17 / 85
シティ
1.ヨッシー快進撃
しおりを挟む
銭湯から部屋に戻ったリョウが、信じられないという表情でパソコン画面に釘付けとなっていると、携帯電話が鳴った。ヨッシーからだった。
「どこ行ってたんだよ。何回も電話したんだぜ」
「肩の凝りがひどいんで、銭湯に行ってほぐしてきたよ」
「あのスーパー銭湯か。いいなあ、俺も今度行ってこようかな。でも、今は行けない。手が離せないんだ。聞いてくれよ。シティに昇格したぞ」
ヨッシーの声は弾んでいた。
リョウはすぐに「シティ」のホームページに飛び、ヨッシーの街を閲覧した。参加者全ての街は原則的に公開されている。ヨッシーの町は、高速道路のインター周辺に、続々と工場が立地して、人口も税収も着実に増加していた。だが、他のプレーヤーが同じように企業誘致に熱を入れ始めたせいか、工業団地の埋まり方が徐々に悪くなっていったんだという。
「やっぱりこのゲームは、他のプレーヤーと何らかの相関関係がある。そういう設定になってるんだよ。だから、人と同じやり方をしていたら、平均的な街にしかならない。何か新しいこと、新しい発想を試した街だけが、ずば抜けた発展を可能にするんだ。実際の社会と同じだな。本当にリアルな作りだよ」
企業誘致のペースが落ち始めたのを敏感に察知したヨッシーは、人口10万人を目前に控え、町の郊外に空港を建設し、その近くにテーマパークを誘致した。
「企業誘致にだけ頼っていたら、町の拡大はいずれ行き詰る。副収入として、交流人口を増やしてみたらどうかと考えたんだ。観光だよ。これは他のプレーヤーがまだ挑戦していない分野だ」
ヨッシーの口ぶりは、コンサルタント会社のプレゼンか社会学者のレクチャーのようだった。
「高速道と空港で、人やモノを運ぶ導線は確保した。あとは、どう具体的に人を動かすかだよ」
「それで、いつシティに昇格したの?」
「1時間ほど前だよ。シティになると、消防署が消防本部になって、保健所とか社会保険事務所とか、職業安定所とか、裁判所の支部とか、いろんな役所の出先機関ができたよ。10万人を数人超えてシティになった途端に、人口が2千人も増えたんだ。ま、もっとも、そのあとはちょっと苦戦してるけどな」
リョウはヨッシーの話を聞きながら、マチの様子を細かく観察した。
「テーマパークは順調なの?」
「開業したばかりなんだ。あと4、50分もすれば、最初の年の成果が分かる。入場者はかなりのものだぞ。3カ月で50万人はいってる」
「それは凄いな」
「これはリョウだから教えるけど、来年にはテーマパークの近くで、もっと凄いことをやる計画なんだ。認可されるかどうかは分からないけど」
「何だよ」
「カジノさ」
「どこ行ってたんだよ。何回も電話したんだぜ」
「肩の凝りがひどいんで、銭湯に行ってほぐしてきたよ」
「あのスーパー銭湯か。いいなあ、俺も今度行ってこようかな。でも、今は行けない。手が離せないんだ。聞いてくれよ。シティに昇格したぞ」
ヨッシーの声は弾んでいた。
リョウはすぐに「シティ」のホームページに飛び、ヨッシーの街を閲覧した。参加者全ての街は原則的に公開されている。ヨッシーの町は、高速道路のインター周辺に、続々と工場が立地して、人口も税収も着実に増加していた。だが、他のプレーヤーが同じように企業誘致に熱を入れ始めたせいか、工業団地の埋まり方が徐々に悪くなっていったんだという。
「やっぱりこのゲームは、他のプレーヤーと何らかの相関関係がある。そういう設定になってるんだよ。だから、人と同じやり方をしていたら、平均的な街にしかならない。何か新しいこと、新しい発想を試した街だけが、ずば抜けた発展を可能にするんだ。実際の社会と同じだな。本当にリアルな作りだよ」
企業誘致のペースが落ち始めたのを敏感に察知したヨッシーは、人口10万人を目前に控え、町の郊外に空港を建設し、その近くにテーマパークを誘致した。
「企業誘致にだけ頼っていたら、町の拡大はいずれ行き詰る。副収入として、交流人口を増やしてみたらどうかと考えたんだ。観光だよ。これは他のプレーヤーがまだ挑戦していない分野だ」
ヨッシーの口ぶりは、コンサルタント会社のプレゼンか社会学者のレクチャーのようだった。
