23 / 46
夏目 晴斗6話その2 面接 - 俺ってすごいんじゃん?
しおりを挟む
晴斗が部屋に入ると、そこには6畳ほどの空間が広がっていた。先ほどの部屋と同様に、整理整頓が十分ではない様子で、書類や機材が無造作に置かれている。デスクは晴斗に向かって配置され、その後ろにはFSSの代表と思われる人物が座っていた。
「おっ、来たな!君が夏目晴斗君か!」
その声は、明るくも力強い響きがあり、晴斗を迎える雰囲気には温かさが感じられた。
「姫凪乃から話は聞いているよ!」
と付け加えたその言葉には、少しの親しみと信頼感がにじみ出ている。
晴斗が向かい合ったのは、黒髪を短く刈り上げ、口元には薄く髭を蓄えた男だった。粗野な印象を与えつつも、その目には落ち着いた知性が感じられ、恐らく40代半ばであろうと晴斗は推測した。
しかし、その男は広い肩幅と厚い胸板を持ち、年齢を感じさせない体躯からは、今なお現役であることを示していた。彼の身体は、長年の過酷な環境で鍛え抜かれてきたに違いなく、軍用ベストを身にまとったその姿は、頼れるリーダーの風格を漂わせていた。
「どうも、よろしくお願いします」
晴斗は軽く頭を下げて挨拶をしたが、緊張しているのは隠し切れなかったようだ。
「はは、そんなに緊張しないでいいよ!」
晴斗の緊張をほぐすためか、男は笑いながら言った。
「いやー、ごめんね、汚いところで驚いたかな?ささ、座って座って」
と彼は晴斗を椅子に促し、その言葉に自虐を交えた笑顔を見せた。
晴斗は指示された椅子に腰を下ろし、改めてこの場の重要性を感じながら深呼吸した。
「じゃあ、早速いろいろ話を進めようか」
男は本題に入る前に自らを紹介する。
「俺は真取 快和(まとり かいと)、このFSSの代表取締役をやっている。もっとも、ここでふんぞり返っているだけじゃなく、必要に応じて現場にも出ることがあるんだ」
「姫凪乃から聞いてるかもしれないが、もともとはSAUに所属していて、まあ……いろいろあって今はFSSを立ち上げてここまで来たんだ」
晴斗は頷きながら話を聞いていたが、今のところ姫凪乃から聞いていた情報と一致しており、新しい情報は特にないように思えた。
「晴斗君は警備員をやっているそうだな?」
「え?ええ、そうです……」
「姫凪乃から、君はお金に惹かれたって聞いたんだが……?」
晴斗は、真取の言葉に一瞬焦りを感じた。確かに金銭的な動機が大きいのは事実だが、こういった場でそれを強調するのは不利かもしれないと感じ、何か別の理由を探そうとしたが、すぐには浮かばなかった。
「あ、いや、えっと……」
「いいのいいの、むしろ分かりやすい。そんな動機で頑張ってくれるなら、こちらとしてもありがたいからね!」
真取はにこやかに笑いながら言った。
「あぁ、はい、すみません……」
晴斗の気持ちを察したのか、真取はすぐに話題を切り替えた。その表情が徐々に真剣さを帯び、本題に入る準備が整ったことを示していた。
「それで……君の目覚めた力、アビリティについて詳しく聞かせてもらえないか?」
「えっと……まだ自分でも詳しくは分かっていないんですが、自分が知っている場所でその場所を細かくイメージできると、そこに時空の穴、トンネルのような出入口を作って直接移動できるんです」
真取はその説明を聞きながら、静かに頷いていた。
「ふむ、他に分かっている発動条件は?」
「場所が細かくイメージできなくても、写真を見れば行けました。ただ、これは職場内でやっただけなので、実際に全く行ったことのない場所で通じるかは分かりません。あと、距離に関しては、自宅と職場間で約10kmは移動できましたが、それ以上、例えば海外などの長距離移動が可能かどうかは分かりません」
真取の顔には次第に興味と興奮の色が浮かび、彼の目が輝き始めた。明らかにこのアビリティの可能性に心を躍らせているのが伝わってきた。
「おぉ!そのアビリティ、素晴らしいじゃないか!」
「そ、そうなんですか?」
「俺が知っている限り、移動に使えるアビリティはいくつかあるが、例えば足を強化して高速移動するとか、手を伸ばして移動するとか、風を操って空を飛ぶとかね。でも、君ほど応用が利いて、使い勝手の良い移動タイプのアビリティはなかなか見かけないよ!」
その言葉に、晴斗はどう返していいか分からず、ただ照れ笑いを浮かべるしかなかった。これまであまり褒められることに慣れていない彼にとって、真取の熱意は少しばかり圧倒的であり、同時に自分が持つ力の可能性を再認識させる瞬間でもあった。
