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3章 プライベートランド
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おじいちゃんが到着したのはそれから数分してからだった。廊下をドタバタ、スリッパ? サンダルかな、音を響かせてやってくるといきよいよくドアを開けて入ってきた。
「お、冬弥、でかくなったなぁ、今度中学生か? ん?中学3年、来年高校受験? そうか、そうか、まったく、時代はどんどん勝手に進みよってからに、それで、そちらは? 」
「担任の里美新ともうします。今日はお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます。早速ですが、お願いの前に生徒3名へのいたずらについて説明していただけますか? 」
新先生は穏やかだが、かなり怒っているのが伝わるほど気迫がこもっていた。でも、そんなことは関係なしにおじいちゃんは新先生の手を掴むと自分の方に引っ張っていた。
「新さんと言うのですか、なんと素敵なお名前。新先生! 是非、わしと一緒にここで暮らしてくだされ! 」
僕も新先生も沙織も意味が分からず呆然としてしまったが、新先生は我に返るとおじいちゃんの頬にビンタしていた。
「なにをふざけたことを行ってやがる! ああ? 一緒に住んで欲しいだぁ! どの口でいってんだ、クソジジィ! 冗談は腹に収めてとっとと墓に入りやがれ、このくたばり損ないが! いいか、あと10秒以内に私の生徒たちを連れて来い! 話はそっからだ、わかったか! 」
怖ぇぇ、なんだよ、新先生? いつものかわいい先生はどこに行ってしまったの?
「ほほぉ! ますます気に入った! どうじゃ、冗談抜きにわしと一緒にならんか! 分かった分かった、それ以上暴力は止めい。あのガキどもならほら、そこにロザリーが連れてきておる」
僕らを応接間に通してくれたあの2足歩行ロボットは『ロザリー』というエンジェルが操っており、ロボットは爺さんの趣味で集めているうちの一台だそうだ。ロザリーは3人を落とし穴から連れてきたが、それぞれ、頭や体に落ち葉がたくさん付いていた。
「まったく、あのくらい分かりやすいトラップも回避できんとは、まだまだじゃのぉ」
「何を言っているんですか、お祖父様のイタズラのせいで生徒たちが怪我でもしたらどうするんですか? 」
おっ新先生が元に戻ってる。おじいちゃんもそれに気づいたらしく、また、手を伸ばし今度はお尻を触ろうとしていた。「ビシッ」美咲はその手を叩くと新先生を後ろに隠した。
「おやおや、お前さんは......そうか、辰一郎の娘か。大きくなったのぉ。ん? でも、嘘はいかんぞ、嘘は」
美咲はおじいさんの視線が自分の胸に言ってることに気づくと慌てて胸を隠した。
「ちょとぉ、冬弥、あんたのおじいさん、なんなの! すっごい失礼なんだけど! 」
皆の視線が何故か僕に集まっていた。いや、僕なんか悪いことした? まあ、でも、ここは僕がおさめないといけないのかな。
「おじいちゃん、冗談はやめて欲しいんだけど。今日来たのは......」
「まあ、待て、言わんでも分かっとる。タマじゃろ? よっぽどお前たちのことが嫌いらしいな。あの穴もタマが作ったものじゃし。タマに何かしたのか? 」
「な、何もしてないよ。単にセクハラをやめてもらおうとしただけだよ、で、タマは今どこに? 」
「タマなら、朝から第二研究所に逃げていったわい、まったく、面倒なことになっておるのぉ」
虎之介と小町は、服に付いた落ち葉を払うのも忘れるほど落ちたのがショックだったらしい。全身枯れ草まみれで立っており、それを懸命に沙織が落としていた。
「はあ......穴に落とされるわ、猫はいないわ、なんなんだよ」
「ほんとよ! とっととタマを捕まえて帰りましょ、こんなとこ! 」
「3人とも怪我がなくてよかったよ」 そう言おうと思った瞬間、ライラがプライベート回線で伝えてきた。
