意地っ張りなオメガの君へ

萩の椿

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第5話

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「はぁ……はぁ……」

西園寺は肩で息を整える。いつもなら、出すものを出してしまえば収まるはずなのに、西園寺のソコはいまだ立ち上がったままである。それに、体の熱も抜けてはくれない。

(最悪だ……)

 無理やりに体を開かされたとはいえ、この三人の男たちの前で痴態をさらしてしまった事が恥ずかしくて仕方がない。けれど、正直自分で触る何倍も気持ちが良かったことも事実だった。一条の手つきは、何も考えられなくなるほどの強烈な快楽を西園寺に与えた。しばらく絶頂の余韻が抜けず、気を遠くしていた西園寺だが、太ももから下へ滑っていく一条の手にはっとする。

 一条が触れたそこは普段は秘めている場所。オメガはそこで、男を受け入れるが、西園寺は生まれてから今までそこを触ったことが一度もなかった。

「ひっ」
「旭、力抜いて」

オメガには、その手の潤滑油なんてものは必要ない。西園寺のそこは先ほどからじらされた刺激によって、洪水の様に濡れていた。一条の指が、西園寺の中にゆっくりと入り込む。

「いやだ……、やめてっ」

西園寺の言葉が懇願に変わる。しかし、一条は西園寺の声を無視して指を奥へと進めた。


 中で指を折り曲げられる度、内壁がすれ、その淡い快感に西園寺が小さく声を上げる。そこで快感を得るという事は、オメガとしての自分を受け入れること。年々、発情期を迎える度に、そこの疼きが強まってきていても、西園寺が決してそこを触らなかったのは、そこで男を受け入れ、だらしなく乱れるオメガにだけは、絶対になりたくないと思っていたからだった。快楽なんて屈強な精神があれば、耐えることができる。自分だけは、オメガでも他のオメガとは違う人間。西園寺はそう強く信じていた。けれど……。

 西園寺の中で、積み上げてきたプライドが音を立てて崩れ落ちていく。

(なんで、こんな……)

 頭では嫌だと拒否しているつもりなのに、体が一条の手を離さないように締め付ける。一条の手は止まらない。くちゅくちゅと、厭らしい音を響かせながら西園寺のソコを押し広げていく。

(……これが、オメガとしての性なのか……)

アルファやベータの男なら、こんな場所を触られて快楽は感じない。あざましく、はしたない、このオメガの体だからこそ快感を生み出してしまうのだろう。

西園寺の瞳から涙が溢れた。三人に恥辱を受け西園寺の精神はもう限界だったのだ。

「情けないな、俺は……」

 西園寺の震えた声に、一条の手が止まる。

 自分がオメガだという事実にいくら目を逸らしても、今回ばかりは無駄だった。西園寺の口から無意識に出る声は、嬌声と大差なく、体はもっと、と快楽を追い求める。

「何で俺だけ……、オメガなんだよ……」

 育ってきた環境もさほど変わらない。昔の四人は親友と言えるほど仲が良かった。しかし、第二性が発覚してからは、西園寺が一方的に距離を置いていた。一人だけ、オメガだったことが惨めだったからだ。それまでは何の隔たりもなかったのに、オメガという区分に分類されただけで、今までのようには接することが出来なくなってしまったのだ。

「旭……」

 一条が西園寺の顔を覗きこんだ。一条や近衛、それから宝来も西園寺の涙に気を取られていた。西園寺は基本的に他人の前で弱音は吐かない。頑なで硬派な西園寺が人前で涙を見せることは滅多になかった。

「おい、旭……」

 両腕を拘束していた近衛が西園寺の涙を拭ったところで、西園寺はありったけの力を込めて、一条の顎を殴り飛ばした。逃げ出す瞬間があるとすれば、近衛が拘束を緩めた今しかないと西園寺は瞬時に悟った。一条がよろめき、近衛が驚いている一瞬を狙って、勢いよく体を起こし、ソファーから転げ落ちた。

 西園寺は、床に落ちてある衣服を拾い出口まで走る。しかし、力が抜けてしまった体では上手く足を回すことができない。途中、足がもつれて派手にこけ、床で膝を擦りむいたが、今は痛みに気を取られている場合ではない。

(早くっ、あいつらに捕まる前に……)

 半ば無理やり体を起こし、西園寺が立ち上がろうとしたその時、後ろから太い両腕が伸びてくる。

「あさひ……」

 ぎゅっと、力強く西園寺の体を包み込んだのは宝来だった。切なげに西園寺の名前を呼び、体を密着させてくる。宝来は無意識だろうが、西園寺の腰辺りに宝来の固いモノが当たっていた。宝来の熱い息を耳の裏に感じながら、西園寺は怒りを露わにする。

「お前も同罪だ。二度と俺に近づくな」

 西園寺は、宝来の体を突き飛ばし、鞄を拾い上げて部屋から出た。

(とにかく、鍵のかかる場所……)

 辺りを見回し、目ぼしい部屋を見つけた西園寺は内鍵をかけて部屋に立てこもった。火照る体はとうに体力の限界を超えていたようで、足の力が抜け、西園寺は床にへたり込んだ。震える指先で、抑制剤が入っている瓶を開け、薬を一気に飲み込む。これがオメガの役割だと疼いていた腹の奥は、教科書に書いてある通りのオメガとしての特性だった。

今回は、一条に嗅がされた薬の匂いが強烈だったせいか、腹の疼きが収まるまでにかなりの時間がかかった。

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