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◇7 辺境伯side
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数日前、国王陛下からの手紙にとんでもない話が書かれていた。
王子と結婚しろ、と。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「いかがしました?」
「……嫌がらせか? 首都が嫌いでここにずっといる俺への」
実に面倒くさい、目障りな手紙が来たものだ。何故こんな雪しか降らない所にいる俺にこんなものが送られてくるんだ。陛下の頭はついにおかしくなったか。年を取るとは怖いものだな。
だがこれは王命だから断れないな。
そしてやってきたのは小柄なアメロ。第15王子だ。王族だなんて何とも面倒臭いやつが来たな。
俺は領地ばかりで首都には行かず会った事がないが、15番目と言ってもどうせチヤホヤされて生きてきたような奴だろう。王位継承争いは年上のやつらでどんぱちやっているのだから、15番目の王子は関係ない。そしてアメロだからと守られて生きてきたはずだ。
しかも、こんな雪の地に薄着で来やがった。舐めやがって。
こんなやつに、屋敷でわがままされたらたまったもんじゃない。
だから脅して離婚届を出した。
……だが、破りやがったが。目の前で。
面倒くさい……実に面倒くさい。こっちはこっちで忙しいというのに、こんな奴のお守りなんてやってられないぞ。
まぁすぐに根を上げて帰ると思うが。
「……これ、何だ」
「肉じゃが、でございます。奥様が持参してきたレシピを元にご用意いたしました」
「ウチの料理長の料理にケチをつけたのか」
「いいえ。奥様はここの食事がたいそう気に入ったようですよ。大絶賛していました。奥様はジャガイモのポタージュがお気に入りだそうです」
「……」
本当か? ジャガイモだなんて、こんなイモを王族が食べるわけがない。というか、食卓に出されたら皿をひっくり返すだろうな。それか、王宮料理人を全員解雇か。それなのに、気に入っただと? 物好きなのか?
「首都で自分が食べていた料理をぜひ食べてほしいと私共にまで配慮してくださった次第です。しかもこの野菜は全て奥様が収穫されたものですよ」
「……」
……一国の王子が土で手を汚して野菜を収穫しただと? あり得んな。
でも、ふと思い出した。
「……そういえば、王宮から荷物は届いたか」
「いいえ」
「は……?」
初めてここに来た際、あの小さなトランク一つしか持ってこなかった。使用人一人すら連れずに。ここは首都とは全く違う冬の地だからと用意に時間がかかってるのかと思ってはいたが、まだ来てないだと? 王子がここに来てどれくらい経ったと思ってるんだ。
「気に入ったと言えば、ここの服も気に入っておられましたよ。恐れながら私が奥様のお洋服をご用意させていただいたのですが、とても嬉しそうに見ておられました。気温が低いため、首都とは全然違う服ですからね。きっと初めてご覧になり不思議に思ったのでしょう」
「……」
「いかがいたしました?」
「いや」
最初は不満げな顔をしていたくせして、楽しそうじゃないか。周りの使用人達も。
おかしな話だな。と、思いつつ肉じゃがは綺麗に平らげた。
「……何故こんなところにいるんだ」
図書室。
仕事の息抜きとしてここに来た、のだが……踏み台の階段に座って寝ている。膝に本を数冊重ねていて、今開いてる本は……何故絵本なんだ?
きちんとした教育を受けてないのか? とも思ったがその下の本は彼の年相応な本ばかり。興味本位で開いてみた、といったところか。
……風邪を引かれては困るな。
とりあえず、担いでそこのソファーに寝かせた。近くにあったブランケットもかけてやった。
何とも手のかかるやつだ。……ん?
「……」
こいつ、手のひら……ナイフか? アメロのやつには絶対にないタコがあるな。
何故? アメロは守られて生きていく存在だ。それなのに、タコが出来るくらいナイフを握っていただと?
確かに、こいつは王族だ。王族となると、狙われる可能性があるにはある。だがそれは年上の王子達くらいだ。それなのに、自分を守るすべを身につけただと?
……俺は、勘違いをしていたのか?
