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第45話
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ガラッ
その時、勢いよく扉が開き、慧は咄嗟に両手で体を隠した。
「なにをしてる」
その声に顔を上げると、土方が両手に皿を抱えて立っていた。
「あ……、その体が、気持ち悪くて……」
慧は土方から目を逸らしブツブツと答える。
土方を見ると、先日の一件を思い出してしまう。未だにくっきりと土方の歯形が慧のうなじには残っている。
土方は両手に持っていた皿を置いて、慧との距離を詰めた。
また何かされるのではないかと思うと、慧の体に緊張が走る。
土方がそっと慧の肩に触れた。
「これは沖田にやられたのか」
慧の肩、それから体には無数の噛み後があった。血が滲み、中にはあざになっているものまである。
正直、どこを誰にやられたのかもう覚えていない。けれど、土方が今現在擦っている場所についている噛み後は、さっき沖田にやられたものだったので慧は小さく頷いた。
「ついてこい。風呂場まで連れて行ってやる」
「え……?」
予想外の言葉に慧は顔を上げた。
「そのままでは気持ち悪いだろ」
「あっ、えっと……はい」
慧は部屋を出て行く土方の後におずおずとついて行った。
風呂場はそう離れていなかった。紺色の暖簾をくぐり、先へ進むと脱衣所へと行きついた。
「俺はここで待っている。今日は宴会を開いているから、誰も来ないとは思うが念のためだ」
土方は脱衣所にある椅子に腰を掛けて腕を組んだ。
(誰も入ってこられないように見張ってくれるってことなのかな……)
あるいは単純に慧が逃げ出さないように見張っているだけなのか。良く分からないが、久しぶりの風呂に慧の気分が高まった。
さっさと服を脱いで浴室へと向かうと、軽く十人ほど入れそうな大きな湯船があった。
慧は桶で体を流し、その中へと入る。
「きもちいい」
久しぶりに湯船につかることができた。少し温度が高かったが、体の芯から温まっていくように感じる。
しかし、土方は一体どうしたのだろうか。いつものあの威圧的な態度は変わらないが、風呂場に連れてきてくれるなんて思いもしなかった。
こころなしか、肩を擦る手も優しさがあったような。
ついこの間までは慧の嫌がることを平気でやっていたのに。どういう心境の変化なのだろうか。
「よくわかんないや……」
その時、勢いよく扉が開き、慧は咄嗟に両手で体を隠した。
「なにをしてる」
その声に顔を上げると、土方が両手に皿を抱えて立っていた。
「あ……、その体が、気持ち悪くて……」
慧は土方から目を逸らしブツブツと答える。
土方を見ると、先日の一件を思い出してしまう。未だにくっきりと土方の歯形が慧のうなじには残っている。
土方は両手に持っていた皿を置いて、慧との距離を詰めた。
また何かされるのではないかと思うと、慧の体に緊張が走る。
土方がそっと慧の肩に触れた。
「これは沖田にやられたのか」
慧の肩、それから体には無数の噛み後があった。血が滲み、中にはあざになっているものまである。
正直、どこを誰にやられたのかもう覚えていない。けれど、土方が今現在擦っている場所についている噛み後は、さっき沖田にやられたものだったので慧は小さく頷いた。
「ついてこい。風呂場まで連れて行ってやる」
「え……?」
予想外の言葉に慧は顔を上げた。
「そのままでは気持ち悪いだろ」
「あっ、えっと……はい」
慧は部屋を出て行く土方の後におずおずとついて行った。
風呂場はそう離れていなかった。紺色の暖簾をくぐり、先へ進むと脱衣所へと行きついた。
「俺はここで待っている。今日は宴会を開いているから、誰も来ないとは思うが念のためだ」
土方は脱衣所にある椅子に腰を掛けて腕を組んだ。
(誰も入ってこられないように見張ってくれるってことなのかな……)
あるいは単純に慧が逃げ出さないように見張っているだけなのか。良く分からないが、久しぶりの風呂に慧の気分が高まった。
さっさと服を脱いで浴室へと向かうと、軽く十人ほど入れそうな大きな湯船があった。
慧は桶で体を流し、その中へと入る。
「きもちいい」
久しぶりに湯船につかることができた。少し温度が高かったが、体の芯から温まっていくように感じる。
しかし、土方は一体どうしたのだろうか。いつものあの威圧的な態度は変わらないが、風呂場に連れてきてくれるなんて思いもしなかった。
こころなしか、肩を擦る手も優しさがあったような。
ついこの間までは慧の嫌がることを平気でやっていたのに。どういう心境の変化なのだろうか。
「よくわかんないや……」
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