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第10話 風雲急行!? 行く手を阻む土佐!
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四国は徳島・香川を難なくクリア、残りの2県もこの調子でいきたいとこだが……
琴平町から高知県に向け進路は南へ。全国で最も狭い香川県は短くもコシが効いた土地であった。程なくして再び徳島県は三好市池田、県を代表する河川・吉野川に沿いながら本格的な山間部へ突入していく。香川とはうって変わって左右どちらにも深い山々がそびえ立っており、山国四国の本領を発揮してきたというところか。平野だらけの関東とは正反対の移り行く景色に風情を感じながら、まったりと流れる国道32号線を進んでいく。
「なんだろう……だいほき? いやローマ字だとOBOKE……オオボケって読むんだー!」
通りかかったのは珍地名の“大歩危”。アスファルトの道路がなければ歩くのもままならないような断崖の渓谷が続いている。数億年の時を経て吉野川の激流によって浸食されたその姿は、見事なV字谷の景観を誇っている。日本トップクラスに流れが速い川はラフティングの名所であり、数多くのゴムボートが水しぶきを浴びながら下っていた。ひとときの清涼感のある風景に暑さに苦しんだ心身を休める。
「よっしゃー3県目! やっぱ四国って小さいなー。」
大歩危から数km走るともう高知県。一行は順調に進んでいると思い込んでいたが、四国の本当の恐ろしさには気づいていなかった。二日酔いで出発が遅れ琴平観光もした影響ですでに夕方、今晩の宿泊地を高知市に決める。峠を下りそのまま一気に海を目指す。南国市に差し掛かったところでまごめは奇妙な光景を発見した。
「アレっ、なんだあの電車!? 一体何を謝っているんだろう……」
目に入ったのはひらがなで“ごめん”と行先表示された路面電車。一見すると何のことやらチンプンカンプンである。よく非営業のバスがすみません回送中ですと表示していることはあるが、この路面電車には乗客が乗っており回送中ではないようだ。疑問に思う一同であったがまもなくその答えが見つかった。道路案内に書かれていたのは“御免駅”。そうゴメンとはれっきとした地名。あえてひらがなで表すユニークな行先は高知名物として観光客を惹きつけるのであった。
陽が傾き雲が紅に染まりつつある頃、高知市を代表する景勝地・桂浜に到着した。砂浜が弓なりに延びており背後には小高い松林がそびえ立つ。桂浜といえば坂本龍馬像が有名。総高13.5メートルの堂々たる大きな銅像は、移りゆく時代あれど今昔変わらず波打つ太平洋をじっと見つめている。4人はこの海の先に目指している沖縄があるという浪漫に浸っていた。
「えーまた街に泊まるのー、そろそろキャンプしていかないとマズいのに……」
昨夜高松市で飲み歩き散財してしまったこと、この先のことを考えると節約する必要があるのでまごめはキャンプ泊を望む。しかし一同はこの旅でテント泊いまだゼロ、なかなかその一歩が踏み出せないでいた。ただでさえ移動で疲れているのでベッドで眠りたいのは至極当然。結局明日からキャンプしようと先送りにし、繁華街に引き寄せられるように高知市中心部へ向かっていった。
「おお~路面電車が走る街ってやっぱ素敵だね~。」
やってきたのは高知市のメインストリートが交差する“はりまや”交差点。とさでんこと土佐電鉄の路線がクロスし東西南北に行き交っている。大都市圏ではバスや地下鉄の整備が進み今やほとんど見られない路面電車であるが地方都市ではまだまだ健在。特に西日本では数多く走っている。個性豊かな色とりどりの車両が次から次へとやってくる様子はその土地ならではの旅情を感じ取れた。
「これが噂のはりまや橋か! 記念に撮っとこ。」
交差点の近くの歩道横には朱色の欄干の小さな橋が架かっていた。長大な橋を想像している観光客からすれば拍子抜けするような短さで、日本三大がっかり名所というなんとも不名誉な評価をされている。しかしこの赤い橋は江戸時代のものを復元された橋で、本来のはりまや橋は車道に架かっている石造りものである。まあどちらにせよ街のど真ん中にあるためビルに埋もれて目立たないが、川沿いは落ち着いた憩いの公園となっている。橋だけではなく周囲を散策してみると面白い発見があるかもしれない。
その夜は名物の鰹のたたきを食す。ほどよく脂が乗りしっとりとした旨さ。ただ真夏の今は旬ではなく高知産でなかった可能性があるが……まあ細かいことは言わぬが花であろう、旨ければよし!
「うわっ! なんだこの雨は。これじゃあ外出れないよー……」
翌朝部屋のカーテンを開けてみるとバケツをひっくり返したような凄まじい豪雨が降り注いでいた。この激しさではいかなる雨具も通用しない。日程の遅れを取り戻したいところであったがさすがにバイクでは厳しすぎる。天気予報を見ていると夕方まで空模様は絶望的で泣く泣く高知市に連泊していくことになった。まごめは落胆していたが、他の3人はこの旅はじめての休息日でゆっくりできると内心安堵している。高知は日本一の降水量、そう簡単には進めるものかといわんばかりに足止めをくらった。目指す沖縄は遥か彼方、夏はまだまだ終わらない!
