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第一章 久遠なる記憶
激突 3
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「田中、できたか?」アルベルトは、急かすように問う。
「ええ、何とか。<アマテラス>が多元量子マーカー置いていってくれて助かりましたよ」
同じ頃、本部IMCでは、アルベルトと田中が中心となり、<アマテラス>、及び<天仙娘娘>の、ミッション脱出準備を進めていた。残り時間は三〇分ほど。失敗は許されない。
アルベルトは、田中の準備したプログラムにさっと目を通し、頷く。
「うむ……これならいけそうだ。すぐにアイリーンに送ってやれ。China支部にも共有を」「了解です!」田中は、さっそく<イワクラ>に待機するアイリーンと、China支部に連絡をとる。
その様子を一瞥した東は、亜夢の生体維持監視を担当している真世の方を向き、声をかけた。
「亜夢の方は?」「は、はい……えっと……」
東は、真世の席にあるモニターを覗き込む。
『……怖くない……亜夢……死なないもん……』亜夢は、うわ言を口にしながら、身を捩っていた。
「うなされてますが……体の方は、安定域です」
「体温がずいぶん上がっているな。カプセル内の温度管理に注意してくれ。あの子のことだ、"熱くなり過ぎ"たら厄介だ」
モニターに映る亜夢の身体は、仄かに薄赤いオーラが視認できる。真世の脳裏には、特異な能力を暴走させ、無差別に襲い掛かってきた亜夢の姿が未だに残っていた。東の言葉に気を引き締め直し、亜夢の管理に再び集中する。
****
長大な共工の背を辿り、その頭部へと徐々に近づく<アマテラス>。モニターに立ち上がった、通信ウィンドウに<イワクラ>のアイリーンが現れる。
『こちら<イワクラ>! 帰還時の誘導ビーコンを次元リレーして送り込みます! <天仙娘娘>を救出次第、捕まえに来てください!』
「了解よ、アイリーン!」
<アマテラス>の遥か上方、一面の闇の中にぼんやりとした陽だまりのような場が形成され始める。帰るべき道標となる誘導ビーコンが、この時空間に差し込んで来ている証だ。
インナーノーツは、ミッションが最終局面に入った事を改めて認識し、皆、覚悟をその顔に滲ませる。
「波動収束八十パーセント! 共工頭部を捕捉! 距離四千! アクセス予定ポイントまで、あと十! カウント、入ります!」
「九……八……七……」
サニのカウントの中、PSI-Linkシステムにダイレクト接続した直人、そしてアムネリアは、共工頭部に見え隠れする<天仙娘娘>へと意識を指向してゆく。
『ぅおおおぉおお!』亜夢の作り出す鳳凰の翼が、共工の暴風を退け、<天仙娘娘>への道筋を切り拓く。PSI-Linkダイレクト接続により、航路を見定め、ティムは、その狭間に船を導く。
「四……三……二……直上‼︎」
「掴まれ! <天仙>‼︎」タイミングを定め、直人は、誘導PSIパルスを一気に放射した。
『行きなさい……娃!』瞳を大きく見開き、アムネリアは、託された娃の意志を、誘導PSIパルスへと流し込む。
娃の意志の波動が<天仙娘娘>を包んでゆくと、船体は大きく揺さぶられる。まるで、動揺しているかのように……
「うぅうう‼︎」「イャぁ‼︎」静と智愛は、頭を抱え込んで、流れ込む何者かの気配に抵抗する。
次第に、闇に包まれていた全周モニターに、上方から光が差し込む。雨雲の切間から溢れ落ちる、日の光のように……
「……来るな……来るな……来るな……」明明は、その光を見上げて戦慄く。
「ギリ……ギリ……」顔を歪め、歯軋りする劉。
「……なん……だヨ……これ……」楊は、差し込む光を見上げたまま呆然となっていた。
『……天仙‼︎ ……こっちだ! ……』
<天仙娘娘>のブリッジに、直人の声が響く。その声に明明は、顔を顰め、眉を吊り上げる。
「……ちぃ……お前……かぁ⁉︎ ……なおとぉおおおお……」何かに突き動かされるように、明明は、PSI-Linkインターフェースモジュールに手をかけていた。
「明明⁉︎ ……」
直人は、PSI-Linkシステムを逆流してくる気配にハッとなって顔を上げた。
「……これは……憎しみ……いや…………恐れている⁉︎ オレたちを??」
