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第2章
第28話
しおりを挟む「分かります。僕もゼノ様とたくさん喧嘩しましたよ」
「え?」
ゼノとは、つまりノアの兄の事だろう。ダリルからの手紙と一緒に入っていた写真に写っていた、ノア似の男性。
ノアは初めて自分の兄の名前を知った。しかし、それよりも、正直なダリルの言葉に驚きを隠せなかった。
「今もよく喧嘩します」
「でも……、だったらどうやって仲直りするんですか!?」
笑って話すダリルに、ノアは問いただした。
仲直りの方法、それを知ることができれば、今のルーシュとの関係を修復できるかもしれない。焦るノアに、ダリルは優しく微笑みかけた。
「とにかく、向き合って話しました。話し合いを避けていては何も解決しません」
ダリルの答えは、案外単純なものだったけれど、ノアの痛いところをついた。
どうせ分かってもらえないだろうと思い、ルーシュには話すことを避け、それで、どんどん溝が大きくなっていってしまった。確かにダリルの言った通り話し合わなければ、今相手がどう思っているかなんて分からないし、二人の関係も進展しないだろう。
(でも、本音をぶつけても上手くいかなかったんだよな)
本音をぶつけたことによって、ルーシュは食事を食べなくなってしまった。あれから、何度も普通の食事に戻すように言ったのだが、ルーシュは全く聞き耳を持たず、少しやせてしまった。
「兄は、言葉が少ないし、分かりにくい人でしょ?」
ダリルは笑いながら、ポケットに片手を突っ込み、紙切れのようなものを取り出した。
「これ、兄上が僕にくれた手紙です。挨拶もそこそこに三分の二以上がノア様の事ですよ。元気がないだとか、暫く話せていないだとか。ここに帰ってきたのだって、ノア様の相談に乗ってあげてくれって兄上にお願いされたからです。あ、これ、秘密ですけど」
「……そうでしたか」
その時ノアはダリルを出迎えた時、ルーシュがダリルの口を塞ぎ、気まずそうな顔をしていた場面を思い出した。
(なんだ、そういうことだったのか)
「気難しい兄ですけど、ノア様の気持ちを理解しようと一生懸命なんだと思います」
ルーシュがダリルにあてた手紙を見ると、本当にノアの事ばかりが書かれてあった。距離が空いていた期間も、ルーシュはノアの事を心配して気にかけてくれていたようだ。
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