「冬弥、あの穴、すごいカムフラージュだったのよ。特にHMDをかぶった状態だと見えないように細工してあった。おじいちゃんはタマがやったって言ったけど、おじいちゃんじゃないかな。エンジェルがやれる仕事じゃないと思う」
ライラの分析能力は母さんによって日々アップデートされており、今では僕が話している事から勝手に分析を始めるらしい。おじいちゃんの件も頼んでもいないのに次々と分析結果が届いていた。ライラの言う、HMDを使っていると見えないカムフラージュがどんな物なのか見てみたいね。この研究所にはプライベートランドがあるという事前情報があったから、皆でHMDかぶってたのが裏目に出たな。うーん、気を抜かずに行かないと、まだまだ何かありそう。
「お祖父様、生徒も無事のようなので要件を済ませたいのですが、シミュレーターのタマちゃんはお貸しいただけるのでしょうか? 」
「貸してやってもいい。だが、条件が1つある」
「私とどうこうってお話なら最初からお断りします」
「まだ何もいっとりゃせん! ごほん。条件とはそこにいるロザリーにパペット戦で一撃与えることじゃ。使用パペットは完全なノーマル仕様。ハンドガンかレーザーソードのみ使用可能。フィールドはこのプライベートランド全域で制限時間は30分。お主ら全員でロザリーと戦っても良いし、選抜メンバーで戦ってもよい。ロザリーにどのような手段でもいいから一撃食らわせられたら、タマはわしが説得してやるわい」
「そんなの簡単よ。美咲! 虎之介! 3人でやっつけるわよ。冬弥と沙織、先生はおじいちゃんが妙なことをしないか見張ってて! 」
小町も美咲もやる気に満ちていて体の周りからオーラ的な何かが出てきそうだ。虎之介はいつものようにのほほーんとしてるかと思いきや滅多に見ない真面目な虎がそこにいた。3人はそれぞれお互いの戦い方を知っているし、チーム戦は悪くないと思う。ただ、問題なのは司令官がいない。ロザリーはどんな戦い方をするか分からない。特におじいちゃんのエンジェルだし、普通なわけがない。警戒したほうがいいのだけど、3人を抑える司令官がいない。バラバラに戦って勝てるのか......
「ほほほ、元気なお嬢ちゃんじゃのぉ。元気なことはいいことじゃ、まあ、発育はだいぶ偏っているようじゃがの。せいぜい頑張ることじゃ。戦闘は20分後に始めるぞい。パペットはハンガーに用意してあるから、ロザリー、後は頼んだぞ」
小町は何を言われたか分からなかったようだけど、美咲が同情する仕草をするとようやく気付き「これから成長期なのよ! エロジジィ! 」と中指を立てていた。はあ、おじいちゃんは年齢に関係なく、女子を見るところは胸なんだね。
「さて、急なことだけど、パペット戦になってしまったわ。美咲ちゃん、小町ちゃん、虎之介くん、体の調子はどう? 痛いところは本当に無い? ならよかった。3人がよければ、さっき小町ちゃんが言ってたように3人にロザリーの相手をお願いしたいのだけどいいかしら? 」
「問題ありません、先生! 絶対にあのエロジジィに一泡吹かせてやります。ふふふ......」
僕が美咲の鬼気迫る表情に「頑張れ」と声もかけられずにいると、沙織がみんなを労いつつ、落ち着かせてくれた。
「もう、あんまりムリしないでね、美咲ちゃん、虎之介くん、小町ちゃんをお願いね。私も戦いたいけどタマちゃんを探して絶対説得してみせるから! 」
沙織はめずらしくガッツポーズを見せていたが、その手を美咲が握ると首を横にふっていた。
「沙織、あのエロ猫の説得は無理しなくていいわよ、沙織に何かあったらソッチのほうが問題だし。いざとなったら力づくで来てもらうから、いいわね、タク! 」
「おいおい、猫の世話までやらせる気かよ、まったく、美咲には困ったもんだな」
「ははは」 場の雰囲気が一気に明るくなった。沙織はこういう時のリカバリは本当にうまい。沙織がいるだけでみんな穏やかな気持になれる。本人は狙っているわけじゃないようだし、天性のものなんだろうね。羨ましい。
