転生した先では、僕の結婚式が行われていました。

第1章

第11話

　




　暫く歩くと、人もまばらになり田畑が目立つようになってきた。黄金色のススキが首を垂れ風になびいている。


「ここだ」



　ルーシュが足を止めた。


「ノワール孤児院」と書かれた看板がある。

　低めの柵が辺りを囲い、広々とした敷地内の中に、真っ白な洋風の建物が立っている。側には子ども用の服が何枚も干されており、その近くには、緑が生い茂る大木がある。



「あ、ルーシュ様だ！」



　外で遊んでいた子どもが一斉にルーシュの元へと集まってくる。ルーシュは、わらわらと集まってきた子どものうちの一人を抱きあげた。



「元気にしていたかルウ？　おお、大きくなったな、リキ」



　一人一人の名前を呼びながら頭を撫でていく。もしかして、名前全員覚えているのだろうか。呆然とルーシュを見つめていると、一人の女性がこちらに駆け寄ってきた。



「マザー、久しぶりだな」
「ルーシュ様、ご無沙汰しております」



　マザーと呼ばれる女性はルーシュに向かって深く頭を下げた。丸眼鏡をかけた物腰が柔らかそうな女性だ。神父のような恰好をしていて、胸のあたりに十字架をさげている。



「こちら、私の妻のノアだ。子どもと関わりたいと言うので連れてきた。どうか手伝いにでも回してやってはくれないだろうか」


「それは、もちろん助かりますけど……、うちは万年人手不足なので」



「では頼む。ノア、念のため家臣を何人かここに置いていく。夕刻五時頃に、また迎えに来る」


「あ、うん……」




　ルーシュはそれだけ言い残すと、踵を返し孤児院の外へと歩いていく。ルーシュの側にいた子供たちは残念そうに眉を下げた。


「あの、では早速手伝ってもらってよろしいでしょうか？」


「あっ、はい！」



　ノアはシスターの後について、孤児院の中に入った。新しく入ってきたノアが珍しいのか、子供たちはノアの後ろにひょこひょこと付いてきた。





　それから、ノアは孤児院の仕事を一通りシスターから教えてもらった。そして、孤児院の子どもと接して分かったことは、やはり自分は子どもが好きだという事だった。力仕事な事もあり、一日働いただけでへとへとになってしまったが、



「また、明日も来てね」



　と笑いかけてくれる子どもたちの顔を見れば、疲れなどすぐに吹き飛んでいった。




　それから、数日。毎日孤児院に顔を出し、次第に子どもたちの顔と名前が一致するようになってきた。

　孤児院の職員たちも皆親切で、ノアが困った時には助けてくれる。特に、大きな問題も起こることなく日々は流れていたが、その中で一つ気になる事があった。



　それは、シスターの態度だった。シスターは、どことなくノアと距離を取っていた。他の職員みたいに、話しかけてくることもなく、ただ関りを持とうとしない。



　しかし、相手の態度ばかりを気にしていても仕方がない。内気な性格なのかもしれないとノア特に気には留めていなかった。