傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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二章 過去編

第55話

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 記憶を巡る中で、辰美はおかしくなって何度も車内で噴き出した。

 あの時の自分に伝えてやりたい。かなり強引な方法ではあるけれど、無事に玲子と籍を入れることが出来そうなことを。

 プライドを無くしてでも、大輔や幸之助に媚びへつらって良かったのだと。


  当時の自分が知ったら、どんな反応をするのだろうか。

 



   そのまま車は走り続け、会社へと到着した。

 社長室につき、上着をハンガーにかけているとノックもなしにアキラが入ってくる。

「ノックしろって」

「ああ、すまん」

 アキラは謝ってくるけれど、まるで心がこもってない。ずかずかと中に入ってきて、辰美の前で足を止める。

「それで、この前の話だけどよ。玲子お嬢様をお前の秘書にするって話。本当にやるのか?」

「ああ」

 玲子を自分の秘書にする。内密に進めていたことを、先日アキラに話したばかりだった。

 あの屋敷でずっと囲っておいてもいいのだけど、それだと玲子の精神状態が悪くなってしまうし、この前屋敷から脱走された。

 自分の手元に置いておけば、常に玲子と接することができるし、見張ることもできる。

 そういう利点から、思いついたことだった。一応、幸之助にも話してみたが、快く許可してくれた。

「だったら、俺はどうなるんだよ」
 
 しかし、現在の秘書、アキラは口をとがらせて文句を言ってくる。

「心配するな。お前は出世するよ」

 そう言うと、アキラは口角を吊り上げて笑った。

「良い部署に飛ばせよ」

「おう」

 アキラは社長室から出てゆき、辰美も早速仕事に取り掛かった。
  




               ◇◇◇◇◇◇



 玲子は、重い体を引きずりながら、シャワールームへと歩いた。

 温水を体に浴びながら、辰美に触られた体の隅々まで、ボディーソープで洗い流していく。

 悲しい気持ちなのに不思議と、もう涙は出なかった。

 淡々と、体を洗い髪の毛を洗い、それから部屋に戻ると、見知らぬメイドがテーブルに食事を並べていた。

「おはようございます、お嬢様。朝食が出来上がっております」

 返事をする気にもなれず、ベットにだらりと寝転がる。

(なんだろう……今日は何もやる気になれない)

 シャワーを浴びただけで、体力をすべて使い果たしてしまったみたいに動けない。

 糖分が切れているのだろうか。全く頭も働かない。

(もう、いいや。二度寝しよう)

 玲子は瞼を閉じた。
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