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二章 過去編
第57話
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翌日から、辰美は玲子を会社に連れて行った。前任者のアキラから秘書の仕事を習ってもらうためだ。
会社に出社した玲子と辰美を見て、「仲のいい夫婦ですこと」とアキラが皮肉を言ってきたが、玲子は言い返したくなるのをぐっと我慢して、アキラに頭を下げた。
「西園寺玲子です。よろしくお願いします」
その様子には、アキラも辰美も驚いていた。
玲子はとにかく外に出れたことが嬉しかった。太陽の光を直に浴びる。昔は紫外線が肌に当たって日焼けするのが嫌だったのに、ちっとも気にならなかった。
とにかく秘書として完璧に仕事をこなそう。そうすれば、辰美は玲子をあの部屋に閉じ込めるようなことはしないだろう。
初出勤の日、玲子は一生懸命アキラから仕事を教わった。それから一日、一日と時は過ぎ、二週間が過ぎた頃、玲子は独り立ちした。
玲子の仕事は、辰美のスケジュール調節・管理、来客・電話・メール対応、文書作成・管理、辰美の社内業務のサポートと色々だ。
一日が目まぐるしく忙しい辰美のスケジュールは、分刻みで予定が入っている。予定を見落とさずにスケジュールを組むことに細心の注意を払いながらも玲子は一生懸命仕事をこなした。
「東西社長、明日のスケジュールを確認してもよろしいでしょうか?」
「うん」
また、あっという間に一日が過ぎ、今は辰美と共に屋敷に帰っている最中だ。こういう時間があるのだから、うまく活用しなければと、屋敷に戻るまでの時間は、辰美に明日のスケジュールを伝えたり、仕事の話をしたりしている。
玲子はこの仕事が好きだった。たった、二週間ほど勤めただけ、まだ仕事の厳しさを何もわかってないと思う。失敗して辰美に迷惑をかけたこともあった。
けれど、辰美の秘書として勤めている間は、辰美と他人になれた気がしていた。
「東西社長」
玲子はこの呼び方が好きだった。
仕事中は、辰美も玲子の事を「西園寺さん」と呼んでいる。
この時だけは、二人には何の関係もないように思えた。それが玲子はすごく心地よかったのだ。
「明日は、出社してから一時間は社内業務です。その後、十時半から○○会社の木崎様がお越しになられます、そして十一時から——」
軽快に話す玲子の言葉を、辰美が口づけで止めた。
深く、口腔をなぶるようなキスだ。
辰美のスケジュールを管理している電子パッドに目を落としていたので、突然のキスを防ぐことができず、舌の侵入を許してしまった。
いくら押し返してもビクともしないと分かっていても、玲子は辰美の胸板を押し返す。抵抗せずにはいられない。
辰美はしつこかった。歯型をなぞり、玲子の舌を捕らえてきつく吸い上げる。頭の後ろに手を回されているせいで、顔を逸らすこともできない。
酸素が十分に吸えず、意識がもうろうとし始めたところで、辰美がようやく玲子の唇を解放した。
会社に出社した玲子と辰美を見て、「仲のいい夫婦ですこと」とアキラが皮肉を言ってきたが、玲子は言い返したくなるのをぐっと我慢して、アキラに頭を下げた。
「西園寺玲子です。よろしくお願いします」
その様子には、アキラも辰美も驚いていた。
玲子はとにかく外に出れたことが嬉しかった。太陽の光を直に浴びる。昔は紫外線が肌に当たって日焼けするのが嫌だったのに、ちっとも気にならなかった。
とにかく秘書として完璧に仕事をこなそう。そうすれば、辰美は玲子をあの部屋に閉じ込めるようなことはしないだろう。
初出勤の日、玲子は一生懸命アキラから仕事を教わった。それから一日、一日と時は過ぎ、二週間が過ぎた頃、玲子は独り立ちした。
玲子の仕事は、辰美のスケジュール調節・管理、来客・電話・メール対応、文書作成・管理、辰美の社内業務のサポートと色々だ。
一日が目まぐるしく忙しい辰美のスケジュールは、分刻みで予定が入っている。予定を見落とさずにスケジュールを組むことに細心の注意を払いながらも玲子は一生懸命仕事をこなした。
「東西社長、明日のスケジュールを確認してもよろしいでしょうか?」
「うん」
また、あっという間に一日が過ぎ、今は辰美と共に屋敷に帰っている最中だ。こういう時間があるのだから、うまく活用しなければと、屋敷に戻るまでの時間は、辰美に明日のスケジュールを伝えたり、仕事の話をしたりしている。
玲子はこの仕事が好きだった。たった、二週間ほど勤めただけ、まだ仕事の厳しさを何もわかってないと思う。失敗して辰美に迷惑をかけたこともあった。
けれど、辰美の秘書として勤めている間は、辰美と他人になれた気がしていた。
「東西社長」
玲子はこの呼び方が好きだった。
仕事中は、辰美も玲子の事を「西園寺さん」と呼んでいる。
この時だけは、二人には何の関係もないように思えた。それが玲子はすごく心地よかったのだ。
「明日は、出社してから一時間は社内業務です。その後、十時半から○○会社の木崎様がお越しになられます、そして十一時から——」
軽快に話す玲子の言葉を、辰美が口づけで止めた。
深く、口腔をなぶるようなキスだ。
辰美のスケジュールを管理している電子パッドに目を落としていたので、突然のキスを防ぐことができず、舌の侵入を許してしまった。
いくら押し返してもビクともしないと分かっていても、玲子は辰美の胸板を押し返す。抵抗せずにはいられない。
辰美はしつこかった。歯型をなぞり、玲子の舌を捕らえてきつく吸い上げる。頭の後ろに手を回されているせいで、顔を逸らすこともできない。
酸素が十分に吸えず、意識がもうろうとし始めたところで、辰美がようやく玲子の唇を解放した。
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