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夏休みは、短いフェイズ1と長いフェイズ2に分かれている。
フェイズ1という名の七月は、まるで天国のようだ。だって七月が終わってもまだ八月があるのだから、心の余裕がすごい。どんな自由なことをして遊んでも、いたずらに時間を浪費しても「まだ八月があるしー」という余裕がある。
それはまるで、後に日曜日と祝日を控えた、三連休初日の土曜日のようである。それのさらに凄いバージョンだと思ってくれていい。
しかし、七月から八月に切り替わる瞬間、ほんの少しずつ現実が心の隙間に侵入してくるようになる。カレンダーを見る度、休みが一日ずつ削られていく感覚。
「宿題、やってないなぁ……」
八月一日、焼き付くような日差しの下を歩く私は呟いた。向かう先は学校。今日も屋上で昼寝でもしようと思い立った次第である。
学校に着いて昇降口で靴を履き替え、夏の校舎に侵入する。空気は嫌になるほど蒸し暑いのに、誰もいない廊下は涼しげだった。校舎内に吹奏楽部の練習の音が響いている。私にでも分かる下手くそな演奏と、そこそこ上手い演奏が混じっている。
ふと窓の外を見ると、運動場で熱心にボールを追いかけているサッカー部たちが見えた。タオルを首に掛けて彼らを応援している女子マネージャーもいた。見知った顔だ。
「お前さ。ウザいよ」
幻聴が頭に響く。嫌な気分だ。私は足早に歩いた。
屋上に繋がる扉の前に、一人の女の子が立っていた。女の子は、扉を施錠しているダイヤルロック式の南京錠をジッと見下ろしていた。
私の足音に反応して、女の子はこちらに振り返る。見知った顔だった。驚く。
「あ」
向こうも私に気付いたようだった。一週間くらい前、土砂降りの雨の日、ブランコに座って歌っていた女の子だった。
女の子は顔をしかめる。「面倒な奴に会ってしまった」と目が言っている。
「屋上に入りたいの?」
私が言うと、女の子は目を丸くした。
女の子が着ている制服のリボンの色から、その子が一年生であると判断した。彼女は、ここの鍵の解錠ナンバーを知らないのだろう。
「教えてあげようか」
私が言うと、女の子は気まずそうに視線を逸らした。
私は彼女の側を通り過ぎて、ダイヤルを回してナンバーを合わせる。鍵が外れた。
「はい」
扉を開けると、青空の気配と共に涼やかな風が吹き込んでくる。蒸し暑い空気が背後に流されて行った。
私は屋上に足を踏み入れる。相変わらずきったない屋上だ。でも、悪くない。
振り返り、女の子をチラリと確認すると、視線を逸らされた。
「思ってた屋上と違った?」
返事はない。
私は屋上の汚れた場所を避けるように進んで、梯子に足をかけ、塔屋の上に登る。いつものように日陰にビニールシートを広げ、リュックサックを枕にして寝転んだ。
ふと視線を下げると、入り口の辺りでうろうろしている女の子が見えた。
「おいでよ」
少し声を張ってそう呼びかけると、女の子は迷う素振りを見せながらも、恐る恐るここまでのぼって来た。
「あの……」女の子が、緊張した面持ちで小さく、本当に小さく頭を下げた。「この前は、ごめんなさい」
予想外の台詞だった。
「あの時、わたし、色々と、嫌なことがあって、だから、その、あなたがウザかったのは本当なんですけど……、だから、死ねって言って、ごめんなさい」
「ウザい」と言ったことに関しては謝ってくれないらしい。どちらかと言うと私はそっちの方に傷ついたのだが、こうして謝ってくれただけでも嬉しいことだ。
「よし、許す」
偉ぶって言うと、女の子は変な顔をした。
女の子に名前を聞くと、「ふう、って呼んでください」と言われた。
「みんなそう呼ぶので」
「ふうちゃん」
試しに呼んでみた。ふうはまた変な顔をした。「ふうでいいです」
「先輩は、よくここに来るんですか?」
「たまによく来る」
ふうとシートの上に並んで座って語り合う。
「ねえ、あの日、なんでふうは一人で濡れてたの?」
気になっていたことを聞くと、ふうは眉をひそめてなにか言いかけたが、言葉を呑み込む。そしてまた口を開いた。
「カレシを取られたんです」
「それはまた」
ふうに睨まれる。なぜ。
ふうはため息を吐いて、運動部のかけ声が響く運動場を見下ろしながら言う。「わたし、可愛いじゃないですか」
「おおう」
私も私だが、この子も中々だと思った。だが、実際、本当に可愛いのだからなにも言えない。
こうして近くで見つめると、大変顔立ちが整っていると分かる。美人と言うより、可愛い方に整った顔かたち。
「わたし可愛くて、家も裕福で、性格もそこそこ良くて、運動も勉強も得意で、割と昔からなんでもできたんです。友達もたくさんいましたし、カッコいい男の子もたくさん寄ってきました」
こういう子、私は別に嫌いじゃないが、大勢の女子には嫌われそうな子だなと思った。
「性格悪そう」
私が口に出すと、睨まれる。
「猫を被るのには、自信があります」
清々しい子だ。
「だから、わたしの今までの人生って、順調だったんですよ。なに一つ文句が無いくらい、完璧でした」
「夢を全て叶えてきたって訳だ」
そう言うと、ふうは不思議そうな顔をしたが、「まぁ、そういうことかもしれません」と、気を取り直すように言う。
「だから、この前、カレシが別の女と二人で手を繋いで歩いてるのを見かけて、ショックでした。自分でもびっくりするくらい。たぶんわたしにとって、初めて、文句を言いたくなる出来事だったから」
「人はそういうネガティブな経験を得て成長していくんだよ」ふうに睨まれる。殴られるかと思った。「ってこの前読んだ本に書いてあった」
「でも、わたしにそれを見られた時のカレシは面白かったですよ。すっごくうろたえて、違うんだって何度も言ってました。その場でフッてやりましたけど」
ふうはせせら笑う。でも私にはそれが強がりに見えたし、実際そうなのだろう。
「その三日後くらいに、わたしの元恋人は、その時手を繋いでた女と付き合い始めたらしいです」
「目まぐるしいね」
「本気で殺してやろうかと思いましたよ」
「ちなみにそのカレシって、同級生?」
「いえ、三年生の先輩です」
ふうからその人物の名前を聞いて、私は驚く。私でも知っている人だったからだ。確かサッカー部のエース。校内一のイケメンとの噂。安っぽい女子たちの憧れ。以前のバレンタインデーには、下駄箱をチョコで溢れさせたらしい。ホントか?
なんとなく、なんとなくだけど、嫌な予感がした。
「ちなみにだけど、その女の方の名前、分かる?」
「サッカー部のマネージャーですよ。名前は確か……」
知ってる名前だった。私のクラスメイトだ。
「お前ウザいよ」
幻聴が頭に響く。面白い偶然だと思った。
私とふうは、既に奇妙な縁で繋がっていたらしい。どこぞの小説か。ふと、自称天才小説家の楽しげな笑みが頭に浮かぶ。少しだけ心が安らいだ。
よもやこれが回復魔法か? 笑顔の癒し魔法。ならミカンさんはヒーラーだ。
我ながら、しょうもないことを考えている。
「魔法のように都合のいい奇跡を、いつだって望んでる」
私がそう呟くと、ふうが「は?」と首を傾げて私を見た。
「そういう魔法が、あったらいいね」
ふうは変な顔をした。ふうは小さく呟く。「先輩は、変な人ですね」
その日から、私とふうは二日に一回くらいの間隔で、屋上で共に過ごした。日光を遮るパラソルや、アウトドアチェアをふうが屋上に持ち込んで、快適度が増している。
「日の光は乙女の天敵なので」
「可愛いを維持するのも大変なんだね」
「そうなんです」
パラソルが作る日陰の下に寝転んで私は微睡み、ふうはアウトドアチェアに腰掛けて本を読む。時折、何気ない会話をする。そういう時間が続いた。
ふうとは、色んな話をする。一昨日、私が学校でいじめられているという話をしたら、「まぁ先輩ってウザいですもんね」と言われた。
私は今日もふうに話しかける。
「友達と遊ばなくていいの?」
「お誘いは沢山ありますけど、なんかもうどうでもよくなっちゃいました」
「人生がどうでもよくなった的な?」
「そんな感じかもしれません」
「たった一つの失敗で、若造が偉そうに」
「先輩も一年くらいしか変わらないじゃないですか」
ふうが呆れたように言う。
「たぶん、わたしの幸せはトランプタワーだったんです」
ふうは本をパタンと閉じて私を見る。
「私の完璧な人生の、なに一つ不満のない完璧な幸せは、トランプタワーみたいに奇跡的なバランスの上に成り立ってたんです。だからその内の一つでも崩れると、全部崩れて、元から持っていた幸せにも魅力を感じなくなって、終わっちゃうんです。どうでもよくなっちゃうんです。もう色々しんどいです。疲れました」
「ねえふう」
「なんですか?」
「中二病って、知ってる?」
「知ってますけど、それがどうしたんですか?」
「いやなんでもない。ふうって可愛いよね」
「自覚してます。先輩はウザいですよね」
本当に、可愛い後輩だ。
ある日の昼、ミカンさんの家に行くと、A4サイズのコピー用紙の束を渡された。二十枚くらいの束。
「読んでみて」「小説ですか?」「うん」「完結させたんですか?」「まぁいいからいいから」
