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七
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稔は弓弦と別れたあと、何をすることがあったわけでもないので素直に自宅に戻っていた。面白くはなかったが、することもなかったので自分の部屋で読むともなく漫画を読みながらベッドの上に転がっていた。
暫くすると自宅の階段を上がる音がし、その後直ぐに自分の部屋の戸が開けられた。
「ねえちょっと、稔、弓弦ちゃんのこと知らない?」
母親が神妙な顔でそう尋ねながら入ってきた。
またか。いつもこうだ。
そうとしか思えず母親の方を向き直しもせずに言い放った。
「あ、弓弦? それなら学校帰りに別れたきりだよ」
あからさまに突っ慳貪に答える息子に母親は呆れたようにその顔を見た。
「あら、そうなの? でもさ、あんたってばこの頃、なんか弓弦ちゃんに冷たいんじゃないの?」
困ったもんねという風な母親に稔は苛立ちを覚え、
「変人相手に何を言うわけ? 俺はあいつのお守りじゃないんだぜ?」
「何もお守りとは言ってないでしょ? まあ、そりゃあ、ちょっと変わってるけどね、取り敢えず弓弦ちゃんのお母さんが心配してるのよ」
だからあんたの知ってること教えてあげなさいと母は言う。
稔は自分の母親の性格をよく知っていた。こう言い出したらもう息子の言い分なんて聞きはしない。
尤も母親の方が何処か正しいと分かっているからこそ稔はそれ以上何も言えなくなるのかもしれなかった。
別に母親は単純に幼馴染みである少年を心配しているのだ。それは恐らく美徳で素晴らしいことなんだとは思うが、稔としてはあまり歓迎したいことでもない。
「分かった」
つくづく面倒だと思いながらも体を起こし、いつもの日課だとして諦め、家を出る。
幸い、弓弦の家はすぐ近くなので行くのにはさほど時間はかからない。
昔はよく遊びには行ったものだったが、実のところ、稔はあまり弓弦の家族は好きではない。幼い頃、弓弦と遊んでいるときも何処か冷たさを感じ続け、それは成長すればするほど確信に変わった。
だからあいつの態度もちょっとは分かるんだ、そうは思う。稔にしてみれば弓弦は幼馴染みでもその妹は違っていた。兄である弓弦に対し冷たかったが、その友達である自分にもまたそうだった。
まあ、あの家族がみんなそうだけど。
そんなことを思いながら辿り着いた弓弦の家の前に立ち、決まった手順のように玄関のインターフォンを鳴らし、家人の出るのを待つ。この家に誰かがいないと言うことは殆どない。この時間であればたいていは母親か、妹がいる。
暫くするとインターフォンから誰何する声がした。どうやら母親がいたようだ。
「おばさん、稔ですけど、弓弦とは学校の帰りに別れたきりです。それだけ伝えに来ました」
暫く間が空いてから、
「そう……わざわざ有り難うね、稔ちゃん。あなたなら知ってるかも知れないと思ったものだから」
型どおりの返答だけが返ってきた。そこに弓弦を心配しているという感情は読めなかった。
有り体の感謝の言葉を聞きつつ、稔もいつもどおりの答えを返した。
「いいえ、どう致しまして」
こんな遣り取りはいつも弓弦がいなくなる度にやって来たことだった。代わり映えのしない会話も同じ、展開も変わらない。
