傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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二章 過去編

第47話

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それから数日後、辰美はいつもの様に玲子の元へと向かった。

目の前に座る玲子は、今日も相変わらず退屈そうに机に肘をついて左手でペンを回している。

この前まで、その態度にいちいち腹を立てていたはずなのに、今はその姿が可愛く見えてしまうのだからもう自分でもどうしようもない。



「お嬢、進学先どこにするの?」


玲子はもう高校二年生。そろそろ進学する大学が決まっていてもおかしくない時期だ。

ふと気になって尋ねた言葉に、玲子は目を丸くした。

それはきっと、予想外の言葉だったのだろう。なにせ、辰美と玲子は今まで一定の距離を保ち、お互いにプライベートな話をするのは避けてきたのだから。

でも、これからは違う。

この子がこれからどんな選択をしてどんな人生を生きていくのか。

どんな些細な事でも知りたいんだ。



「どうしてそんなこと聞くの?」

戸惑いの表情を浮かべ、玲子は辰美に聞く。

「別に、大した理由はないよ。ただ気になるんだ」


辰美は玲子との距離を一歩ずつ縮める。



「〇〇大学だけど……」

「どうして?」

玲子の前にしゃがみ、同じく肘をついて玲子を見据える。

いつもはこんなに近づいて話さない。

玲子は辰美から距離を取るように席を立った。


「け、経済学部があるからよ」


「経済学部があるだけなら、今の高校から持ち上がりの大学でいいんじゃないの?」

「いやよ、もう女子校はたくさんなの。それなりに恋愛だってしたいわ」


玲子の言葉が、ナイフのごとく心にぐさりと刺さる。


玲子は中高一貫校で、それもずっと女子校だ。年頃の女子には少し刺激が足りないかもしれない。


けれど、玲子が他の男と恋愛関係になるのはいただけない。

「へー、お嬢も恋愛したいとか思うんだ」

動揺を悟られないように、笑って質問してみる。

しかし、それが玲子には馬鹿にされたように感じたらしく、棘のある言葉が返ってくる。

「そうよ、悪い? まあ、辰美みたいに女をおもちゃとしか思ってない人には分からないかもね! 私は真っ当な恋愛をして、私だけを思ってくれる人と結婚するの!」

玲子の中で、自分は女性を卑下しているように映っていたのか。女性をおもちゃだなんて思ったことは無いけれど、確かにそう思われてもおかしくはないような行動を自分はしてきたのかもしれない。

けれど、そうだとしても玲子にだけにはそんな風に思われたくない。

「おもちゃだなんて思ってないよ」

「あー、はいはい。分かった」

玲子は適当に頷きながら辰美の言葉を受け流す。

分かってないだろ? 違うんだよ、君にだけは分かってほしんだ。

辰美は玲子の手首を掴んだ。
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