異世界王道BL

西条ネア

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愛のカタチ

20話 決心

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気づいたらセネスさんのマントを肩にかけられていて、ルイズさんにそっと抱きしめられていた。

「、、、るい、、ず、さん?」

声がうまく出ずに掠れてしまう。
そんなボクの声を聞いてルイズさんはボクを抱きしめる手の力を強くした。

セネスさんも今はこちらに背を向けて何か指示を出しているが2人ともが来てくれたという事実に嬉しくなる。

そして、まるで悪夢を見ているようだった。

こんな姿、2人には見られたくなかった。


汚れてしまった自分はもう2人の伴侶ではいられないだろう。
前世でもあったが、2人に出会った今世では初めてで、2人が離れてしまうと思うと悲しくなった。

「っ、、、!」

でもボクの落ち度だからワガママは言えずキュッと下唇を噛んで、涙が出てくるのを堪える。

そんなボクの姿を見てもルイズさんは何も言わずにボクの肩を抱き寄せてボクが自分から話せるようになるのを待ってくれた。

そうして、セネスさんもこちらに向き直るとボクは先ほどの今だに信じられていない悪夢を2人に話した。

「、、、それで、その口の中に入ってきたものから出た液体を飲んだら体が熱くなって、、、っ」

言っていくうち、2人への申し訳なさがこみ上げてきて言葉が詰まる。

「ごめ、、、なさっ、、ひっく」

泣きながら懇願する。
そんなボクの姿に、2人はだんだんとまとうオーラを黒いものに変えた。
ボクはそんな2人に追い出されても仕方がないと思い、処分を待った。

「、、、レイ。君が悪いわけじゃないんだ。謝らないでくれ。」

セネスさんがボクの俯いた顔を覗き込むように言った。

「そうだぞ。全てはあの男が悪いんだ。なんなら警備を怠った俺たちに非がある。レイは何も悪くねぇんだ。」

ルイズさんもそう言ってくれた。
そして肩においていた手をボクの頭に乗せてゆっくり、優しく撫でてくれた。

それから少しして、セネスさんが部下の人たちに持ってきてもらったネグリジェに着替えることになった。
さっきまで着ていたネグリジェは刃物によって無残な姿になってしまった。

ついでにボクのベッドの清掃もされるそうだ。

その清掃が終わったらまたこのベッドで寝ないといけないのか。。。

ベッドがあると言うありがたい状況なのに、このベッドでは寝たくないと思ってしまう。
それに、なんだか怖い。

1人になった瞬間にまたあの男が現れそうで。

でも、そんな事が言えないボクはメリーに助けて貰いながら新しいネグリジェに着替える。

軽く体を洗って着替え終わっても今だに抜けないあの男の感触はボクの心を蝕んでいく。

2人のまつ部屋に戻るとルイズさんは「さあ、いくぞ。」と言ってボクの体をぐわん、と姫抱きにした。

わわっと未だになれない感覚に声を上げながら運ばれるがままになる。

「あの、、、どこに、いくの?」

横を歩いているセネスさんに聞く。

「ルイズの部屋だ。今日は俺も泊まる。そのままスメローやローザに身体を診てもらおう。」

怖いだろ?と諭すように言ってくれる。 
 
「あっありがと。。」
ボクの伴侶様はボクのことを考えてくれていて、嬉しくて視界が霞む。

そのままルイズさんはボクを優しく運んでくれた。



ーーーーー

ルイズさんの部屋は全体的にシックで黒色と深い赤で統一されていた。

「うわぁ、、、!」

机の上に透明な容器の中に人形が入ったキラキラした置物があった。

セネスさんがボクの様子に気づいたようで取って渡してくれる。
「きれい、、、っ!」

「スノードームだ。」

城下町では特注のものを作ってくれるから今度行ってみよう、とセネスさんが言ってくれた。

「はい!」

「スノードームもいいがスメローたちに診てもらってからもう寝よう。」
そう言ってルイズさんがベッドにボクを下ろした。
時計を見れば2時45分。
真夜中だ。

ネグリジェをすぐに捲りあげられるようにたくし上げてからその上に掛け布団を掛けてくれる。
「レイ、茶は飲めそうか?」
いつのまにか扉付近でドミールさんと話していたセネスさんが聞いてくれた。

「うっうん。」
「もう寝るんだから茶は飲まないほうがいい。ホットミルクだな。」

ルイズさんがその方がいい、とドミールさんに言ってくれた。

「承知しました。」

そのままドミールさんは何処かへ消えて言った。

コンコンッ

しつれーしまーすっ!
元気な声とともにスメローさんとローザさんが入ってきた。

「失礼いたします。神子様、御前失礼いたします。」
ローザさんはピシッとお辞儀をしてくれる。

「ぅっうん。」
ぽかん、としている間にまずはスメローさんがボクの前に来てネグリジェをたくし上げた。

「???ッ!」

急に冷たいものが当てられて、ほわほわしてた気が引き締まる。

「おい!もう少し丁寧にしてくれ!レイが驚いているだろ!」

ルイズさんが声を荒げる。
そんなことも何処か遠くに感じる。

「すみません。でもお静かにお願いしますね。」
そう言ってスメローさんは再びボクに向き直る。
「神子様?大丈夫ですか?すこしお胸が苦しいとかないですか?」
「。。。。」
ボーッとしてたらスメローさんが聞いてきていたようで心配そうに見つめる4匹がいた。

「はぃ。。」

声の出しづらさはあるけど大したことじゃないから言わないでおく。

「、、、、ッ!スメロー!!今すぐ代わってください!」
「えっ?うん。」

今度はローザさんがボクの体を注意深く見る。
「神子様。団長たちもご無礼を承知で失礼いたします。、、、っ!」 
 
突如、ボクにかけていた探知の魔法を止めたローザさんはそのままルイズさんとセネスさんに何か話し始める。

「、、、で、、、、なので、、、、しょうか。」
ボクには聞き取れなかったがあまりいい話ではないのか2人の顔は顰めっ面だ。

「、、なんだったの?」
近くでボクの脈を測っていたスメローさんに聞いてみる。
スメローさんはクゥン、、と鼻を鳴らして耳を垂れさせた後ピンっと元気になってきっと大丈夫ですよ!、と言ってくれた。

、、、いや、気になるんだけど。。。


そう思ったけど突っ込むのは柄ではないのでやめておく。
スメローさんは犬族だからなのか体は正直で(ここに何もエロい意味はない。)元気付けようとしてくれているのがわかる。

まあ、どうせボクは捨てられるのだし。。。

迷惑にならないうちに出て行こうと思う。

ここのみんなは優しいからこんな汚れきったボクでも最後まで見てくれるんだ。
そう思うと涙腺が緩む。

この世界に来てから本当に涙腺が緩みやすくなった。

ローザさんと話していた2人はそのまま心配そうに耳を垂らしたままこちらに来る。

そんな2人の姿を見てボクはこのままじゃいられない、と思った。

ここにいる人たちはみんな優しいから、何かしらボクを助けてくれるのかもしれない。
ここにいるみんなは優しい。
それは断言できる。

でもだからといってこのままここにいさせてくれるとは限らない。
もちろん、ここに置いてくれるのであればボクはなんだってするが流石にそれは甘えすぎだ。

2人の伴侶となった手前、こんな事態も予想して細心の注意を払うべきだった。
きっと自分は2人の名に傷をつけてしまっただろう。
無責任ではあるがボクはこのまま2人のそばにはいられまい。
たとえ2人が許してくれても。


、、、今夜抜け出そう。


ボクはそう決心した。





ーーーーーー

「神子様。。。」

ボクを見つめている存在に気づくことはなかった。


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