言われるままに読んでみる。やはり一番いい所でぶつ切りになっていた。未完だこれ。話が面白いだけに、続きが気になる。
「だから完成してない話を読ませないでください」
「いやぁ、やっぱり最後まで書けなくてさ」
「なんでそれを読ませようとしてくるんですか」
「君には、読んで欲しかったんだよね」
居間に置かれたオーディオから流れているBGMが、知らない英語の曲から『夏色』に切り替わる。ミカンさんは「今日は暑いねー、夏だなぁ」と呟きながら、冷蔵庫からビールの缶を取り出す。
「どうしてクーラーをつけないんですか?」
ミカンさんの部屋は、とんでもなく蒸し暑かった。窓は開け放たれているが、今日は風が吹いていない。汗が皮膚の上を流れていく。
「だって、暑い中で飲むビールの方が美味しいじゃん」
ミカンさんは汗を滴らせながらビールを豪快に飲む。そして近所迷惑になりそうな声量で叫ぶ。
「くぅっ! この一杯の為に生きてるっ!」
うるさい。窓の外のセミが負けじと鳴き喚いた。うるさい。
「そんなに美味しいんですか?」
「いやそこまで? 味はまずい。安物だしね、これ。正確にはビールでもない」
以前にも似たような会話をした気がした。
「君も飲むかい?」
ミカンさんが飲みかけの缶を差し出してくる。
「未成年にアルコールを勧めないでください」
「でも興味はあるでしょ?」
「ないと言えばウソなります」
「君は正直だね」ミカンさんは楽しげに笑う。「でも、変な話だよね」
「何がですか?」
「未成年がアルコールを飲むのも、君を自転車の後ろに乗せて坂道を下るのも、両方やっちゃいけないことなのに、前者は悪いことで、後者は青春って感じがする」
「まぁ、そうですかね」
「若いって、自由だよね」
「若さを過大評価し過ぎでは」
「そんなことないと思うよ。ちょっとくらいの悪いことや、悪戯とか、殴り合いの喧嘩とかは、青春のスパイスになり得る。例えそれが、他の誰かに咎められるようなことであっても」
「いじめや浮気とかも、そうなんですかね?」
私がそう言うと、ミカンさんが途端に真面目な顔になって、
「いや、いじめや浮気はダメでしょ」
と言った。その辺りの違いが私にはよく分からなかった。
「青春っていいなぁ」
ミカンさんが、心底羨ましそうに私を見ていた。
「そういえば、ここの屋上って何年か前までは普通に解放されてたんですよね」
屋上の塔屋の上で、ふうが言った。私は「うん」と頷く。
「五年くらい前に、ここから飛び降り自殺した生徒がいて、それから閉鎖されるようになったんだって」
「へぇ」ふうが小説のページに目を落としたまま、そこまで興味なさげに言った。「でも、その人のお陰で、わたしたちがここを独占できてるなら、いいことですね」
本当に良い性格をしてる後輩だ。
「まぁ、こんな汚い所、他の人は居場所にしないよね」
「ですね。慣れると案外気にならないもんですけど」
「そうだね」
ふうが屋上に持ち込む便利グッズは日に日に増えている。今日は小さなクーラーボックスにコーラを入れて持ってきていた。パラソルとアウトドアチェアは、給水塔の物陰にいつも置いて帰っている。私も最近はビニールシートを隅に置いて帰っている。
「ここまで堂々としてると、先生にバレたら怒られそうだなぁ」
いくら黙認されているとは言え、形式上は立ち入り禁止なのだ。
「別にいいですよ、怒られても」
幸せのトランプタワーを積み上げることを投げ出したふうは自由で無敵だった。思えばこういうのが、ミカンさんの言っていた青春のスパイスになる悪いことなんだろうか。
「でも、その人、なんで自殺したんだろうね」
私が何気なく言うと、ふうが独り言のように、「衝動的に人を殺す人がいるんだから、衝動的に自分を殺す人もいるよ」と言った。
「え?」
「だって、そうじゃないですか。わたしだって、なにかのキッカケがあれば浮気したあのクソ野郎と調子に乗ったブス女を殺していたかもしれません。勢いで」
「こっわ……」
「わたしにとっては、それくらい許せないことだったんです。完璧なわたしの人生に、傷をつけたんですから」
本のページを繰りながら、ふうが淡々と言った。
「ふうちゃんこわい」
「だから、そんな感じで、勢いで自殺しちゃう人も、いると思うんです」
「なるほど……」
私は、自殺というものは、本当に人生のどん底に突き落とされた人が、最後の手段として実行してしまうものだと思っていたけど、案外そうじゃないのかもしれない。