「高速道と空港で、人やモノを運ぶ導線は確保した。あとは、どう具体的に人を動かすかだよ」
「それで、いつシティに昇格したの?」
「1時間ほど前だよ。シティになると、消防署が消防本部になって、保健所とか社会保険事務所とか、職業安定所とか、裁判所の支部とか、いろんな役所の出先機関ができたよ。10万人を数人超えてシティになった途端に、人口が2千人も増えたんだ。ま、もっとも、そのあとはちょっと苦戦してるけどな」
リョウはヨッシーの話を聞きながら、マチの様子を細かく観察した。
「テーマパークは順調なの?」
「開業したばかりなんだ。あと4、50分もすれば、最初の年の成果が分かる。入場者はかなりのものだぞ。3カ月で50万人はいってる」
「それは凄いな」
「これはリョウだから教えるけど、来年にはテーマパークの近くで、もっと凄いことをやる計画なんだ。認可されるかどうかは分からないけど」
「何だよ」
「カジノさ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】大切にするってお約束しましたよね。忘れた人には⋯⋯お仕置きしたい人が大集合しました
との
恋愛
「付き合っている恋人がいるんだ。二人とも愛してる⋯⋯」
はじまりは国王の決めた婚姻だったけれど、毎日のように会いに来て『愛してる』『結婚する日が待ち遠しい』と囁いていた婚約者。
ところが、結婚式の前日になってまさかの二股報告。
とても仲良くしていた日々はなんだったの⋯⋯。
せめてもう少し早く教えてくれたらと思いつつも、婚約者に対してあまり無理を言えない過去を持つリリスティーナは、
「では、⋯⋯⋯⋯」
この決断を死ぬほど後悔した主人公と仲間達の戦い。
前作【育成準備完了しました。お父様を立派な領主にして見せます】登場人物も出てきます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済で、約九万文字程度。
R15は念の為・・
じゃない方の白石くん~夢の青春スクールライフと似ても似つかぬ汗だくサッカーライフ~
木ノ花
青春
弱メンタル陰キャ少年と学内トップ美少女が織りなす、青春サッカーラブコメ。
幼い頃よりサッカー漬けの生活を送ってきた少年、白石兎和。
彼はとある事情から、ジュニアユースチーム(中学年代)卒業を前にしてサッカーへの情熱を曇らせる。
そして高校では心機一転、友情と恋に彩られた青春スクールライフを満喫すると決意するのだった。
ところが進学先には同じ白石の苗字を持つイケメンがいて、比較された挙句コミュ力や顔面偏差値で劣るからと、『じゃない方』なんていう不名誉なあだ名を授かってしまう。おまけに『陰キャ』のレッテルを貼られ、周囲から蔑まれる羽目になる。
先が思いやられる高校生活のスタート。
そのうえ学内トップの美少女である神園美月との出会いを機に、心が離れかけていたサッカーとも再び向き合うことに……こうして白石兎和のスクールライフは、本人の希望とまったく違う方向へ転がっていく。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
転校してきた美少女に僕はヒトメボレ、でも彼女って実はサキュバスらしい!?
釈 余白(しやく)
青春
吉田一(よしだ かず)はこの春二年生になった、自称硬派な高校球児だ。鋭い変化球と抜群の制球で入部後すぐにエースとなり、今年も多くの期待を背負って練習に精を出す野球一筋の少年である。
かたや蓮根咲(はすね さき)は新学期に転校してきたばかりの、謎めいてクールな美少女だ。大きな瞳、黒く艶やかな髪、凛とした立ち姿は、高潔さを感じるも少々近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
そんな純情スポ根系野球部男子が、魅惑的小悪魔系女子へ一目惚れをしたことから、ちょっとエッチで少し不思議な青春恋愛ストーリーが始まったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる