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第2章

第51話

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 その日の夜、アキは不思議な夢を見た。


 黄色と白が混ざり合った淡い空間に、本物のノアが立っている。


「お久しぶりですね、アキさん。でも、ずっと僕の顔を見てたから、そんな気もしないかな?」


 ノアはにっこりとアキに微笑んだ。


「本当にノアなのか?」
「ええ」
「どうして……、ていうか、ここどこだ……?」


 アキは辺りを見回した。ノアとアキがいる空間は仕切りなどが一切なく、どこまでもこの空間が続いているような場所だった。体も浮遊感に包まれていて、立っているけど足が地についていないような変な感覚だ。


「どうしてもあなたと話がしたくて。あなたの夢の中にお邪魔してしまいました」


 ノアは無邪気に笑い、アキの手を取った。


「少し、歩きましょうか」


 ノアに手を引かれ、アキは足を踏み出す。アキは辺りを不思議に見回しながらも、先を歩くノアの背中を追いかけた。





「セルの言葉は気にしないでください」
「え?」
  

 暫く歩いたところで、唐突にノアが話題を切り出した。



「アキさんは、セルに言われた言葉を気に病んでいますよね?」


「それは……」


 図星を突かれ、アキは頷くほかなかない。


「セルに言われた言葉で、この先ノアとして生きて行っていいのか分からなくなった……。他人の体を勝手に借りてさ……」


「ちょっと待ってください。アキさん、僕と会った時と言ってること違いませんか?」



「は?」


 ノアに言葉を遮られ、アキは首を傾げた。



「俺達、会ったことないだろ?」


「ええ! ありますよ一度だけ! 僕がアキさんに体を渡した時! 覚えてないんですか?」



 ノアの問いかけに、アキは首を振った。いくら記憶を思い返しても、ノアと会ったことなど思い当たらない。


「おかしいな……。記憶が無くなってるんですかね……」


 ノアは顎に手を当てて考え込んだ。


「まあいいや。では、僕の記憶をお話しします」



 それからノアは、アキに初めて会った時の事を語り始めた。


「僕がアキさんに初めて会ったのは、自分で命を絶った日の事です。霊魂として彷徨っていた僕は、何故か車に引かれて命を落としたばかりのあなたの霊魂と巡り会った」



「はあ……」


 にわかには信じられない話に、アキはただ相槌を打つしかない。



「そこで、僕達は少し話をしたんですよ」


「話?」


「ええ。僕が自殺した経緯を話すと、アキさんは怒りました。俺なんか、もっと生きたいのに、自分から命を手放すなんてどうかしている! 俺なら、どんなに辛い事があっても、生き抜いていく自信があるぞ、と」



 アキは、必死に記憶を思い返してみるが、やはりまったく思い当たることがない。



「それで、僕は少しあなたに興味が湧いたのです。そこまで言うなら、僕の体を渡して、あなたがどんなふうに生きていくのか見てみようと。だから、僕がアキさんに体を渡したのであって、アキさんが僕の体を勝手に借りているわけではないですよ」



「そう……なのか?」


「どうりで会話がかみ合わないと思いました。まあ、記憶が抜け落ちてるなら仕方がないですね」


 ノアはへらへらと笑って、アキの先を歩いていく。そんなノアに、アキは今までずっと聞きたかったことを問いかけた。
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