例えば、ふうみたいに順風満帆な人生を送っていた人が、なにかの拍子に傷付いて、躓いて、ふっと勢いで飛び降りてしまったり、とか。
「ふうは死なないよね?」
「は? 死ぬ訳ないじゃないですか。先輩こそ、いじめに耐え切れなくてふらっと飛び降りちゃいそうで心配ですよ。先輩なに考えてるか分からないこと多いですし」
「心配してくれるの?」
私が言うと、ふうはハッと本から顔を上げて私を見た。そして、眉をひそめる。
「今のは無しです」
「可愛い奴め」
ふうの頭を撫でまわす。おーよしよし。
「先輩、ウザい。そんなんだからいじめられるんですよ。自覚あります?」
私の後輩は辛辣だ。
ある日の夜、夢の中で、以前に読んだミカンさんの小説を思い返した。
運動神経がよくて、勉強もできて、愛想があって、誰にでも優しくて、みんなに好かれる可愛い女の子の話。順風満帆で、文句のつけようのない人生を送っていたその女の子は、ある日、信頼していた恋人に裏切られる。
最近どこかで聞いた話だ、と私は思った。
そう、ちょうど屋上で可愛い後輩から聞いた話。
たった一つのその躓きから、彼女の人生は変わる。今まで上手く行っていた全てが上手く行かなくなって、どんどん人生の底に転がり落ちていく。そういうお話。
あれは一体どういう結末を迎えるんだったかと思い出そうとして、そう言えばミカンさんが書く話はどれも未完のままじゃないか、と別の自分がツッコミを入れる。
気付けば、私は屋上に立っていた。フェンスの向こうにある、幅一メートルくらいの縁に立っている。一歩でも前に踏み出せば、私は落ちて死ぬだろう。
「衝動的に人を殺す人がいるんだから、衝動的に自分を殺す人もいるよ」と誰かが言って、私は落ちた。そこで目を覚ました。
目を覚ますと、私はベッドから転がり落ちていた。微妙に腰が痛い。制服に着替えて、学校の屋上に行こうと家を出た所で、ミカンさんに出くわした。
ミカンさんは私の制服を見て、「相変わらず制服似合ってるね、懐かしいなぁ」と言った。
「今から出かけるんですか?」と私は尋ねる。
「ううん、帰って来たとこ。食料調達」ミカンさんがスーパーの袋を私に見せた。
「こんな朝早くからですか?」
「もうすぐ十一時だけど」
そう言われて日の高さを確認すると、確かに早朝のそれではなかった。夏休みの時間感覚は狂いやすい。
「ちょっとだけ、ミカンさんの家にお邪魔してもいいですか?」
「いいよー」
少し気になることがあったので、ミカンさんと一緒にミカンさん宅にお邪魔する。我が家から徒歩一秒未満の距離。
「ミカンさんが私に読ませてくれた小説って、どこかに固めてあります?」
「あ、そこにまとめて置いてるよ」
ミカンさんが指差したのは、玄関付近に放置されているお酒の空き缶でパンパンに膨れたビニール袋。
「え?」
「ほら、そこ」
紐で縛られたA4サイズのコピー用紙の分厚い束が、ビニール袋の上に置いてあった。ゴミかと思ったが、違うらしい。手に取って見ると、以前見たことのあるミカンさんの小説だった。
全て未完の。
「アルミ缶の上にある未完、ってね」
この人は私にどういう反応を求めているのか。
「面白くない?」
ミカンさんは自分のギャグに絶対的な自信を持つタイプらしい。
「面白くないです」
「君は正直だね」
ミカンさんは愉快そうに笑った。
立ったまま、パラパラと紙をめくって内容を確認する。しかし、私が夢の中で思い出していた内容の小説はなかった。
「これで全部ですか?」
「君に見せたやつは、そうだね」
「そうですか」
気のせいだったのかもしれない。たぶん、ふうから聞いた話と、ミカンさんの小説を読んだ記憶が混ざったのだろう。夢なんてそんなもんだ。
「お邪魔しました」
頭を下げてミカンさん宅を後にする。私の突然の行動に疑問を持つこともなく、ミカンさんは「またねー」と機嫌良さそうに手を振っていた。しかし、扉が閉まる直前に呼び止められる。扉が再び開き、ミカンさんが顔を覗かせる。
「あ、そうだ」
「なんですか?」
「この世に魔法があるって、認められそう?」
以前に交わした賭けの話だ。半分忘れかけていた。もう夏休みは残り二週間くらいしかない。宿題にはほとんど手を付けていない。嫌なことを思い出した。
「魔法はないですよ。もしあれば、一瞬で宿題を片付けてるんですけどね」
私がそう言うと、ミカンさんは「そっか」と、余裕の笑みを浮かべた。
「じゃあまだ勝負は互角な訳だ」
なにをもって互角と判断しているのか不明だが、私は「そうですね」と不敵な笑みを浮かべてみせる。勝負の決着は夏休みの終わり。
夏休みが終わるのが少しでも楽しみになったのは、生まれて初めてかもしれない。
