傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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二章 過去編

第65話

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一郎の一件で玲子は、辰美がどんな人物なのかを良く学んでいた。


 変に荒川を巻き込んで、迷惑をかけたくない。


 結局、終始気まずい沈黙が流れるだけだったので、玲子は荒川にもう一度頭を下げてその場を去った。

 その夜。


 玲子は辰美と共に屋敷に帰り、夕食をとっていた。


   目の前に置かれた食事に、玲子はあまり手を付けられていない。朝からまともに食べていないというのに、どうしてなのだろう。


  端に置かれたスープはさっぱりしていて飲みやすかったので、それを少しずつ口に運ぶ。

 

  辰美は、玲子が食堂から帰るとすでに社長室にいた。

  それからは、何となく辰美の機嫌が悪いようで、空気がピリついていた。

 何があったのかは分からないが、それでもいつもと変わらず仕事をこなしていたから、まあ、気のせいかもしれない。

 




 
と、その時。





「今日の昼休み、どこ行ってた?」

 低く、機嫌の悪い辰美の声が部屋に響いた。

「別に……。飲み物を買いに行ってただけだけど」

 そういう風に機嫌の悪い声で話しかけられると、こっちも不愛想に返してしまう。

 カタンと、辰美が皿の上に置いたフォークとナイフが音を立てた。

 その音を皮切りに、空気が張り詰める。

「男性社員と話してたって聞いたけど」


 荒川との食堂でのやり取りの事だ。きっと、どこかに見張りがいたのだろう。


「大したことじゃないわ。それより見張りを付けるなんて随分と悪趣味ね」

「体調、悪かったんでしょ? 何で言わなかったの?」

「別に、心配してもらうほどじゃないわよ」

 辰美の詰問に、玲子は素っ気なく返した。二人を包む空気はますます悪くなり、気を利かせたメイドや執事が部屋から出て行く。

 食欲も湧かないので、さっさとお風呂に入って寝ようと玲子は席を立った。

「医者に診てもらおう」
「だから、大丈夫だってば」

 流石に付き合ってられないと、玲子はため息交じりに言った。
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