おじいちゃんが到着したのはそれから数分してからだった。廊下をドタバタ、スリッパ? サンダルかな、音を響かせてやってくるといきよいよくドアを開けて入ってきた。
「お、冬弥、でかくなったなぁ、今度中学生か? ん?中学3年、来年高校受験? そうか、そうか、まったく、時代はどんどん勝手に進みよってからに、それで、そちらは? 」
「担任の里美新ともうします。今日はお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます。早速ですが、お願いの前に生徒3名へのいたずらについて説明していただけますか? 」
新先生は穏やかだが、かなり怒っているのが伝わるほど気迫がこもっていた。でも、そんなことは関係なしにおじいちゃんは新先生の手を掴むと自分の方に引っ張っていた。
「新さんと言うのですか、なんと素敵なお名前。新先生! 是非、わしと一緒にここで暮らしてくだされ! 」
僕も新先生も沙織も意味が分からず呆然としてしまったが、新先生は我に返るとおじいちゃんの頬にビンタしていた。
「なにをふざけたことを行ってやがる! ああ? 一緒に住んで欲しいだぁ! どの口でいってんだ、クソジジィ! 冗談は腹に収めてとっとと墓に入りやがれ、このくたばり損ないが! いいか、あと10秒以内に私の生徒たちを連れて来い! 話はそっからだ、わかったか! 」
怖ぇぇ、なんだよ、新先生? いつものかわいい先生はどこに行ってしまったの?
「ほほぉ! ますます気に入った! どうじゃ、冗談抜きにわしと一緒にならんか! 分かった分かった、それ以上暴力は止めい。あのガキどもならほら、そこにロザリーが連れてきておる」
僕らを応接間に通してくれたあの2足歩行ロボットは『ロザリー』というエンジェルが操っており、ロボットは爺さんの趣味で集めているうちの一台だそうだ。ロザリーは3人を落とし穴から連れてきたが、それぞれ、頭や体に落ち葉がたくさん付いていた。
「まったく、あのくらい分かりやすいトラップも回避できんとは、まだまだじゃのぉ」
「何を言っているんですか、お祖父様のイタズラのせいで生徒たちが怪我でもしたらどうするんですか? 」
おっ新先生が元に戻ってる。おじいちゃんもそれに気づいたらしく、また、手を伸ばし今度はお尻を触ろうとしていた。「ビシッ」美咲はその手を叩くと新先生を後ろに隠した。
「おやおや、お前さんは......そうか、辰一郎の娘か。大きくなったのぉ。ん? でも、嘘はいかんぞ、嘘は」
美咲はおじいさんの視線が自分の胸に言ってることに気づくと慌てて胸を隠した。
「ちょとぉ、冬弥、あんたのおじいさん、なんなの! すっごい失礼なんだけど! 」
皆の視線が何故か僕に集まっていた。いや、僕なんか悪いことした? まあ、でも、ここは僕がおさめないといけないのかな。
「おじいちゃん、冗談はやめて欲しいんだけど。今日来たのは......」
「まあ、待て、言わんでも分かっとる。タマじゃろ? よっぽどお前たちのことが嫌いらしいな。あの穴もタマが作ったものじゃし。タマに何かしたのか? 」
「な、何もしてないよ。単にセクハラをやめてもらおうとしただけだよ、で、タマは今どこに? 」
「タマなら、朝から第二研究所に逃げていったわい、まったく、面倒なことになっておるのぉ」
虎之介と小町は、服に付いた落ち葉を払うのも忘れるほど落ちたのがショックだったらしい。全身枯れ草まみれで立っており、それを懸命に沙織が落としていた。
「はあ......穴に落とされるわ、猫はいないわ、なんなんだよ」
「ほんとよ! とっととタマを捕まえて帰りましょ、こんなとこ! 」
「3人とも怪我がなくてよかったよ」 そう言おうと思った瞬間、ライラがプライベート回線で伝えてきた。
「冬弥、あの穴、すごいカムフラージュだったのよ。特にHMDをかぶった状態だと見えないように細工してあった。おじいちゃんはタマがやったって言ったけど、おじいちゃんじゃないかな。エンジェルがやれる仕事じゃないと思う」
