バトル・オブ・シティ

シティのルール

３．メガロポリスへの遠い道

＜第３セクターのレジャーランドは、建設３年後を契機に客足が落ち始めた。増設、改修などの対処を適宜取らなかったため、客足はさらに遠のき、建設５年後には損益分岐点を下回り、赤字経営に転落。起債償還のために村財政は硬直化し、新規事業数が激減し、村内会社の倒産、流出を招いた＞
　リョウは呆然と画面を見つめていた。事業の損益がこれほどシビアに設定されているとは思わなかった。結局、人口も減り、街には悪影響しか残らなかったことになる。２億円程度の起債なら何とかなると思ったが、完全に読みが甘かったのだ。

「難しいゲームだ。町を作れる奴なんているのかな」
　リョウは「シティ」のホームページに戻って、他の街を検索してみた。
　やはり、ほとんどの参加者は、村の段階で悪戦苦闘していた。だが、なかには、４６ゲーム年をかけて「町」への昇格を果たし、人口４万８千人の町を経営している奴もいた。ただ、町のバランスシートを見る限り、財布の中身はかなり苦しそうだ。あと１０年もつかどうか、といったところだろう。
　今のところ、最も大きな町を作っているのは、その男（または女）だ。オンライン・マニュアルを読むと、人口が１０万人を超すと「市（シティ）」に格上げされる。市になると、取り扱う事業の種類が格段に増え、起債可能高もグンと引き上げられる。
　人口が５０万超になると「中核市（セントラル・シティ）」、百万を突破すると「巨大都市（メガロポリス）」となり、昇格するごとに街を拡大させるためのアイテムや特典がプラスされる。また、メガロポリスの領域に入ると、それまでとは全く次元の異なるイベントが用意されていると記されていたが、その内容は全く分からなかった。

＜ゲームはさらにエキサイティングで、スリリングなものになるでしょう＞

　マニュアルではこう説明されていた。最も初期段階の村で失敗を重ねているリョウにとって、メガロポリスは遥か遠い先の目標だ。だが、ゲームはある一線を超えたら、加速度的に進行が速くなるものだ。
「とりあえずシティまでは辿りつきたい」
　リョウは４度目の挑戦のため「リョウⅢ」をリセットし、新たな村に「リョウⅣ」と名前を付けた。