「……何だ、ピモ」
「いいえ、珍しく優しい旦那様が見られてとても嬉しいだけですよ」
「……」
「奥様とお話にならないのですか?」
「……忙しい」
「そうですか。奥様、ここに来てから結構楽しんでおられますよ?」
「……知らん」
「昼食はいかがでしたか?」
「……」
肉じゃが、といったか。初めて食べたが……美味かったな。
俺は料理に興味があるわけではない。美味しければそれでいいと思っていたが……また食べたいとは、少し思ったな。
はぁ、よく分らん。一体どうなってるんだ。
王子と結婚しろ、と。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「いかがしました?」
「……嫌がらせか? 首都が嫌いでここにずっといる俺への」
実に面倒くさい、目障りな手紙が来たものだ。何故こんな雪しか降らない所にいる俺にこんなものが送られてくるんだ。陛下の頭はついにおかしくなったか。年を取るとは怖いものだな。
だがこれは王命だから断れないな。
そしてやってきたのは小柄なアメロ。第15王子だ。王族だなんて何とも面倒臭いやつが来たな。
俺は領地ばかりで首都には行かず会った事がないが、15番目と言ってもどうせチヤホヤされて生きてきたような奴だろう。王位継承争いは年上のやつらでどんぱちやっているのだから、15番目の王子は関係ない。そしてアメロだからと守られて生きてきたはずだ。
しかも、こんな雪の地に薄着で来やがった。舐めやがって。
こんなやつに、屋敷でわがままされたらたまったもんじゃない。
だから脅して離婚届を出した。
……だが、破りやがったが。目の前で。
面倒くさい……実に面倒くさい。こっちはこっちで忙しいというのに、こんな奴のお守りなんてやってられないぞ。
まぁすぐに根を上げて帰ると思うが。
「……これ、何だ」
「肉じゃが、でございます。奥様が持参してきたレシピを元にご用意いたしました」
「ウチの料理長の料理にケチをつけたのか」
「いいえ。奥様はここの食事がたいそう気に入ったようですよ。大絶賛していました。奥様はジャガイモのポタージュがお気に入りだそうです」
「……」
本当か? ジャガイモだなんて、こんなイモを王族が食べるわけがない。というか、食卓に出されたら皿をひっくり返すだろうな。それか、王宮料理人を全員解雇か。それなのに、気に入っただと? 物好きなのか?
「首都で自分が食べていた料理をぜひ食べてほしいと私共にまで配慮してくださった次第です。しかもこの野菜は全て奥様が収穫されたものですよ」
「……」
……一国の王子が土で手を汚して野菜を収穫しただと? あり得んな。
でも、ふと思い出した。
「……そういえば、王宮から荷物は届いたか」
「いいえ」
「は……?」
初めてここに来た際、あの小さなトランク一つしか持ってこなかった。使用人一人すら連れずに。ここは首都とは全く違う冬の地だからと用意に時間がかかってるのかと思ってはいたが、まだ来てないだと? 王子がここに来てどれくらい経ったと思ってるんだ。
「気に入ったと言えば、ここの服も気に入っておられましたよ。恐れながら私が奥様のお洋服をご用意させていただいたのですが、とても嬉しそうに見ておられました。気温が低いため、首都とは全然違う服ですからね。きっと初めてご覧になり不思議に思ったのでしょう」
「……」
「いかがいたしました?」
「いや」
最初は不満げな顔をしていたくせして、楽しそうじゃないか。周りの使用人達も。
おかしな話だな。と、思いつつ肉じゃがは綺麗に平らげた。
「……何故こんなところにいるんだ」
図書室。
仕事の息抜きとしてここに来た、のだが……踏み台の階段に座って寝ている。膝に本を数冊重ねていて、今開いてる本は……何故絵本なんだ?
きちんとした教育を受けてないのか? とも思ったがその下の本は彼の年相応な本ばかり。興味本位で開いてみた、といったところか。
……風邪を引かれては困るな。
とりあえず、担いでそこのソファーに寝かせた。近くにあったブランケットもかけてやった。
何とも手のかかるやつだ。……ん?
「……」
こいつ、手のひら……ナイフか? アメロのやつには絶対にないタコがあるな。
何故? アメロは守られて生きていく存在だ。それなのに、タコが出来るくらいナイフを握っていただと?
確かに、こいつは王族だ。王族となると、狙われる可能性があるにはある。だがそれは年上の王子達くらいだ。それなのに、自分を守るすべを身につけただと?
……俺は、勘違いをしていたのか?
「……何だ、ピモ」
「いいえ、珍しく優しい旦那様が見られてとても嬉しいだけですよ」
「……」
「奥様とお話にならないのですか?」
「……忙しい」
「そうですか。奥様、ここに来てから結構楽しんでおられますよ?」
「……知らん」
「昼食はいかがでしたか?」
「……」
肉じゃが、といったか。初めて食べたが……美味かったな。
俺は料理に興味があるわけではない。美味しければそれでいいと思っていたが……また食べたいとは、少し思ったな。
はぁ、よく分らん。一体どうなってるんだ。
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