フェイズ1という名の七月は、まるで天国のようだ。だって七月が終わってもまだ八月があるのだから、心の余裕がすごい。どんな自由なことをして遊んでも、いたずらに時間を浪費しても「まだ八月があるしー」という余裕がある。
それはまるで、後に日曜日と祝日を控えた、三連休初日の土曜日のようである。それのさらに凄いバージョンだと思ってくれていい。
しかし、七月から八月に切り替わる瞬間、ほんの少しずつ現実が心の隙間に侵入してくるようになる。カレンダーを見る度、休みが一日ずつ削られていく感覚。
「宿題、やってないなぁ……」
八月一日、焼き付くような日差しの下を歩く私は呟いた。向かう先は学校。今日も屋上で昼寝でもしようと思い立った次第である。
学校に着いて昇降口で靴を履き替え、夏の校舎に侵入する。空気は嫌になるほど蒸し暑いのに、誰もいない廊下は涼しげだった。校舎内に吹奏楽部の練習の音が響いている。私にでも分かる下手くそな演奏と、そこそこ上手い演奏が混じっている。
ふと窓の外を見ると、運動場で熱心にボールを追いかけているサッカー部たちが見えた。タオルを首に掛けて彼らを応援している女子マネージャーもいた。見知った顔だ。
「お前さ。ウザいよ」
幻聴が頭に響く。嫌な気分だ。私は足早に歩いた。
屋上に繋がる扉の前に、一人の女の子が立っていた。女の子は、扉を施錠しているダイヤルロック式の南京錠をジッと見下ろしていた。
私の足音に反応して、女の子はこちらに振り返る。見知った顔だった。驚く。
「あ」
向こうも私に気付いたようだった。一週間くらい前、土砂降りの雨の日、ブランコに座って歌っていた女の子だった。
女の子は顔をしかめる。「面倒な奴に会ってしまった」と目が言っている。
「屋上に入りたいの?」
私が言うと、女の子は目を丸くした。
女の子が着ている制服のリボンの色から、その子が一年生であると判断した。彼女は、ここの鍵の解錠ナンバーを知らないのだろう。
「教えてあげようか」
私が言うと、女の子は気まずそうに視線を逸らした。
私は彼女の側を通り過ぎて、ダイヤルを回してナンバーを合わせる。鍵が外れた。
「はい」
扉を開けると、青空の気配と共に涼やかな風が吹き込んでくる。蒸し暑い空気が背後に流されて行った。
私は屋上に足を踏み入れる。相変わらずきったない屋上だ。でも、悪くない。
振り返り、女の子をチラリと確認すると、視線を逸らされた。
「思ってた屋上と違った?」
返事はない。
私は屋上の汚れた場所を避けるように進んで、梯子に足をかけ、塔屋の上に登る。いつものように日陰にビニールシートを広げ、リュックサックを枕にして寝転んだ。
ふと視線を下げると、入り口の辺りでうろうろしている女の子が見えた。
「おいでよ」
少し声を張ってそう呼びかけると、女の子は迷う素振りを見せながらも、恐る恐るここまでのぼって来た。
「あの……」女の子が、緊張した面持ちで小さく、本当に小さく頭を下げた。「この前は、ごめんなさい」
予想外の台詞だった。
「あの時、わたし、色々と、嫌なことがあって、だから、その、あなたがウザかったのは本当なんですけど……、だから、死ねって言って、ごめんなさい」
「ウザい」と言ったことに関しては謝ってくれないらしい。どちらかと言うと私はそっちの方に傷ついたのだが、こうして謝ってくれただけでも嬉しいことだ。
「よし、許す」
偉ぶって言うと、女の子は変な顔をした。
女の子に名前を聞くと、「ふう、って呼んでください」と言われた。
「みんなそう呼ぶので」
「ふうちゃん」
試しに呼んでみた。ふうはまた変な顔をした。「ふうでいいです」
「先輩は、よくここに来るんですか?」
「たまによく来る」
ふうとシートの上に並んで座って語り合う。
「ねえ、あの日、なんでふうは一人で濡れてたの?」
気になっていたことを聞くと、ふうは眉をひそめてなにか言いかけたが、言葉を呑み込む。そしてまた口を開いた。
「カレシを取られたんです」
「それはまた」
ふうに睨まれる。なぜ。
ふうはため息を吐いて、運動部のかけ声が響く運動場を見下ろしながら言う。「わたし、可愛いじゃないですか」
「おおう」
私も私だが、この子も中々だと思った。だが、実際、本当に可愛いのだからなにも言えない。
こうして近くで見つめると、大変顔立ちが整っていると分かる。美人と言うより、可愛い方に整った顔かたち。
「わたし可愛くて、家も裕福で、性格もそこそこ良くて、運動も勉強も得意で、割と昔からなんでもできたんです。友達もたくさんいましたし、カッコいい男の子もたくさん寄ってきました」
こういう子、私は別に嫌いじゃないが、大勢の女子には嫌われそうな子だなと思った。
「性格悪そう」
私が口に出すと、睨まれる。
「猫を被るのには、自信があります」
清々しい子だ。
「だから、わたしの今までの人生って、順調だったんですよ。なに一つ文句が無いくらい、完璧でした」
「夢を全て叶えてきたって訳だ」
そう言うと、ふうは不思議そうな顔をしたが、「まぁ、そういうことかもしれません」と、気を取り直すように言う。
「だから、この前、カレシが別の女と二人で手を繋いで歩いてるのを見かけて、ショックでした。自分でもびっくりするくらい。たぶんわたしにとって、初めて、文句を言いたくなる出来事だったから」
「人はそういうネガティブな経験を得て成長していくんだよ」ふうに睨まれる。殴られるかと思った。「ってこの前読んだ本に書いてあった」
「でも、わたしにそれを見られた時のカレシは面白かったですよ。すっごくうろたえて、違うんだって何度も言ってました。その場でフッてやりましたけど」
ふうはせせら笑う。でも私にはそれが強がりに見えたし、実際そうなのだろう。
「その三日後くらいに、わたしの元恋人は、その時手を繋いでた女と付き合い始めたらしいです」
「目まぐるしいね」
「本気で殺してやろうかと思いましたよ」
「ちなみにそのカレシって、同級生?」
「いえ、三年生の先輩です」
ふうからその人物の名前を聞いて、私は驚く。私でも知っている人だったからだ。確かサッカー部のエース。校内一のイケメンとの噂。安っぽい女子たちの憧れ。以前のバレンタインデーには、下駄箱をチョコで溢れさせたらしい。ホントか?
なんとなく、なんとなくだけど、嫌な予感がした。
「ちなみにだけど、その女の方の名前、分かる?」
「サッカー部のマネージャーですよ。名前は確か……」
知ってる名前だった。私のクラスメイトだ。
「お前ウザいよ」
幻聴が頭に響く。面白い偶然だと思った。
私とふうは、既に奇妙な縁で繋がっていたらしい。どこぞの小説か。ふと、自称天才小説家の楽しげな笑みが頭に浮かぶ。少しだけ心が安らいだ。
よもやこれが回復魔法か? 笑顔の癒し魔法。ならミカンさんはヒーラーだ。
我ながら、しょうもないことを考えている。
「魔法のように都合のいい奇跡を、いつだって望んでる」
私がそう呟くと、ふうが「は?」と首を傾げて私を見た。
「そういう魔法が、あったらいいね」
ふうは変な顔をした。ふうは小さく呟く。「先輩は、変な人ですね」
その日から、私とふうは二日に一回くらいの間隔で、屋上で共に過ごした。日光を遮るパラソルや、アウトドアチェアをふうが屋上に持ち込んで、快適度が増している。
「日の光は乙女の天敵なので」
「可愛いを維持するのも大変なんだね」
「そうなんです」
パラソルが作る日陰の下に寝転んで私は微睡み、ふうはアウトドアチェアに腰掛けて本を読む。時折、何気ない会話をする。そういう時間が続いた。
ふうとは、色んな話をする。一昨日、私が学校でいじめられているという話をしたら、「まぁ先輩ってウザいですもんね」と言われた。
私は今日もふうに話しかける。
「友達と遊ばなくていいの?」
「お誘いは沢山ありますけど、なんかもうどうでもよくなっちゃいました」
「人生がどうでもよくなった的な?」
「そんな感じかもしれません」
「たった一つの失敗で、若造が偉そうに」
「先輩も一年くらいしか変わらないじゃないですか」
ふうが呆れたように言う。
「たぶん、わたしの幸せはトランプタワーだったんです」
ふうは本をパタンと閉じて私を見る。
「私の完璧な人生の、なに一つ不満のない完璧な幸せは、トランプタワーみたいに奇跡的なバランスの上に成り立ってたんです。だからその内の一つでも崩れると、全部崩れて、元から持っていた幸せにも魅力を感じなくなって、終わっちゃうんです。どうでもよくなっちゃうんです。もう色々しんどいです。疲れました」
「ねえふう」
「なんですか?」
「中二病って、知ってる?」
「知ってますけど、それがどうしたんですか?」
「いやなんでもない。ふうって可愛いよね」
「自覚してます。先輩はウザいですよね」
本当に、可愛い後輩だ。
ある日の昼、ミカンさんの家に行くと、A4サイズのコピー用紙の束を渡された。二十枚くらいの束。
「読んでみて」「小説ですか?」「うん」「完結させたんですか?」「まぁいいからいいから」
言われるままに読んでみる。やはり一番いい所でぶつ切りになっていた。未完だこれ。話が面白いだけに、続きが気になる。
