傲慢令嬢、冷徹悪魔にいつの間にか愛されて縛られてました

萩の椿

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第一章

第24話

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どう考えても、正気とは思えない。

こんなものを撮影していたなんて。

スマホから流れる自分の声にぞっとする。今すぐ、耳を塞ぎたい。



三分ほどの動画が終わり、一郎が顔を伏せたまま、玲子に問いかけた。


「玲子ちゃん……これって」

「違うの! 一郎……、これは」


なんて説明すれば、誤解が解けるのだろうか。

合意の上じゃない? 辰美に無理やり迫られて?

でも、この辰美を呼ぶ甘い声は、まるで自らが求めているように聞こえる。


「何が違うんだよ」

礼子の言葉を辰美が遮った。

「喘いで、乱れて、よがりまくってたくせに」

「何言って……」

「否定するんなら、今度鏡の前でヤッてみる?自分の表情が良く見えると思うよ」

あろうことか、辰美はこの状況で笑っていた。

玲子と一郎の反応を楽しむかのように。

(どんな神経してんのよ)

玲子は辰美の頬を叩いた。

辰美の前髪が少し乱れて目にかかる。

「乱暴だな、まったく」

辰美はため息をついて、髪をかき上げた。

(この男、本当に一回締め上げてやりたい)

しかし、今は辰美に気を取られている場合じゃない。

一郎の誤解を何とか解かなければ。

玲子は一郎の隣に座り手を重ねた。

どうにか説明すれば一郎は分かってくれるはずだ。倦怠期だって、揉め事があった時だって、いつも、二人で話し合って解決してきたのだから。


「一郎、あのね……」


すると、一郎は礼子の手をはらった。


「ごめん、ちょっと混乱してる」


一郎は礼子と目を合わせようとしない。


「どうして言ってくれなかったの?」

「え?」

「辰美さんとのことだよ。とても許せるようなことじゃないけど、玲子ちゃんの口から聞いてたらまだ違ってた」


その横顔は、傷ついているような、怒っているような、複雑な表情。


玲子は返す言葉が見つからなかった。

一郎との関係を壊したくなくて……、その一心だった。

それが、こんな風に裏目に出てしまうなんて。


「それに、西園寺グループの事だって今まで話してくれなかった」

一郎がブツブツとふてくされたように言う。

「それは……」

玲子が一郎にその事を話さなかったのは、変に気を使ってほしくなかったからだ。

自分が西園寺グループの人間だと明かせば、おそらく一郎は身分が釣り合わないとか、何とか言って、玲子とは付き合わなかっただろう。


「別に、深い意味はないよ!ただ、一郎に気を使ってほしくないから……」

玲子の声は一郎には届いていない。

一郎は全てを拒絶するように、耳を塞ぎ、項垂れていた。



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