それでも彼にはそれに抗うだけの気力もなく、また非情にもなれなかった。
「また迷い猫の家探しをしてるのかもしれないんで探してみますよ」
「有り難う、お願いするわね」
これもまた常套句だった。相手もそれを分かっていての対応だ。
そんなところも腹が立つ。やはり弓弦のことをまるで気遣っていないのが見え見えだったからだ。
……いつの頃からこんなおかしな関係になったのか。
少なくとも幼い頃は違った。いつも一緒に遊んでいたし、弓弦の不思議な話もよく聞いていたものだった。
もともと絵本が大好きであった稔は不思議なことも好きで、それが縁で弓弦一家が引っ越してきて交流がはじまったのだ。
人見知りをする子どもだった弓弦に積極的に話しかけたのは稔の方であり、その際に色々自分の読んできた絵本の話をしてみたことが仲良くなったきっかけでもある。弓弦としては恐らく子どもなりの判断で稔になら話してもいいと思ったのだろう。
弓弦の話す物語は稔が一度も絵本で読んだことのないものばかりであった。いつも猫が出てくるのが特徴的で、しかも言葉を話すのだと弓弦は語ったものである。
当然子どもの頃はそれを信じていたし、楽しかったのだ。偶に行方知れずになる幼馴染みは本当に猫に連れられて言ってしまったのではないかと思い、心配もした。 しかし本当は弓弦が持って帰ってくるだろう話を真っ先に聞きたかったのが本音だった。
猫が御馳走を用意してくれ、歌い踊る世界は想像するだけでも楽しい。
たまには他の動物でもいいじゃないかと尋ねたこともあるが、猫じゃなかったらそんなことはしてくれないよと弓弦は微笑った。
弓弦の話は子どもにはとても素晴らしく聞こえたし、稔もそんな話をする弓弦に憧れてすらいた。
そんな関係が崩れてしまったのは確か、小学校に入った頃である。
もともと時折ぼーっとしていることの多かった弓弦が車道で急に立ち止まり、そのまま信号が赤になっても動かなかったことがあった。そこは往来の激しい通りであり、そんな真似は幾ら幼くても危ないと分かる行動だった。
稔が大慌てで弓弦を呼ぶが、聞こえないのか弓弦はまったく動かない。どうしたらいいか分からないまま稔は幼馴染みを見遣った。するとそこだけ世界が違ったのだ、弓弦の周りにいないはずのものが稔には見えた。弓弦の話どおりの猫の耳をしたものが彼の傍で立っていた。
お出でお出でと呼んでいるようにしか見えず、また弓弦もそれに抗う気はないのか差し出された手に自分の手を乗せようとしていた。
稔は瞬間、駄目だと思った。あのままでは弓弦が連れて行かれてしまう!
だから我が身を省みず走り出し、必死に弓弦の名を呼んだ。
一瞬、弓弦が自分の方を向いたのが分かった。その顔は稔がよく知っているはずの少年であるはずなのにまるで違うもののように見えた。
恐い!
それが正直な稔の気持ちだった。
その後、直ぐ弓弦はクラクションを派手に鳴らす車にはねられ、稔の目前で宙を舞ったのである。
ああいうとき、現実感というものは本当に遠い。
弓弦が空を飛んで言ってしまうと錯覚すらするくらいに遠くへ飛ばされて行った。
ハッと気が付き、稔は急いで弓弦の元へと駆けつけ、再び幼馴染みの名前を呼び続けた。
絶対に死んで欲しくなかった。稔にとっての最高の友達だったからこそ!