ライラの分析能力は母さんによって日々アップデートされており、今では僕が話している事から勝手に分析を始めるらしい。おじいちゃんの件も頼んでもいないのに次々と分析結果が届いていた。ライラの言う、HMDを使っていると見えないカムフラージュがどんな物なのか見てみたいね。この研究所にはプライベートランドがあるという事前情報があったから、皆でHMDかぶってたのが裏目に出たな。うーん、気を抜かずに行かないと、まだまだ何かありそう。
「お祖父様、生徒も無事のようなので要件を済ませたいのですが、シミュレーターのタマちゃんはお貸しいただけるのでしょうか? 」
「貸してやってもいい。だが、条件が1つある」
「私とどうこうってお話なら最初からお断りします」
「まだ何もいっとりゃせん! ごほん。条件とはそこにいるロザリーにパペット戦で一撃与えることじゃ。使用パペットは完全なノーマル仕様。ハンドガンかレーザーソードのみ使用可能。フィールドはこのプライベートランド全域で制限時間は30分。お主ら全員でロザリーと戦っても良いし、選抜メンバーで戦ってもよい。ロザリーにどのような手段でもいいから一撃食らわせられたら、タマはわしが説得してやるわい」
「そんなの簡単よ。美咲! 虎之介! 3人でやっつけるわよ。冬弥と沙織、先生はおじいちゃんが妙なことをしないか見張ってて! 」
小町も美咲もやる気に満ちていて体の周りからオーラ的な何かが出てきそうだ。虎之介はいつものようにのほほーんとしてるかと思いきや滅多に見ない真面目な虎がそこにいた。3人はそれぞれお互いの戦い方を知っているし、チーム戦は悪くないと思う。ただ、問題なのは司令官がいない。ロザリーはどんな戦い方をするか分からない。特におじいちゃんのエンジェルだし、普通なわけがない。警戒したほうがいいのだけど、3人を抑える司令官がいない。バラバラに戦って勝てるのか......
「ほほほ、元気なお嬢ちゃんじゃのぉ。元気なことはいいことじゃ、まあ、発育はだいぶ偏っているようじゃがの。せいぜい頑張ることじゃ。戦闘は20分後に始めるぞい。パペットはハンガーに用意してあるから、ロザリー、後は頼んだぞ」
小町は何を言われたか分からなかったようだけど、美咲が同情する仕草をするとようやく気付き「これから成長期なのよ! エロジジィ! 」と中指を立てていた。はあ、おじいちゃんは年齢に関係なく、女子を見るところは胸なんだね。
「さて、急なことだけど、パペット戦になってしまったわ。美咲ちゃん、小町ちゃん、虎之介くん、体の調子はどう? 痛いところは本当に無い? ならよかった。3人がよければ、さっき小町ちゃんが言ってたように3人にロザリーの相手をお願いしたいのだけどいいかしら? 」
「問題ありません、先生! 絶対にあのエロジジィに一泡吹かせてやります。ふふふ......」
僕が美咲の鬼気迫る表情に「頑張れ」と声もかけられずにいると、沙織がみんなを労いつつ、落ち着かせてくれた。
「もう、あんまりムリしないでね、美咲ちゃん、虎之介くん、小町ちゃんをお願いね。私も戦いたいけどタマちゃんを探して絶対説得してみせるから! 」
沙織はめずらしくガッツポーズを見せていたが、その手を美咲が握ると首を横にふっていた。
「沙織、あのエロ猫の説得は無理しなくていいわよ、沙織に何かあったらソッチのほうが問題だし。いざとなったら力づくで来てもらうから、いいわね、タク! 」
「おいおい、猫の世話までやらせる気かよ、まったく、美咲には困ったもんだな」
「ははは」 場の雰囲気が一気に明るくなった。沙織はこういう時のリカバリは本当にうまい。沙織がいるだけでみんな穏やかな気持になれる。本人は狙っているわけじゃないようだし、天性のものなんだろうね。羨ましい。
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