「だから完成してない話を読ませないでください」
「いやぁ、やっぱり最後まで書けなくてさ」
「なんでそれを読ませようとしてくるんですか」
「君には、読んで欲しかったんだよね」
居間に置かれたオーディオから流れているBGMが、知らない英語の曲から『夏色』に切り替わる。ミカンさんは「今日は暑いねー、夏だなぁ」と呟きながら、冷蔵庫からビールの缶を取り出す。
「どうしてクーラーをつけないんですか?」
ミカンさんの部屋は、とんでもなく蒸し暑かった。窓は開け放たれているが、今日は風が吹いていない。汗が皮膚の上を流れていく。
「だって、暑い中で飲むビールの方が美味しいじゃん」
ミカンさんは汗を滴らせながらビールを豪快に飲む。そして近所迷惑になりそうな声量で叫ぶ。
「くぅっ! この一杯の為に生きてるっ!」
うるさい。窓の外のセミが負けじと鳴き喚いた。うるさい。
「そんなに美味しいんですか?」
「いやそこまで? 味はまずい。安物だしね、これ。正確にはビールでもない」
以前にも似たような会話をした気がした。
「君も飲むかい?」
ミカンさんが飲みかけの缶を差し出してくる。
「未成年にアルコールを勧めないでください」
「でも興味はあるでしょ?」
「ないと言えばウソなります」
「君は正直だね」ミカンさんは楽しげに笑う。「でも、変な話だよね」
「何がですか?」
「未成年がアルコールを飲むのも、君を自転車の後ろに乗せて坂道を下るのも、両方やっちゃいけないことなのに、前者は悪いことで、後者は青春って感じがする」
「まぁ、そうですかね」
「若いって、自由だよね」
「若さを過大評価し過ぎでは」
「そんなことないと思うよ。ちょっとくらいの悪いことや、悪戯とか、殴り合いの喧嘩とかは、青春のスパイスになり得る。例えそれが、他の誰かに咎められるようなことであっても」
「いじめや浮気とかも、そうなんですかね?」
私がそう言うと、ミカンさんが途端に真面目な顔になって、
「いや、いじめや浮気はダメでしょ」
と言った。その辺りの違いが私にはよく分からなかった。
「青春っていいなぁ」
ミカンさんが、心底羨ましそうに私を見ていた。
「そういえば、ここの屋上って何年か前までは普通に解放されてたんですよね」
屋上の塔屋の上で、ふうが言った。私は「うん」と頷く。
「五年くらい前に、ここから飛び降り自殺した生徒がいて、それから閉鎖されるようになったんだって」
「へぇ」ふうが小説のページに目を落としたまま、そこまで興味なさげに言った。「でも、その人のお陰で、わたしたちがここを独占できてるなら、いいことですね」
本当に良い性格をしてる後輩だ。
「まぁ、こんな汚い所、他の人は居場所にしないよね」
「ですね。慣れると案外気にならないもんですけど」
「そうだね」
ふうが屋上に持ち込む便利グッズは日に日に増えている。今日は小さなクーラーボックスにコーラを入れて持ってきていた。パラソルとアウトドアチェアは、給水塔の物陰にいつも置いて帰っている。私も最近はビニールシートを隅に置いて帰っている。
「ここまで堂々としてると、先生にバレたら怒られそうだなぁ」
いくら黙認されているとは言え、形式上は立ち入り禁止なのだ。
「別にいいですよ、怒られても」
幸せのトランプタワーを積み上げることを投げ出したふうは自由で無敵だった。思えばこういうのが、ミカンさんの言っていた青春のスパイスになる悪いことなんだろうか。
「でも、その人、なんで自殺したんだろうね」
私が何気なく言うと、ふうが独り言のように、「衝動的に人を殺す人がいるんだから、衝動的に自分を殺す人もいるよ」と言った。
「え?」
「だって、そうじゃないですか。わたしだって、なにかのキッカケがあれば浮気したあのクソ野郎と調子に乗ったブス女を殺していたかもしれません。勢いで」
「こっわ……」
「わたしにとっては、それくらい許せないことだったんです。完璧なわたしの人生に、傷をつけたんですから」
本のページを繰りながら、ふうが淡々と言った。
「ふうちゃんこわい」
「だから、そんな感じで、勢いで自殺しちゃう人も、いると思うんです」
「なるほど……」
私は、自殺というものは、本当に人生のどん底に突き落とされた人が、最後の手段として実行してしまうものだと思っていたけど、案外そうじゃないのかもしれない。
例えば、ふうみたいに順風満帆な人生を送っていた人が、なにかの拍子に傷付いて、躓いて、ふっと勢いで飛び降りてしまったり、とか。
「ふうは死なないよね?」