「おっ、来たな!君が夏目晴斗君か!」
その声は、明るくも力強い響きがあり、晴斗を迎える雰囲気には温かさが感じられた。
「姫凪乃から話は聞いているよ!」
と付け加えたその言葉には、少しの親しみと信頼感がにじみ出ている。
晴斗が向かい合ったのは、黒髪を短く刈り上げ、口元には薄く髭を蓄えた男だった。粗野な印象を与えつつも、その目には落ち着いた知性が感じられ、恐らく40代半ばであろうと晴斗は推測した。
しかし、その男は広い肩幅と厚い胸板を持ち、年齢を感じさせない体躯からは、今なお現役であることを示していた。彼の身体は、長年の過酷な環境で鍛え抜かれてきたに違いなく、軍用ベストを身にまとったその姿は、頼れるリーダーの風格を漂わせていた。
「どうも、よろしくお願いします」
晴斗は軽く頭を下げて挨拶をしたが、緊張しているのは隠し切れなかったようだ。
「はは、そんなに緊張しないでいいよ!」
晴斗の緊張をほぐすためか、男は笑いながら言った。
「いやー、ごめんね、汚いところで驚いたかな?ささ、座って座って」
と彼は晴斗を椅子に促し、その言葉に自虐を交えた笑顔を見せた。
晴斗は指示された椅子に腰を下ろし、改めてこの場の重要性を感じながら深呼吸した。
「じゃあ、早速いろいろ話を進めようか」
男は本題に入る前に自らを紹介する。
「俺は真取 快和(まとり かいと)、このFSSの代表取締役をやっている。もっとも、ここでふんぞり返っているだけじゃなく、必要に応じて現場にも出ることがあるんだ」
「姫凪乃から聞いてるかもしれないが、もともとはSAUに所属していて、まあ……いろいろあって今はFSSを立ち上げてここまで来たんだ」
晴斗は頷きながら話を聞いていたが、今のところ姫凪乃から聞いていた情報と一致しており、新しい情報は特にないように思えた。
「晴斗君は警備員をやっているそうだな?」
「え?ええ、そうです……」
「姫凪乃から、君はお金に惹かれたって聞いたんだが……?」
晴斗は、真取の言葉に一瞬焦りを感じた。確かに金銭的な動機が大きいのは事実だが、こういった場でそれを強調するのは不利かもしれないと感じ、何か別の理由を探そうとしたが、すぐには浮かばなかった。
「あ、いや、えっと……」
「いいのいいの、むしろ分かりやすい。そんな動機で頑張ってくれるなら、こちらとしてもありがたいからね!」
真取はにこやかに笑いながら言った。
「あぁ、はい、すみません……」
晴斗の気持ちを察したのか、真取はすぐに話題を切り替えた。その表情が徐々に真剣さを帯び、本題に入る準備が整ったことを示していた。
「それで……君の目覚めた力、アビリティについて詳しく聞かせてもらえないか?」
「えっと……まだ自分でも詳しくは分かっていないんですが、自分が知っている場所でその場所を細かくイメージできると、そこに時空の穴、トンネルのような出入口を作って直接移動できるんです」
真取はその説明を聞きながら、静かに頷いていた。
「ふむ、他に分かっている発動条件は?」
「場所が細かくイメージできなくても、写真を見れば行けました。ただ、これは職場内でやっただけなので、実際に全く行ったことのない場所で通じるかは分かりません。あと、距離に関しては、自宅と職場間で約10kmは移動できましたが、それ以上、例えば海外などの長距離移動が可能かどうかは分かりません」
真取の顔には次第に興味と興奮の色が浮かび、彼の目が輝き始めた。明らかにこのアビリティの可能性に心を躍らせているのが伝わってきた。
「おぉ!そのアビリティ、素晴らしいじゃないか!」
「そ、そうなんですか?」
「俺が知っている限り、移動に使えるアビリティはいくつかあるが、例えば足を強化して高速移動するとか、手を伸ばして移動するとか、風を操って空を飛ぶとかね。でも、君ほど応用が利いて、使い勝手の良い移動タイプのアビリティはなかなか見かけないよ!」
その言葉に、晴斗はどう返していいか分からず、ただ照れ笑いを浮かべるしかなかった。これまであまり褒められることに慣れていない彼にとって、真取の熱意は少しばかり圧倒的であり、同時に自分が持つ力の可能性を再認識させる瞬間でもあった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる