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「……はあ、どうにもしたくないけどどうしよう」

しばらく途方にくれていたウェンディだったが、そのうち立っているのも面倒になって、壊れていない低い石塀へと腰かけた。


ぐぅぅぅと空腹を示すように胃が収縮する音が鳴った。
そう言えば、揺れる馬車で食事を取ることが面倒だったので、道中何も食べてなかったのだ。

肩から下げるカバンからごそごそと紙袋に包まれたサンドイッチを取り出した。

ウェンディは面倒くさがりだが、食べることは比較的好きなことだった。
誰も見ていないからと大口を開けて1口を噛みしめる。

屋敷のコックが作ったハムとレタス、特製ソースで作られたシンプルなサンドイッチだった。

『ガサッ』

その物音に咄嗟にパンを口から離し立ち上がり、音の方向へと目を向ける。

そこにいたのは、がれきの隙間から少し顔をのぞかせてこちらを見る5歳くらいの少女だった。
身なりも薄汚れていて髪も乱れており、見た目から判断するにこの地での争いに巻き込まれた民間人だろう。

ウェンディがこちらに気づき、目が合うとすぐに顔と身体をがれきに隠すが、しばらくするとまた窺うように顔をのぞかせた。


関わったら面倒だなと思ったウェンディは食べかけのサンドイッチを紙袋に戻し、その場を立ち去るため歩き出した。


スタスタスタ

スタスタスタスタ

ウェンディの足音よりも小刻みな足音が聞こえる。

――振り向いたら負けだ。振り向いたら負けだ――

スタスタスタ

スタスタスタタッ


気にしないようにウェンディは早く拠点へ戻ろうとさらに足早に歩くが、後をついてくる足音も駆け足になりながらもついてきた。

『ぐぅぅぅ』
しばらくそんな調子で歩き続けていたが、ウェンディの音よりも数倍大きな音が後ろから聞こえてきた。

「はあ~~~」

そう大きくため息をつき、ウェンディはぱっと後ろへ向き直った。
急に振り向いたウェンディに驚いた少女は、びくっと大きく身体を震わせ、さっと物陰へと隠れこんだ。

少女の隠れた物陰を見つめたが、こちらの様子を窺ってはいるが出てくる様子も一向にないため、ごそごそとカバンからサンドイッチの入った紙袋を取り出し、その場の地面に置く。



そしてこれ以上関わり合うのはごめんだということで、一目散にその場から駆け出す。
決して後ろは振り向かない。

『パタンっ』

拠点のドアを勢いよく閉め、息切れに乱れる呼吸がなかなか整わないし、急に走ったため足腰も痛かった。


こんなに全力で走ったことなんて何年振りだろう?
ああもう、息も苦しいし足も痛いし。疲れたし。

「疲れたし、もう寝よう」

やっと息が整ったところで、バタンと倒れこむようにベッドへと横たわった。




















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