新撰組の想い人 ~幕末にタイムスリップしたオメガの行方~

萩の椿

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第17話

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「もしかしたら池田屋の方にいるのかも……、四国屋の方じゃなくて」


慧の言葉に一斉に視線が集まる。


「……何故そう思われるのですか?」


 沖田が一瞬、唖然として慧に問う。


「か、勘ですかね……」


我ながら雑なごまかし方だとは思う。けれど、ここで何も言わず、もしも近藤が怪我でもしたら。それこそ後悔するのではないかと慧は思ったのだ。

許されることではないのかもしれない。けれど、少しでも近藤の助けになりたいという一途な思いが慧を動かした。


しかし、場の雰囲気は芳しくない。沖田も土方も慧を訝しむように見つめ、近藤は腕を組んだまま黙って俯いている。


(怪しまれてるよな……)


とにかく、何かもう少しうまい言い訳をしなければ、そう思い慌てて口を開いたその時、近藤の笑い声が響いた。


「そうだよな、頭で考えても分かんねーなら勘でいくのもありかもしれねえな」

近藤はそう言って、酒を飲み干す。


慧も、あはは、と適当に愛想笑いをしてお茶を濁した。



近藤の笑い声につられ、沖田と土方も緊張がほぐれたのか先程よりは少しだけ表情が和らいでいるように見える。

禁忌をおかしてしまったと自分を責める一方で、それでよかったのだと納得している自分がいた。








その一週間後、池田谷事件が起こった。もちろん慧がその場に居合わせることは無かったのだが、となみやにやってくる客の話を聞く限り、どうやらかなり大きな事件だったらしい。

 慧は近藤の事だけが気がかりだった。

やってくる客にどのくらいの隊士が怪我をしていたのかとか、それとなく聞いてみたりはしたものの、確信の持てる答えは返ってこなかった。


(ケガしてないよな……。もし腕の一本でもなくなってたら俺もう……)


どうしても明るい事を想像できず、ただ、無事を祈る事しかできない自分が情けなかった。




 そして、ほどなくしてまた新選組の来客があった。女将から慧だけの指名が入ったと聞かされ、もしかして近藤なのではないかと胸を躍らせながら部屋に向かった。 



「お待たせしました。お菊にございます」

普段より数トーン高い声をあげてふすまを開けたはいいものの、そこには近藤の姿はなかった。

代わりに、険しい顔をした土方と、それから不敵な笑みを浮かべる沖田が座っていたのだ。
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