってない俺じゃあるまいし。
どうせ、こんな天気だから泊まった宿泊施設から外に出られずにいるってだけだろ。大丈夫大丈夫。だってあの人強いんだろ? 白ヒョウも一人で倒せちゃうくらい。あ、この前は操ったんだっけ。白ヒョウに乗って雪山駆け抜けたんだろ? いや、凄すぎだって。だから大丈夫だろ。
「……さっさと止めよ、吹雪」
吹雪だと外は真っ暗で、屋敷の中が明るかったとしてもなんだかどんよりとした気分になる。それのせいだろう、本を読んでても、温室に行ってお手伝いしてても、ここでお茶してても、なんかぼーっとしちゃうんだよな。
早く、吹雪止まないかな。煩いし。ゴーゴー音が鳴ってる中寝るのまだ慣れないんだよね。それに雪だるま作りに行けないし。だからさっさと止めや、吹雪。
「……」
本当は分かってる。ヴィルが、俺が都市に行くのを拒む理由の中に、あの日酷い風邪引いたことが入っているんだろうなぁ、って。まぁ他にも何か隠してるんだろうけどさ。
だって俺死ぬかもしれないって向こう思ってたらしいじゃん。だからなんだろうけどさ、でも俺もう元気だし。また風邪引いちゃうんじゃないかって思ってるんだろうけど、風邪予防とかもしてるし。というか食わされてるし。栄養満点なやつ。
だから大丈夫な、はず。あ、いや、この世に絶対ってものはないんだけどさ。
それに、なんか、ちょっと後悔してる。嫌い、だなんて言っちゃったこと。ドストレートに聞けばよかった。一点張りだったけど、粘って粘って粘りまくれば教えてくれたかもしれない。大人げなかったし、その後。
……ちょっと、反省してます。すみませんでした。
「奥様、紅茶をどうぞ」
「ん。ありがと」
と、ピモが来て紅茶を入れてくれた。うん、あったかぁ。紅茶美味しい。
「あ、これ」
「はい。奥様のためにと料理長が」
お皿の上には、数種類のおやつが並んでる。いろんな形のクッキー、マドレーヌ、パウンドケーキ。俺の好きなおやつばかりだ。え、何、元気出せって? マジか、料理長ありがとう。いろいろあるから手間だったろうに。
でも、うん。美味しい。さすがだよ料理長。
だけど、さ。ヴィルと一緒に食べたかったなぁ、と思ったり、思ってなかったり。言わないけど。
「まだ止まなそう?」
「そうですね。まだ続くかと」
「そっか……」
まだ、帰ってこれないのか。ヴィル。
……ヴィル、こんな幼稚な俺見てどう思っただろ。あんなに困惑してたけど、あとで考えて面倒なやつだって幻滅されちゃったかな。時々ヴィル面倒臭がるところあるし。
今まであんな態度とってきたけど、人の心って変わるものだ。だから愛想尽かされちゃうかも。そしたら俺行くとこなくなっちゃうよな……
「いや、だなぁ……」
ここを去るのは、いやだ。せっかく皆と仲良くなれて、いろいろと教えてもらったのに。そして、一番は……ヴィルに会えなくなっちゃうの、いやだ。
「はぁ……」
自分が、いやになっちゃうな。
その日はなかなか寝付けなかった。外がうるさいのもあったけど、一番は変な夢見ちゃいそうだったから。
早く、吹雪止まないかな。
けど、俺は驚いてしまった。
「えっ、ヴィル、帰ってきてないの……?」
「はい、早めにお帰りになる予定だったのですが、色々とトラブルがあったようでして」
トラブル……視察って言ってたよな。どんなトラブルが起きたんだろ。危ないやつ? いや、ヴィルの事だからすぐ解決しちゃったかな。
でも都市って言っても広いから、屋敷より一番遠いところに行ってたのかもしれないし。だから帰ってこられなかったのかもしれない。
外は、ちょっと先すら見えないくらいの強い吹雪。大丈夫かな。あ、でもヴィルはここを治める辺境伯様だ。多分大丈夫だろ。
「大丈夫、だよね」
