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第2章
第27話
しおりを挟む久しぶりの兄弟の再会を邪魔したくなかったノアは、一人書斎にいた。
天井が吹き抜けで高く、壁一体を無数の本が埋め尽くす書斎は、ノアの憩いの場所だ。ルーシュと距離が出来てしまってからは、ノアは書斎に籠ることが多くなっていた。そのおかげで、字の読み書きが少し成長し、簡単な物語くらいは読めるようになった。
(ここにいると、不思議と心が落ち着くんだよな)
物音がしない静かな部屋だからか、気持ちが和み、色々と物事を冷静に考えれるようになる。ここに籠って考えていることはいつも同じだった。
(ルーシュと早く仲直りしないとだよな)
正直言って、ここまでお互いに話さない状態が続くとは思わなかった。仲が悪くなったとかではないのだけれど、お互いに遠慮している感じで、前の様に本音で語り合う事ができないのだ。
一体どうしたものかと、ノアが頭を悩ませていたその時、前触れもなくドアが開いた。
「あ、ノア様! ここにいらしたのですね」
ドアから、ひょこりと姿を現したのはダリルだった。
「あれ、マーク様は?」
「兄上に預かってもらいました」
第2皇子、マークの存在が見えなかったが、どうやらルーシュが預かっているらしい。子供好きのルーシュの事だから、今頃楽しくマークと遊んでいるに違いない。
「ここ、落ち着きますよね。静かだし」
ダリルは懐かしそうに、書斎を見渡した。ダリルもブロン国に嫁に行く前はここをよく利用していたのかもしれない。
「ああ、どうか座ってください。体に負担をかけちゃいけませんからね」
ダリルは、ノアの腰に手を添えてソファーに座るように促してくれた。
「体の方はどうですか?」
「今はなんとか……。でも、お腹が大きくなってからは足腰が疲れやすくて……」
「そうですよね。この時期はお腹が張りますし、しんどいですよね。まあ、妊娠してから楽な次期なんてないですけど」
「そうですよね。本当」
ノアは笑って頷いた。妊娠してからというもの、急に体調が変化することがあったり、一日全く動けない日があったりと、本当に子どもに振り回されっぱなしの毎日だ。そのつらさを妊娠、出産経験者のダリルは分かってくれる。
「夫とも、毎回何故かトラブるし。今までできていた意思疎通がうまくできなくなっていくしで、大変ですよね」
「え、ダリルさんも、そうだったんですか?」
「ええ。という事はノアさんも兄上と上手くいってないんですね?」
逆に聞き返されてしまい、ノアは渋々頷いた。ルーシュの弟だから、心配をかけないように嘘でも大丈夫だと言っておいた方が良かったのだろうか。
しかし、長く続くルーシュとの冷戦状態に疲れきっていたノアは、話を聞いてくれるダリルについ本音をこぼしてしまった。
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