記憶としてはあまりその後はっきりしない。親に聞いたところによれば看病すると言って聞かなかったらしい。
すべてが終わった後、稔は考えて考え抜いたのだ。弓弦を現実に戻してやらなければならない、それが出来るのは自分だけなんだと理解したからだ。だからその日から稔は弓弦の話を頭から否定し、聞かないようにした。そうすることで弓弦がきっと目を覚ましてくれると思ったのだ。
しかし本当にそれが正しかったのかどうか分からない。現時点で稔の努力はまったくもって報われていないからだ。稔が話を聞かなくなったことにより残念ながら弓弦は段々と排他的になり、人付き合いも避けるようになった。誰も聞いてくれないことに絶望していたのかも知れない。
けれど稔はそんな弓弦の態度に余計にムキになってよくないと言い続けてきた。お前は正しくないと繰り返し繰り返し。
相手がそれを望んでいないと分かった時は絶望したが、それでも自分がやってやらなければならないと決めたのだ。
それでも変わらない相手に稔としても心は折れかけていた。
相手がそう思わないのにこっちばっかり熱くなってもな。
そう結論づけようとは思うものの、何処か諦めることが出来ないでいた。
暫くすると自宅の階段を上がる音がし、その後直ぐに自分の部屋の戸が開けられた。
「ねえちょっと、稔、弓弦ちゃんのこと知らない?」
母親が神妙な顔でそう尋ねながら入ってきた。
またか。いつもこうだ。
そうとしか思えず母親の方を向き直しもせずに言い放った。
「あ、弓弦? それなら学校帰りに別れたきりだよ」
あからさまに突っ慳貪に答える息子に母親は呆れたようにその顔を見た。
「あら、そうなの? でもさ、あんたってばこの頃、なんか弓弦ちゃんに冷たいんじゃないの?」
困ったもんねという風な母親に稔は苛立ちを覚え、
「変人相手に何を言うわけ? 俺はあいつのお守りじゃないんだぜ?」
「何もお守りとは言ってないでしょ? まあ、そりゃあ、ちょっと変わってるけどね、取り敢えず弓弦ちゃんのお母さんが心配してるのよ」
だからあんたの知ってること教えてあげなさいと母は言う。
稔は自分の母親の性格をよく知っていた。こう言い出したらもう息子の言い分なんて聞きはしない。
尤も母親の方が何処か正しいと分かっているからこそ稔はそれ以上何も言えなくなるのかもしれなかった。
別に母親は単純に幼馴染みである少年を心配しているのだ。それは恐らく美徳で素晴らしいことなんだとは思うが、稔としてはあまり歓迎したいことでもない。
「分かった」
つくづく面倒だと思いながらも体を起こし、いつもの日課だとして諦め、家を出る。
幸い、弓弦の家はすぐ近くなので行くのにはさほど時間はかからない。
昔はよく遊びには行ったものだったが、実のところ、稔はあまり弓弦の家族は好きではない。幼い頃、弓弦と遊んでいるときも何処か冷たさを感じ続け、それは成長すればするほど確信に変わった。
だからあいつの態度もちょっとは分かるんだ、そうは思う。稔にしてみれば弓弦は幼馴染みでもその妹は違っていた。兄である弓弦に対し冷たかったが、その友達である自分にもまたそうだった。
まあ、あの家族がみんなそうだけど。
そんなことを思いながら辿り着いた弓弦の家の前に立ち、決まった手順のように玄関のインターフォンを鳴らし、家人の出るのを待つ。この家に誰かがいないと言うことは殆どない。この時間であればたいていは母親か、妹がいる。
暫くするとインターフォンから誰何する声がした。どうやら母親がいたようだ。
「おばさん、稔ですけど、弓弦とは学校の帰りに別れたきりです。それだけ伝えに来ました」
暫く間が空いてから、
「そう……わざわざ有り難うね、稔ちゃん。あなたなら知ってるかも知れないと思ったものだから」
型どおりの返答だけが返ってきた。そこに弓弦を心配しているという感情は読めなかった。
有り体の感謝の言葉を聞きつつ、稔もいつもどおりの答えを返した。
「いいえ、どう致しまして」
こんな遣り取りはいつも弓弦がいなくなる度にやって来たことだった。代わり映えのしない会話も同じ、展開も変わらない。
それでも彼にはそれに抗うだけの気力もなく、また非情にもなれなかった。
「また迷い猫の家探しをしてるのかもしれないんで探してみますよ」
「有り難う、お願いするわね」
