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第14話 同友分裂!! 先急がば道見失いし!
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日程の遅れを取り戻そうとしゃかりきに突き進むまごめ。余裕のない旅が辛くなってきたゆきや。二人の気持ちがすれ違ったまま大分県竹田津港に降り立つのであった。
「よーし九州上陸、今日の目標は宮崎! そして明日は沖縄行きのフェリーに乗るよ!」
まごめはもはや猪突猛進、前に進むことしか考えていない。大分・宮崎の観光地をすっとばして一気に鹿児島まで向かうつもりだ。現在13日間で16都県と一見順調そうにも思えるが、まだ大ボスの沖縄と北海道が残っている。タイムリミットまで1ヶ月、余裕のない日程に差し掛かっていた。
「ねーまごめちゃんホントにどこにも寄らないの?」
千鳥は一人突進するまごめを案ずる。とにかく47都道府県を制覇したい部長のまごめと旅を楽しみたい部員との間に隔たりができていた。スタートからずっと四六時中行動を共にし自分のペースには思うようにいかない。相手の些細なことでも目につきイライラするようになってしまっていた。特に猛暑と雨どちらにも弱いバイクで移動しているとより一層フラストレーションが溜まりやすい。
「もう寄り道してる暇はないよ。だいたいあんたたちのせいで遅れてるんだからね!」
自身の心にも余裕がなくなりつい攻撃的な口調になってしまう。すっかり険悪な雰囲気になりインカムでの会話もほとんどなくなっていた。この調子で旅を続けられるのかという不安がよぎる。だがカノンは一人冷静であり、千鳥の実家の沖縄まで行けば心にゆとりを取り戻すであろう。もう少しの辛抱やとこの状況を見つめていた。
「わあーここが別府かーすごい独特な街並みだねー、…………」
ゆきやは通りかかった別府の街を羨ましそうに眺めていた。左手には光り輝く別府湾、右手には鶴見岳をはじめとした山々がそびえており欧米のリゾート地を彷彿とさせる。そしてなんといっても西日本屈指の温泉地であり、多くの車が家族を乗せて温泉街へ向かっていった。是非とも入浴していきたかったところだが暗黙の了解で観光はスルー、そのまま別府市を通過していく一行であった。
「ねえちょっとあそこのコンビニ寄っていい?」
大分市に入ったところでゆきやはトイレ休憩を申し出る。用が近かったというのもあるが猛暑のなかの走行で熱気が体を蝕み冷房を求めていた。しかたなしといったところでコンビニに立ち寄ったがまごめはご立腹。今日はフェリーで十分休んだではないか、それに今朝の出発が遅れたのもゆきやのせいでまたもや足踏みさせるのかと。ゆきやは申し訳そうな顔をしてうつむく。千鳥とカノンは2人の間に割って入りまごめをなだめゆきやを慰めるが双方の間には決定的な深い溝ができてしまった。
(まったくこれだから温室育ちのはお嬢様は……)
コンビニでサッと休憩を済ませ再び真夏の九州を南下する。結局大分県では先ほどのコンビニに寄っただけで終わり。17県目の宮崎県に突入した。日向市にて今夜の宿泊地を決めるためミーティングしていたがここでも2人の間で意見が割れる。宿泊料金が抑えられ天気も良いためキャンプ場に泊まろうとするまごめ。四国の小屋含め3夜連続で寝袋、そろそろベッドにありつきたいゆきや。千鳥とカノンも本音はホテルに泊まりたいがお盆の真っ只中で宿が高騰しテント泊もやむなしという心情であった。するとキャンプに気が進まないゆきやに対しまごめが一喝する。
「そんなにホテルがいいなら一人で泊まってくればいいでしょ!」
辛辣な発言に一同は凍り付く。今のは言い過ぎだよとまごめを咎める千鳥。沖縄まであと少し堪忍なと背中をポンと押すカノン。しかしゆきやは暗い表情で肩を落としたままだ。こうしてギスギスした空気のままキャンプ場に向かい言葉少なくテントを張る。陽が沈みかける夕刻、近くの海水浴場のシャワーに向かおうとしたとき、ゆきやは電話があるから先に向かっててよいと3人に言う。待ってようとする千鳥であったが長くなりそうなので置いていこうとするまごめ。カノンは一人になりたいのかなと察しゆきやを残し3人でシャワーに向かっていった。
「旅に喧嘩はつきものだけどなー、さっきのは言い過ぎやで部長さん。身も心もさっぱりして仲良くいこーや。」
カノンは独りよがりになっているまごめを諭す。こういうとき幾多の修羅場を潜り抜けてきたであろう経験豊富な姉貴は頼りになる。さすがに言葉が過ぎたと反省し後で謝ろうと心に決めたまごめ。シャワーで一日の汗とモヤモヤした気分を洗い流す。しかし浴び終わってもゆきやはやって来なかった。電話をかけても応対がないのでテントに戻る3人、だがそこには彼女の姿はなく一枚のメモが残されていた。