琴平町から高知県に向け進路は南へ。全国で最も狭い香川県は短くもコシが効いた土地であった。程なくして再び徳島県は三好市池田、県を代表する河川・吉野川に沿いながら本格的な山間部へ突入していく。香川とはうって変わって左右どちらにも深い山々がそびえ立っており、山国四国の本領を発揮してきたというところか。平野だらけの関東とは正反対の移り行く景色に風情を感じながら、まったりと流れる国道32号線を進んでいく。
「なんだろう……だいほき? いやローマ字だとOBOKE……オオボケって読むんだー!」
通りかかったのは珍地名の“大歩危”。アスファルトの道路がなければ歩くのもままならないような断崖の渓谷が続いている。数億年の時を経て吉野川の激流によって浸食されたその姿は、見事なV字谷の景観を誇っている。日本トップクラスに流れが速い川はラフティングの名所であり、数多くのゴムボートが水しぶきを浴びながら下っていた。ひとときの清涼感のある風景に暑さに苦しんだ心身を休める。
「よっしゃー3県目! やっぱ四国って小さいなー。」
大歩危から数km走るともう高知県。一行は順調に進んでいると思い込んでいたが、四国の本当の恐ろしさには気づいていなかった。二日酔いで出発が遅れ琴平観光もした影響ですでに夕方、今晩の宿泊地を高知市に決める。峠を下りそのまま一気に海を目指す。南国市に差し掛かったところでまごめは奇妙な光景を発見した。
「アレっ、なんだあの電車!? 一体何を謝っているんだろう……」
目に入ったのはひらがなで“ごめん”と行先表示された路面電車。一見すると何のことやらチンプンカンプンである。よく非営業のバスがすみません回送中ですと表示していることはあるが、この路面電車には乗客が乗っており回送中ではないようだ。疑問に思う一同であったがまもなくその答えが見つかった。道路案内に書かれていたのは“御免駅”。そうゴメンとはれっきとした地名。あえてひらがなで表すユニークな行先は高知名物として観光客を惹きつけるのであった。
陽が傾き雲が紅に染まりつつある頃、高知市を代表する景勝地・桂浜に到着した。砂浜が弓なりに延びており背後には小高い松林がそびえ立つ。桂浜といえば坂本龍馬像が有名。総高13.5メートルの堂々たる大きな銅像は、移りゆく時代あれど今昔変わらず波打つ太平洋をじっと見つめている。4人はこの海の先に目指している沖縄があるという浪漫に浸っていた。
「えーまた街に泊まるのー、そろそろキャンプしていかないとマズいのに……」
昨夜高松市で飲み歩き散財してしまったこと、この先のことを考えると節約する必要があるのでまごめはキャンプ泊を望む。しかし一同はこの旅でテント泊いまだゼロ、なかなかその一歩が踏み出せないでいた。ただでさえ移動で疲れているのでベッドで眠りたいのは至極当然。結局明日からキャンプしようと先送りにし、繁華街に引き寄せられるように高知市中心部へ向かっていった。
「おお~路面電車が走る街ってやっぱ素敵だね~。」
やってきたのは高知市のメインストリートが交差する“はりまや”交差点。とさでんこと土佐電鉄の路線がクロスし東西南北に行き交っている。大都市圏ではバスや地下鉄の整備が進み今やほとんど見られない路面電車であるが地方都市ではまだまだ健在。特に西日本では数多く走っている。個性豊かな色とりどりの車両が次から次へとやってくる様子はその土地ならではの旅情を感じ取れた。
「これが噂のはりまや橋か! 記念に撮っとこ。」
交差点の近くの歩道横には朱色の欄干の小さな橋が架かっていた。長大な橋を想像している観光客からすれば拍子抜けするような短さで、日本三大がっかり名所というなんとも不名誉な評価をされている。しかしこの赤い橋は江戸時代のものを復元された橋で、本来のはりまや橋は車道に架かっている石造りものである。まあどちらにせよ街のど真ん中にあるためビルに埋もれて目立たないが、川沿いは落ち着いた憩いの公園となっている。橋だけではなく周囲を散策してみると面白い発見があるかもしれない。
その夜は名物の鰹のたたきを食す。ほどよく脂が乗りしっとりとした旨さ。ただ真夏の今は旬ではなく高知産でなかった可能性があるが……まあ細かいことは言わぬが花であろう、旨ければよし!
「うわっ! なんだこの雨は。これじゃあ外出れないよー……」
翌朝部屋のカーテンを開けてみるとバケツをひっくり返したような凄まじい豪雨が降り注いでいた。この激しさではいかなる雨具も通用しない。日程の遅れを取り戻したいところであったがさすがにバイクでは厳しすぎる。天気予報を見ていると夕方まで空模様は絶望的で泣く泣く高知市に連泊していくことになった。まごめは落胆していたが、他の3人はこの旅はじめての休息日でゆっくりできると内心安堵している。高知は日本一の降水量、そう簡単には進めるものかといわんばかりに足止めをくらった。目指す沖縄は遥か彼方、夏はまだまだ終わらない!
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