傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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二章 過去編

第39話

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それから辰美は家に帰り、無事にアメリカ支社との会議を終えることができた。



大学を卒業してからは、父親が暮らす東西家本邸で暮らしている。

別に一人暮らしを続けていても良かったのだが、まるで抜け殻の様な人になってしまった父親の事を見離せなかったのだ。


四年という長い歳月が経っても、相変わらず父は酒におぼれている。


ステンドグラスが窓一面に施されている部屋に閉じこもって朝から晩まで酒を飲み明かすのが父親の日常だ。




辰美は食事を終えるといつもの様に父親の元へ向かった。












「父さん、お酒もそのくらいにしときなよ。また体壊すよ」


車いすに座る父親に向かって辰美は朗らかな口調で話す。

右手に握りしめているビール缶を無理やりにでも取り上げることもできるのだが、そうするといつも暴れて手が付けられなくなるので、最近は本人のやりたいようにさせている。


「今日は、またお嬢のところに行ってきたよ。相変わらず、いやなガキだよ」


辰美は今日あった出来事を父親に報告するのが日課になっていた。


父親からの返事は一切返ってこないし、愚痴っても他に漏れる心配がないのでいつも際限がなくなってしまう。


「何が凛としたお嬢様だ。あんなの俺からしたら怪獣と変わらないよ、自分の要求通りにいかないと納得できない赤ちゃん怪獣だ。たくっ、いいよなあ。親が権力者ってのは」


辰美が鼻を鳴らして笑うと、父親は黙って酒を飲む。


こうやって、辰美が父親に対して一方的に喋る。今はこれが唯一のコミュニケーションをとる方法なのだ。




それから暫く、辰美が話していると急に雨が降り始めた。


かなりの豪雨だろう、ステンドグラスに雨が打ちつけられている。



そう言えば朝のニュースで、今日から明日の朝にかけて雨が降ると言っていたなと胸のうちで納得しながら、その様子をただ、ぼーっと眺めていた時だった。



「あの日も、丁度こんな雨だったんだ」


隣から突然声がした。



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