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◇32 強引すぎだろ!!
しおりを挟む結婚指輪、楽しみだなぁと思っていたけれど、最難関が一つあったことを俺は忘れていた。
「ピモ、来い」
いきなり、客間の外で待っていたらしいピモを呼んだヴィル。そして呼ばれたピモは何かトレイを持っていた。こちらをどうぞ、とトレイをローテーブルに乗せてきて。
そこにあったのは……え、針? いや、なんか太くないですか。安全ピンより太くない?
……いや、ちょっと待てよ。そういえばピアス、プレゼントしてくれたよな。
いやいやいや、まさか……
「開けるぞ」
「……ピアス穴?」
「他に何があるんだ」
……これ、ぶっ刺すの? え、怖いんですけど結構太くないですかそれ。
「……あの、それ、痛いですか……?」
「痛みは一瞬だ」
「……」
ヴィルも穴開いてるから経験者なのだろうけどさ……いや、この世界にもピアッサーがあればいいなぁ~って思ってたんだけどさ、期待打ち砕かれちゃったんだけど。こんな太い針でやるの? え、絶対痛いでしょ!!
俺の身体が勝手に、座ってるソファーのヴィル側から離れていく。あ、いや、無意識? 別に俺が怖気づいてるわけじゃないよ? ちょっと混乱してるだけ、と言いますか……いや、それ絶対痛いって。
「ピモは医療関係にも詳しいから、正しく開けてくれる。失敗はしないだろうから安心しろ」
「あ、いや、そういうわけではなくて……」
「何だ、怖気づいたか?」
「いや、そうではなくて……」
「痛いのが怖いのか?」
腰掴みやがった。まぁヴィルから離れちゃってたからそうするだろうけどさ。てか上に乗ってくるな。そこにピモがいるんだぞ。
というか、その顔……バカにしてる? 何、俺の事ビビりって思ってるのか? いや、そうじゃなくて、あ、うん、そうじゃない。
「俺のを挿れるよりも簡単だろ」
「何てこと言うんですか!!」
「なら大人しくしてろ」
やばい、針持ったピモが近づいてきたぞ。待て待て待てちょっと待て!!
待ったをかけようとしたのに、今度は顎を強くつかまれた。
「ヴィル!!」
「すぐに終わる。ピモ、やれ」
「かしこまりました」
いやいやいやだから待ってって!! 心の準備とか全く出来てないんだって!!
そう叫びたかったのに、今度はヴィルがキスをしてきた。大人しくしてろとでも言わんばかりの顔で舌を入れてきて、顎と後頭部をがっしり固定してきた。待て待て待てそこにピモいるんだって!! 離れろこの変態っ!!
何となく耳たぶが冷たくなって、チクリと痛みが走ったけれど、今の俺にそんな余裕はない。さっさと離せっ!!
次に上半身が上げられた。それでもまだ離してくれない。バンバンヴィルの肩を叩くけどそれでも全くだ。また反対側の耳たぶにも冷たさとチクリとした痛みが走る。
ようやく離してくれた頃には、もう俺の腰は抜けてしまった。この野郎マジで覚えてろよ、と息切れで涙目でありつつも睨んだ。
両耳の耳たぶがジンジンしてる。キスしてる最中に穴開けられたな……さすがピモだ。こんな状態で開けてくるなんて……
じゃあごゆっくり~、と空気読みますよと言わんばかりの顔で出て行ったが。マジでムカつくなあいつ。
「痛いか?」
「……」
「ククッ、悪かったよ」
「……」
本当に思ってるのかこの男。マジでムカつく。……軽いキスと頭撫でてくれるだけで許しそうになっちゃう俺も呆れるけどさ。
「ピアス、付けてくれるか?」
「……どうしても、なら」
「あぁ、どうしても」
……しょうがないですね。まぁ、せっかくもらったのなら使わないといけないし。……貴重なスノーホワイトだけれども。
耳たぶ、そっと触ってみたら耳の穴に何か入ってるように感じる。金属? イヤリングみたいに輪っかになってる。へぇ、こんな感じなんだ。
「一ヶ月はずっとそれを付けることになる。それ以降は別の物を付けていい」
「結構長いですね」
「ピアス穴は言ってみれば傷だからな。安定するまで時間がかかる」
そこら辺は地球と一緒か。俺もピアス開けてたし。
「スノーホワイトは比較的軽い宝石だが、開けてすぐは小さいものを付けよう。あとでそっちも用意する」
「いいんですか?」
「あぁ、青がいいか」
「はい、ありがとうございます」
わーい。開け方は強引だったけど、こっちでもピアス付けていいんだ~! ずっと付けてなかったから違和感感じてたんだよね。まぁ、ヴィルのプレゼントって所も嬉しいんだけどさ。ありがとうございます、ヴィル。
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