「は? 死ぬ訳ないじゃないですか。先輩こそ、いじめに耐え切れなくてふらっと飛び降りちゃいそうで心配ですよ。先輩なに考えてるか分からないこと多いですし」
「心配してくれるの?」
私が言うと、ふうはハッと本から顔を上げて私を見た。そして、眉をひそめる。
「今のは無しです」
「可愛い奴め」
ふうの頭を撫でまわす。おーよしよし。
「先輩、ウザい。そんなんだからいじめられるんですよ。自覚あります?」
私の後輩は辛辣だ。
ある日の夜、夢の中で、以前に読んだミカンさんの小説を思い返した。
運動神経がよくて、勉強もできて、愛想があって、誰にでも優しくて、みんなに好かれる可愛い女の子の話。順風満帆で、文句のつけようのない人生を送っていたその女の子は、ある日、信頼していた恋人に裏切られる。
最近どこかで聞いた話だ、と私は思った。
そう、ちょうど屋上で可愛い後輩から聞いた話。
たった一つのその躓きから、彼女の人生は変わる。今まで上手く行っていた全てが上手く行かなくなって、どんどん人生の底に転がり落ちていく。そういうお話。
あれは一体どういう結末を迎えるんだったかと思い出そうとして、そう言えばミカンさんが書く話はどれも未完のままじゃないか、と別の自分がツッコミを入れる。
気付けば、私は屋上に立っていた。フェンスの向こうにある、幅一メートルくらいの縁に立っている。一歩でも前に踏み出せば、私は落ちて死ぬだろう。
「衝動的に人を殺す人がいるんだから、衝動的に自分を殺す人もいるよ」と誰かが言って、私は落ちた。そこで目を覚ました。
目を覚ますと、私はベッドから転がり落ちていた。微妙に腰が痛い。制服に着替えて、学校の屋上に行こうと家を出た所で、ミカンさんに出くわした。
ミカンさんは私の制服を見て、「相変わらず制服似合ってるね、懐かしいなぁ」と言った。
「今から出かけるんですか?」と私は尋ねる。
「ううん、帰って来たとこ。食料調達」ミカンさんがスーパーの袋を私に見せた。
「こんな朝早くからですか?」
「もうすぐ十一時だけど」
そう言われて日の高さを確認すると、確かに早朝のそれではなかった。夏休みの時間感覚は狂いやすい。
「ちょっとだけ、ミカンさんの家にお邪魔してもいいですか?」
「いいよー」
少し気になることがあったので、ミカンさんと一緒にミカンさん宅にお邪魔する。我が家から徒歩一秒未満の距離。
「ミカンさんが私に読ませてくれた小説って、どこかに固めてあります?」
「あ、そこにまとめて置いてるよ」
ミカンさんが指差したのは、玄関付近に放置されているお酒の空き缶でパンパンに膨れたビニール袋。
「え?」
「ほら、そこ」
紐で縛られたA4サイズのコピー用紙の分厚い束が、ビニール袋の上に置いてあった。ゴミかと思ったが、違うらしい。手に取って見ると、以前見たことのあるミカンさんの小説だった。
全て未完の。
「アルミ缶の上にある未完、ってね」
この人は私にどういう反応を求めているのか。
「面白くない?」
ミカンさんは自分のギャグに絶対的な自信を持つタイプらしい。
「面白くないです」
「君は正直だね」
ミカンさんは愉快そうに笑った。
立ったまま、パラパラと紙をめくって内容を確認する。しかし、私が夢の中で思い出していた内容の小説はなかった。
「これで全部ですか?」
「君に見せたやつは、そうだね」
「そうですか」
気のせいだったのかもしれない。たぶん、ふうから聞いた話と、ミカンさんの小説を読んだ記憶が混ざったのだろう。夢なんてそんなもんだ。
「お邪魔しました」
頭を下げてミカンさん宅を後にする。私の突然の行動に疑問を持つこともなく、ミカンさんは「またねー」と機嫌良さそうに手を振っていた。しかし、扉が閉まる直前に呼び止められる。扉が再び開き、ミカンさんが顔を覗かせる。
「あ、そうだ」
「なんですか?」
「この世に魔法があるって、認められそう?」
以前に交わした賭けの話だ。半分忘れかけていた。もう夏休みは残り二週間くらいしかない。宿題にはほとんど手を付けていない。嫌なことを思い出した。
「魔法はないですよ。もしあれば、一瞬で宿題を片付けてるんですけどね」
私がそう言うと、ミカンさんは「そっか」と、余裕の笑みを浮かべた。
「じゃあまだ勝負は互角な訳だ」
なにをもって互角と判断しているのか不明だが、私は「そうですね」と不敵な笑みを浮かべてみせる。勝負の決着は夏休みの終わり。
夏休みが終わるのが少しでも楽しみになったのは、生まれて初めてかもしれない。
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