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第38話
しおりを挟むヌチヌチと、聞こえる音に羞恥が込み上げてくる。
手を引きたくても、沖田に手首を掴まれて引けない。
もう片方の手は、漬物のお皿を持っている為、両手はふさがってしまっている。
「やめてくださいっ」
慧が叫んだところで、沖田がやめる気配はない。
人差し指を舌でなぞられる感覚に、鳥肌が立つ。沖田はまるで、拒否する慧をいたぶるかのように舌でねっとりと舐めあげ、指の関節に音を立てて口づけをする。
流石にこの羞恥に我慢できなくなった慧は、顔を赤らめて声を上げた。
「本当にもう、いい加減に……!」
その瞬間、沖田によって口がふさがれる。舌がぬるりと侵入してきて慧の口腔を激しく犯す。
「ふぅ……んぁ……ん」
息継ぎもできないほどの激しい口づけ。角度を変えて何度も舌を入れられる。逃げ回る慧の舌を、沖田が捕まえ吸い上げる。
次第に体がしびれていき、漬物が地面に落ちる。
その手を壁に縫い付けられ、抵抗を塞がれた。
流石に立っていられなくなり、ずるずるとその場にへたり込む。
「はぁ……はぁ……」
沖田は慧に合わせてしゃがみこみ、体を包み込む。
「お菊さん、あなたの肌の香りが消えているのはなぜですか?」
耳元で囁かれた言葉に目を見開く。
「昨日から、ずっとあの魅惑的な香りがしません」
鼓動がどんどん早くなっていった。
まさか、本当に自分は土方と番関係になってしまったのか? 一番恐れていた状況に、一瞬呼吸が止まりそうになる。
肌の香りがしない、つまりオメガの匂いが沖田には匂わなくなったという事。
目を背けていた現実が、慧に突き付けられる。
「昨日の土方さんとの営みで、何かあったんですか?」
土方、その名前が出た途端、慧は激しく動揺する。
どうして、沖田がその事を知っているのだろう。隠していたつもりはないけれど、流石にそういうことを他人に知られるのは恥ずかしい。
その反応を見た沖田は、慧を床に押し倒した。
「あなたのそういう隠し事ができないところ好きですけど、たまに頭に来るんですよ」
慧の着物を剝いでいく沖田の手つきは荒い。
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