これもまた常套句だった。相手もそれを分かっていての対応だ。
そんなところも腹が立つ。やはり弓弦のことをまるで気遣っていないのが見え見えだったからだ。
……いつの頃からこんなおかしな関係になったのか。
少なくとも幼い頃は違った。いつも一緒に遊んでいたし、弓弦の不思議な話もよく聞いていたものだった。
もともと絵本が大好きであった稔は不思議なことも好きで、それが縁で弓弦一家が引っ越してきて交流がはじまったのだ。
人見知りをする子どもだった弓弦に積極的に話しかけたのは稔の方であり、その際に色々自分の読んできた絵本の話をしてみたことが仲良くなったきっかけでもある。弓弦としては恐らく子どもなりの判断で稔になら話してもいいと思ったのだろう。
弓弦の話す物語は稔が一度も絵本で読んだことのないものばかりであった。いつも猫が出てくるのが特徴的で、しかも言葉を話すのだと弓弦は語ったものである。
当然子どもの頃はそれを信じていたし、楽しかったのだ。偶に行方知れずになる幼馴染みは本当に猫に連れられて言ってしまったのではないかと思い、心配もした。 しかし本当は弓弦が持って帰ってくるだろう話を真っ先に聞きたかったのが本音だった。
猫が御馳走を用意してくれ、歌い踊る世界は想像するだけでも楽しい。
たまには他の動物でもいいじゃないかと尋ねたこともあるが、猫じゃなかったらそんなことはしてくれないよと弓弦は微笑った。
弓弦の話は子どもにはとても素晴らしく聞こえたし、稔もそんな話をする弓弦に憧れてすらいた。
そんな関係が崩れてしまったのは確か、小学校に入った頃である。
もともと時折ぼーっとしていることの多かった弓弦が車道で急に立ち止まり、そのまま信号が赤になっても動かなかったことがあった。そこは往来の激しい通りであり、そんな真似は幾ら幼くても危ないと分かる行動だった。
稔が大慌てで弓弦を呼ぶが、聞こえないのか弓弦はまったく動かない。どうしたらいいか分からないまま稔は幼馴染みを見遣った。するとそこだけ世界が違ったのだ、弓弦の周りにいないはずのものが稔には見えた。弓弦の話どおりの猫の耳をしたものが彼の傍で立っていた。
お出でお出でと呼んでいるようにしか見えず、また弓弦もそれに抗う気はないのか差し出された手に自分の手を乗せようとしていた。
稔は瞬間、駄目だと思った。あのままでは弓弦が連れて行かれてしまう!
だから我が身を省みず走り出し、必死に弓弦の名を呼んだ。
一瞬、弓弦が自分の方を向いたのが分かった。その顔は稔がよく知っているはずの少年であるはずなのにまるで違うもののように見えた。
恐い!
それが正直な稔の気持ちだった。
その後、直ぐ弓弦はクラクションを派手に鳴らす車にはねられ、稔の目前で宙を舞ったのである。
ああいうとき、現実感というものは本当に遠い。
弓弦が空を飛んで言ってしまうと錯覚すらするくらいに遠くへ飛ばされて行った。
ハッと気が付き、稔は急いで弓弦の元へと駆けつけ、再び幼馴染みの名前を呼び続けた。
絶対に死んで欲しくなかった。稔にとっての最高の友達だったからこそ!
記憶としてはあまりその後はっきりしない。親に聞いたところによれば看病すると言って聞かなかったらしい。
すべてが終わった後、稔は考えて考え抜いたのだ。弓弦を現実に戻してやらなければならない、それが出来るのは自分だけなんだと理解したからだ。だからその日から稔は弓弦の話を頭から否定し、聞かないようにした。そうすることで弓弦がきっと目を覚ましてくれると思ったのだ。
しかし本当にそれが正しかったのかどうか分からない。現時点で稔の努力はまったくもって報われていないからだ。稔が話を聞かなくなったことにより残念ながら弓弦は段々と排他的になり、人付き合いも避けるようになった。誰も聞いてくれないことに絶望していたのかも知れない。
けれど稔はそんな弓弦の態度に余計にムキになってよくないと言い続けてきた。お前は正しくないと繰り返し繰り返し。
相手がそれを望んでいないと分かった時は絶望したが、それでも自分がやってやらなければならないと決めたのだ。
それでも変わらない相手に稔としても心は折れかけていた。
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