「恐らく。ですが、視察の内容は私はお聞きしていません。どこまで行ったのかは分かりませんし……」
あ、まぁでも空を見ればこれから降ってくるって分かるし、大丈夫だろ。
都市には宿泊施設が少ないけれどいくつかある。なら、降る前にそこにたどり着いているかも。
けれど、その吹雪は次の日も、その次の日も続いた。一向に止まない。いや、むしろひどくなってる。
「……雪だるまになってないかな」
何て呟きつつ、バラの間のソファーに座り天井を眺めていた。うん、雪積もってる。
……いや、それはないか。ここに来て一年も経ってない俺じゃあるまいし。
どうせ、こんな天気だから泊まった宿泊施設から外に出られずにいるってだけだろ。大丈夫大丈夫。だってあの人強いんだろ? 白ヒョウも一人で倒せちゃうくらい。あ、この前は操ったんだっけ。白ヒョウに乗って雪山駆け抜けたんだろ? いや、凄すぎだって。だから大丈夫だろ。
「……さっさと止めよ、吹雪」
吹雪だと外は真っ暗で、屋敷の中が明るかったとしてもなんだかどんよりとした気分になる。それのせいだろう、本を読んでても、温室に行ってお手伝いしてても、ここでお茶してても、なんかぼーっとしちゃうんだよな。
早く、吹雪止まないかな。煩いし。ゴーゴー音が鳴ってる中寝るのまだ慣れないんだよね。それに雪だるま作りに行けないし。だからさっさと止めや、吹雪。
「……」
本当は分かってる。ヴィルが、俺が都市に行くのを拒む理由の中に、あの日酷い風邪引いたことが入っているんだろうなぁ、って。まぁ他にも何か隠してるんだろうけどさ。
だって俺死ぬかもしれないって向こう思ってたらしいじゃん。だからなんだろうけどさ、でも俺もう元気だし。また風邪引いちゃうんじゃないかって思ってるんだろうけど、風邪予防とかもしてるし。というか食わされてるし。栄養満点なやつ。
だから大丈夫な、はず。あ、いや、この世に絶対ってものはないんだけどさ。
それに、なんか、ちょっと後悔してる。嫌い、だなんて言っちゃったこと。ドストレートに聞けばよかった。一点張りだったけど、粘って粘って粘りまくれば教えてくれたかもしれない。大人げなかったし、その後。
……ちょっと、反省してます。すみませんでした。
「奥様、紅茶をどうぞ」
「ん。ありがと」
と、ピモが来て紅茶を入れてくれた。うん、あったかぁ。紅茶美味しい。
「あ、これ」
「はい。奥様のためにと料理長が」
お皿の上には、数種類のおやつが並んでる。いろんな形のクッキー、マドレーヌ、パウンドケーキ。俺の好きなおやつばかりだ。え、何、元気出せって? マジか、料理長ありがとう。いろいろあるから手間だったろうに。
でも、うん。美味しい。さすがだよ料理長。
だけど、さ。ヴィルと一緒に食べたかったなぁ、と思ったり、思ってなかったり。言わないけど。
「まだ止まなそう?」
「そうですね。まだ続くかと」
「そっか……」
まだ、帰ってこれないのか。ヴィル。
……ヴィル、こんな幼稚な俺見てどう思っただろ。あんなに困惑してたけど、あとで考えて面倒なやつだって幻滅されちゃったかな。時々ヴィル面倒臭がるところあるし。
今まであんな態度とってきたけど、人の心って変わるものだ。だから愛想尽かされちゃうかも。そしたら俺行くとこなくなっちゃうよな……
「いや、だなぁ……」
ここを去るのは、いやだ。せっかく皆と仲良くなれて、いろいろと教えてもらったのに。そして、一番は……ヴィルに会えなくなっちゃうの、いやだ。
「はぁ……」
自分が、いやになっちゃうな。
その日はなかなか寝付けなかった。外がうるさいのもあったけど、一番は変な夢見ちゃいそうだったから。
早く、吹雪止まないかな。
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