23 / 72
第一章
第21話
しおりを挟む
大通りに出て、タクシーを捕まえた玲子は無事に空港に着くことが出来た。
搭乗口の近く、けれど目立たないように端の方で、玲子は一郎を待った。
時計は3時10分をさしている。
辺りを見回しても一郎の姿は見当たらない。
(やっぱり、いきなり過ぎたよな……)
突然、イギリスに行こうと言われて、はい分かりましたと、決断できる人はそう居ないだろう。
例え、それが恋人の頼みだとしても、今までの生活を捨てるということになるのだから。
「はぁー」
玲子が深くため息をついた時、スマホの着信音が鳴った。
画面には伊藤と表示されてある。
「もしもし、伊藤?どうしたの?」
「どーも」
伊藤ではない見知らぬ男の声がした。
「誰?」
「俺だよ、1回会ってるけど覚えてないか?」
「くどいわ、早く名乗りなさい」
「相変わらずだな。辰美の幼なじみって言ったらわかるか?長谷川アキラだ。今は辰美の秘書をしてる」
玲子は目を見開いた。
(長谷川アキラって、あの時の……)
玲子は1度だけ長谷川と会ったことがあった。
あれは、玲子が高校生の頃、西園寺グループ主催のパーティーに参加した時だ。
一際女性陣の注目を集めていた二人の男。辰美と長谷川アキラ。
一言挨拶を交わしただけであったが、印象が強烈でよく覚えている。
辰美と幼なじみとは聞いていたが、まさか秘書になっているとは思わなかった。
しかし、なぜ、長谷川が伊藤の電話から出てくるのか。
玲子はひと呼吸おいて尋ねた。
「なんの用?」
「伊藤は捕まえた」
「なっ……」
玲子の手が震える。
「辰美から全部聞いた。まあ、大人しく帰ってきた方がいいと思うぜ。アイツ怒ると怖いからな」
「お嬢様、私には構わず行ってください!」
電話の向こうから長谷川の声と被って伊藤の声が聞こえた。
「今、辰美がそっちに向かってるはずだ」
スマホを握っていた手に、急に力が入らなくなってだらんと下に垂れた。
バキっと、嫌な音がしてスマホが地面に落ちる。
その瞬間、妙に周りが静かになって、人々の足音が嫌に頭に響いた。
その中に、真っ直ぐ玲子に向かって来ている足音が一つ。
「みっけ」
顔をあげれば辰美が、2人の執事を連れて立っていた。
搭乗口の近く、けれど目立たないように端の方で、玲子は一郎を待った。
時計は3時10分をさしている。
辺りを見回しても一郎の姿は見当たらない。
(やっぱり、いきなり過ぎたよな……)
突然、イギリスに行こうと言われて、はい分かりましたと、決断できる人はそう居ないだろう。
例え、それが恋人の頼みだとしても、今までの生活を捨てるということになるのだから。
「はぁー」
玲子が深くため息をついた時、スマホの着信音が鳴った。
画面には伊藤と表示されてある。
「もしもし、伊藤?どうしたの?」
「どーも」
伊藤ではない見知らぬ男の声がした。
「誰?」
「俺だよ、1回会ってるけど覚えてないか?」
「くどいわ、早く名乗りなさい」
「相変わらずだな。辰美の幼なじみって言ったらわかるか?長谷川アキラだ。今は辰美の秘書をしてる」
玲子は目を見開いた。
(長谷川アキラって、あの時の……)
玲子は1度だけ長谷川と会ったことがあった。
あれは、玲子が高校生の頃、西園寺グループ主催のパーティーに参加した時だ。
一際女性陣の注目を集めていた二人の男。辰美と長谷川アキラ。
一言挨拶を交わしただけであったが、印象が強烈でよく覚えている。
辰美と幼なじみとは聞いていたが、まさか秘書になっているとは思わなかった。
しかし、なぜ、長谷川が伊藤の電話から出てくるのか。
玲子はひと呼吸おいて尋ねた。
「なんの用?」
「伊藤は捕まえた」
「なっ……」
玲子の手が震える。
「辰美から全部聞いた。まあ、大人しく帰ってきた方がいいと思うぜ。アイツ怒ると怖いからな」
「お嬢様、私には構わず行ってください!」
電話の向こうから長谷川の声と被って伊藤の声が聞こえた。
「今、辰美がそっちに向かってるはずだ」
スマホを握っていた手に、急に力が入らなくなってだらんと下に垂れた。
バキっと、嫌な音がしてスマホが地面に落ちる。
その瞬間、妙に周りが静かになって、人々の足音が嫌に頭に響いた。
その中に、真っ直ぐ玲子に向かって来ている足音が一つ。
「みっけ」
顔をあげれば辰美が、2人の執事を連れて立っていた。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
お酒の席でナンパした相手がまさかの婚約者でした 〜政略結婚のはずだけど、めちゃくちゃ溺愛されてます〜
Adria
恋愛
イタリアに留学し、そのまま就職して楽しい生活を送っていた私は、父からの婚約者を紹介するから帰国しろという言葉を無視し、友人と楽しくお酒を飲んでいた。けれど、そのお酒の場で出会った人はその婚約者で――しかも私を初恋だと言う。
結婚する気のない私と、私を好きすぎて追いかけてきたストーカー気味な彼。
ひょんなことから一緒にイタリアの各地を巡りながら、彼は私が幼少期から抱えていたものを解決してくれた。
気がついた時にはかけがえのない人になっていて――
表紙絵/灰田様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています
Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。
意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。
戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく――
イラスト:らぎ様
《エブリスタとムーンにも投稿しています》
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。
真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。
地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。
ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。
イラスト提供 千里さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる