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第2章
第53話
しおりを挟む「ア……ノア!」
遠くから聞こえる叫び声に、ノアは呼び起された。
「ノア! 大丈夫か? うなされていたぞ」
目の前には、ノアを心配そうに見つめるルーシュの顔があった。
「うん……、大丈夫」
「本当か?」
ルーシュに渡された水をごくりと飲み干し、ノアはベッドから起き上がった。
「俺、さっきノアに会ってきたんだ」
「ノアに?」
ルーシュは訝し気な顔をして、ノアを見つめた。
「墓、たててほしいって言ってたんだ。ノア」
「ちょっと待て、何の話をしているんだ?」
唐突に話し始めたノアの話を理解できず、首を傾げるルーシュに、ノアは夢でノアに会ったこと、それからノアと話したことを詳細に伝えた。
「ノアは、ただこの平和同盟が嫌で自殺したんじゃなかったんだ。セルの事を大切に思っていたからこそ、自分で命を絶ったんだよ」
ノアと話し合ったことを伝え終わると、ルーシュは険しい顔をしていた。
「私は、だめな人間だな……。平和同盟だなんて言って、それで命を落とす者がいるなんて考えもせず……」
「ノアは恨んでないって言ってた。平和同盟で、敵同士だった国民達が手を取る姿を見ることができたんだって言ってたよ」
「しかし……」
ノアは俯いたルーシュの肩にそっと手を置いた。
「だから、ノアの望みを叶えてあげようよ。この城の領地に墓をたててあげたいんだ」
「ああ、分かった」
ルーシュが頷いたと同時に、ドアが勢いよく開いた。
「かか!」
そこに立っていたのはメアリだった。瞳に涙をいっぱいに浮かべ一目散にノアに飛びついた。
「かか! かか!」
ノアの胸に頭をこすりつけ、メアリは何度もそう叫んだ。
「どうしたんだよ、メアリ……」
「どこ行ってたのかか……、メアリを置いて……」
メアリはルーシュとノアがいない間、使用人に預けられていた。ルーシュがノアを連れ戻してきてからも、メアリはノアと会えておらず、久しぶりの対面なのだ。
「どこにもいかないで、かか」
メアリはノアの首元に抱き着いて、泣きじゃくった。ルーシュが険しい顔をして出て行ってからというもの、ノアの安否をメアリなりに心配していたのだろう。
こんなにも感情を露わにするメアリは、久しぶりだ。
「大丈夫。もうどこにもいかないよ」
ノアはメアリの体を抱きしめた。
(こんな小さな子どもを、長い時間一人にしてしまった……)
置いていかれるのだろうかと心配させるほど、メアリは寂しかったのだ。二度とこんな思いをさせないように、ノアは強くメアリの体を抱きしめた。
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