「これ以上私がいたらみんなの迷惑になるから……東京に帰るね。途中までだけどみんなと一緒に旅できて楽しかったよ。帰ってきたら旅のお話聞かせてほしいな……今回は突然リタイアして本当にゴメンね……」
「よーし九州上陸、今日の目標は宮崎! そして明日は沖縄行きのフェリーに乗るよ!」
まごめはもはや猪突猛進、前に進むことしか考えていない。大分・宮崎の観光地をすっとばして一気に鹿児島まで向かうつもりだ。現在13日間で16都県と一見順調そうにも思えるが、まだ大ボスの沖縄と北海道が残っている。タイムリミットまで1ヶ月、余裕のない日程に差し掛かっていた。
「ねーまごめちゃんホントにどこにも寄らないの?」
千鳥は一人突進するまごめを案ずる。とにかく47都道府県を制覇したい部長のまごめと旅を楽しみたい部員との間に隔たりができていた。スタートからずっと四六時中行動を共にし自分のペースには思うようにいかない。相手の些細なことでも目につきイライラするようになってしまっていた。特に猛暑と雨どちらにも弱いバイクで移動しているとより一層フラストレーションが溜まりやすい。
「もう寄り道してる暇はないよ。だいたいあんたたちのせいで遅れてるんだからね!」
自身の心にも余裕がなくなりつい攻撃的な口調になってしまう。すっかり険悪な雰囲気になりインカムでの会話もほとんどなくなっていた。この調子で旅を続けられるのかという不安がよぎる。だがカノンは一人冷静であり、千鳥の実家の沖縄まで行けば心にゆとりを取り戻すであろう。もう少しの辛抱やとこの状況を見つめていた。
「わあーここが別府かーすごい独特な街並みだねー、…………」
ゆきやは通りかかった別府の街を羨ましそうに眺めていた。左手には光り輝く別府湾、右手には鶴見岳をはじめとした山々がそびえており欧米のリゾート地を彷彿とさせる。そしてなんといっても西日本屈指の温泉地であり、多くの車が家族を乗せて温泉街へ向かっていった。是非とも入浴していきたかったところだが暗黙の了解で観光はスルー、そのまま別府市を通過していく一行であった。
「ねえちょっとあそこのコンビニ寄っていい?」
大分市に入ったところでゆきやはトイレ休憩を申し出る。用が近かったというのもあるが猛暑のなかの走行で熱気が体を蝕み冷房を求めていた。しかたなしといったところでコンビニに立ち寄ったがまごめはご立腹。今日はフェリーで十分休んだではないか、それに今朝の出発が遅れたのもゆきやのせいでまたもや足踏みさせるのかと。ゆきやは申し訳そうな顔をしてうつむく。千鳥とカノンは2人の間に割って入りまごめをなだめゆきやを慰めるが双方の間には決定的な深い溝ができてしまった。
(まったくこれだから温室育ちのはお嬢様は……)
コンビニでサッと休憩を済ませ再び真夏の九州を南下する。結局大分県では先ほどのコンビニに寄っただけで終わり。17県目の宮崎県に突入した。日向市にて今夜の宿泊地を決めるためミーティングしていたがここでも2人の間で意見が割れる。宿泊料金が抑えられ天気も良いためキャンプ場に泊まろうとするまごめ。四国の小屋含め3夜連続で寝袋、そろそろベッドにありつきたいゆきや。千鳥とカノンも本音はホテルに泊まりたいがお盆の真っ只中で宿が高騰しテント泊もやむなしという心情であった。するとキャンプに気が進まないゆきやに対しまごめが一喝する。
「そんなにホテルがいいなら一人で泊まってくればいいでしょ!」
辛辣な発言に一同は凍り付く。今のは言い過ぎだよとまごめを咎める千鳥。沖縄まであと少し堪忍なと背中をポンと押すカノン。しかしゆきやは暗い表情で肩を落としたままだ。こうしてギスギスした空気のままキャンプ場に向かい言葉少なくテントを張る。陽が沈みかける夕刻、近くの海水浴場のシャワーに向かおうとしたとき、ゆきやは電話があるから先に向かっててよいと3人に言う。待ってようとする千鳥であったが長くなりそうなので置いていこうとするまごめ。カノンは一人になりたいのかなと察しゆきやを残し3人でシャワーに向かっていった。
「旅に喧嘩はつきものだけどなー、さっきのは言い過ぎやで部長さん。身も心もさっぱりして仲良くいこーや。」
カノンは独りよがりになっているまごめを諭す。こういうとき幾多の修羅場を潜り抜けてきたであろう経験豊富な姉貴は頼りになる。さすがに言葉が過ぎたと反省し後で謝ろうと心に決めたまごめ。シャワーで一日の汗とモヤモヤした気分を洗い流す。しかし浴び終わってもゆきやはやって来なかった。電話をかけても応対がないのでテントに戻る3人、だがそこには彼女の姿はなく一枚のメモが残されていた。
「これ以上私がいたらみんなの迷惑になるから……東京に帰るね。途中までだけどみんなと一緒に旅できて楽しかったよ。帰ってきたら旅のお話聞かせてほしいな……今回は突然リタイアして本当にゴメンね……」
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