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第28話

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「嘘をつけ、これはあの時、俺が嗅いだ匂いと同じ匂いだ。あの時は、小屋に逃げられたが、ここなら身を隠すことも、逃げることもできない。さあ、存分に正体を現せ」


 
土方は扉を閉めて、慧の退路を塞いだ。そして、壁にもたれかかり、慧を監視するように見つめる。



(どうしよう……、どうしよう……)

 
近くに男がいると体が感じたのか、秘穴からとろりと蜜があふれ出す。
 

早くここに入れてくれと、せかしているようだ。

 
体が熱くて、頭もぼーとする。

 

発情期中は、抑制剤を使用して疼くからだを抑えていた。
 
それでも、性欲は一応溜まるわけで。
 

そういう時は、自慰をしていたのだが、土方の目がある以上とてもできそうにない。
 
 
抑制剤もなく、自慰もできないのではこのヒートを一人で乗り越えるのは無理だ。


 
オメガにとって、ヒートがどれほど大変なものなのか。それは地獄と何ら変わりない。

自分の意志とは裏腹に、体がうずき、熱を持つ。

意識が朦朧として、何度達しても収まることのない性欲に、呼吸する喉も子宮も縛り付けられる。

 
満たしてくれるアルファがいなければこの地獄をヒート期間中ずっと味わうのだ。

 
この時ほど、オメガの自分が憎いと感じたことは無い。

 
この性別の事で、友人を作ることが難しくても、アルファやベータから蔑まれたりしても耐えることができるのに、ただこの発情だけが慧を苦しめ蝕んでいく。
 
まるで、獣のように発情してしまう自分を心の底から嫌悪している。
 

ドン

 
慧は己の頭を叩いた。固く握りしめた拳で、何度も何度も。

「ああっ、だめだ! ぼくはぁ、しっかり、しろ!」

 
泣き叫びながら、何度も自分の頭を叩く慧に土方は目を丸くした。

「おいっ……」

 いきなりの事で、何故慧がそんな行動をとり始めたのか理解ができない。

正気ではないと判断した土方は、慧に駆け寄った。
 

その時———。
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