傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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二章 過去編

第48話

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「いたいっ」

「俺は、女性をおもちゃだなんて思ってないよ」




伝わって欲しい。君だけには。



「分かったから……、この手を離しなさい」




玲子の潤んだ瞳に見つめられ、はっとする。



我を忘れて、玲子の手首を強く掴みすぎていた様だ。




「ごめん、お嬢」



手を離すと、玲子は自分の手首をいたわるように擦った。

そして、きりっとした瞳で辰美を睨み上げる。

「この事は、お父様に報告するわ。今日の授業はもうおしまい。帰って頂戴」

機嫌を損ねてしまったのだろう。玲子は踵を返し部屋から出て行ってしまった。




                            ◇◇◇◇◇◇




やってしまった。

翌日、辰美はデスクに項垂れていた。一端の大人が高校生を傷つけてしまうなんて、なんと情けない。

あの時、玲子の目は潤んでいた。

(痛かったんだよな、きっと)


とりあえず、一刻も早く謝罪をしなければ。あのあと、玲子の部屋を訪ねたが会ってもらえなかったのだ。

この場合、何か土産を持っていった方がいいだろう。
玲子は確か、洋菓子が好きだから、ケーキや、見た目が可愛いマカロンがいいだろうか。

いやしかし、こんなあからさまだと、許して欲しいと媚びを売っているように見られるだろうか。
 
頭の中でモヤモヤと考えていたその時、携帯の着信音が鳴った。ディスプレイには、西園寺大輔とある。

しまった、そう言えば昨日玲子が父親に言いつけるとか何とか言っていた。

その流れからして、きっとお叱りの電話だろう。


(俺は何であんな事……)

今更ながら後悔が押し寄せてくるが、もうどうすることもできない。不甲斐なさに苛まれ、渋々電話を取った。

「ああ、辰美君? ひさしぶり、最近会えてないね」

予想に反して、電話の向こうから聞こえるのは朗らかな大輔の声だった。

「はい、ご無沙汰しております。大輔様」

辰美は、まるで大輔が目の前にいるかのように背筋を伸ばし深くお辞儀をした。

「そんな改まらなくてもいいのに、悪いね仕事中に。実は昨日玲子から話を聞いてね。玲子の話は本当なのかな? 君にも一応確認を取りたくて」

玲子は昨日の事をどこまで大輔に伝えたのだろうか。きっと玲子の事だから、包み隠さず話しているに違いない。

もしかしたら、これを機に解雇しようと、辰美を貶めるような言い方さえしているかもしれない。


しかし、辰美は玲子にやってしまったことを深く反省していた。

今更、否定しようとも思わない。罰は甘んじて受ける。


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