「PSI-Link有効接続まであと七十パーセント! そのまま支えろ、ナオ!」「は、はい!」アランの指示に、直人はすぐに気持ちを立て直す。今は、とにかく<天仙娘娘>を連れ帰る事、その事だけに集中せねばならない。
『……娃よ……其方の想いを……』アムネリアが集中を深めていく。
<天仙娘娘>のブリッジを照らす光に呼応して、ブリッジ前方のフォログラム投写機が、ずんぐりとした小山のような造形を形作り始めた。
『……う……く……なんだ……これは……』
小山は、人の形を取り戻し始める。その姿は、鯀、その人だ。だが、<天仙娘娘>のクルーは、その姿を気にも留めていない。
『……何者だ……儂は……其方など……いや……儂は……』
亡くなった直後の魂に刻まれた記憶であろうか。鯀の頭は、かち割られ、大量の血液が、長い髪を赤く染め上げている。呻き呟きながら、何かを求め彷徨い歩く。
彼の正面のモニターが蠢き、霞が人の顔のようなものを形作る。
女のようだ。
その顔を見上げ、鯀は立ち止まり硬直した。
表情ははっきりとしないが、口元にあたる部分が、緩やかな弧を描き、静かな笑みを湛えているように見える。
『……くっ……なぜ……笑う……儂は……おそれぬ……其方……などに……』
鯀の身体が震え出し、呼応して<天仙娘娘>の船体も揺さぶられる。
揺れに即座に反応したのは、明明だ。鷲掴みにしたPSI-Linkインターフェースモジュールに、溢れ出る情動を叩き込む。
「お前なんかにぃいいい!」
<天仙娘娘>の両舷上部に赤い稲光が迸り、エネルギーストリームが形成されていく。
「<天仙娘娘>、PSI波動スプレッド発振器に高エネルギー反応!」
<アマテラス>の皆は、<天仙娘娘>を捉えた正面モニターに身を乗り出す。こちらへの攻撃意志は、明らかだ。
「やめろ! 明明!」直人は叫ぶ。だが、その声が届くはずもない。
「接続作業中断! 全速離脱!」カミラは即断した。
「チッ!」ティムは押し倒していた、操縦桿を一気に引き戻す。共工の頭部から上昇、離脱する<アマテラス>に向かって、<天仙娘娘>は、収束させたエネルギーの矢を射掛け始める。
回避行動をとる<アマテラス>は、数弾かわすも、一発が船体下部を掠めた。衝撃がブリッジを襲い、警報が鳴り響く。
『いぃっったぁあああああ‼︎』警報に混ざって、亜夢の悲鳴がとぶ。
「亜夢‼︎」直人が振り返り見ると、亜夢のフォログラムは、バランスを崩した体勢で、アムネリアに支えられ、両手を後ろに回し、尻を撫でている。
「左舷機関外殻、被弾!」「ダメージコントロール!」
アランは即対応し、被弾個所に、即座にPSIバリア、およびシールドの保護強化処置を施す。
『あいつ! 亜夢のお尻叩いたぁ‼︎ もう‼︎ なおと、あいつ、やっつけてぇ‼︎』
直人と視線が重なった亜夢は、ブリッジ後方モニターに映り込む<天仙娘娘>を指差しながら喚く。彼女のフォログラム周辺に広がるオーラは、俄然、闘志に燃え上がっていた。
呆れたような表情のアムネリアが、その隣で小さく首を振っている。
「……」直人は、目を細めて亜夢を一時見つめると、無言のまま前に向き直った。
『ねぇ、なおとぉ‼︎』
「うっさいよ、亜夢! 黙って! まだ撃ってくるよ!」棘を隠さず、サニが叫ぶ。
「デコイ、一番から八番、全て装填! 反転しつつ、射出。攻撃を散らしながら、再度接近する!」「了解!」
「コースターン! ナオ、亜夢のケツの仇、とりにいくぞ!」舵を切るティムの口元は、ニヤけた笑いを見せている。
「なんだよ……それ」直人は、バカバカしくなっていく気持ちを発散するように、デコイの射出を始めた。
共工の前方で反転し終えた<アマテラス>は、先発するデコイを盾にしながら、再び<天仙娘娘>へのアプローチを試みる。
『……暗闇が、あの船を飲み込んでいる……娃の想いも……まだ届かぬ……』アムネリアは、静かに呟く。
「くっ!」カミラは、共工を作る暗雲の中に見え隠れする<天仙娘娘>を睨め付ける。
「<天仙>第二波発射態勢!」「構うな! デコイに紛れて近づく!」
デコイ群は、ランダムな動きを見せながら<天仙娘娘>の周囲を掠め翻弄する。その間に<アマテラス>は、デコイと似た動きをとりながら、<天仙娘娘>との距離を狭めてゆく。
「チッ目眩しか⁉︎ そんなもの!」
<天仙娘娘>の全波動スプレッド発振器が発光し、赤く光る繭玉状のエネルギー膜を形成する。
「全周PSI波動スプレッドか‼︎」アランが叫んだと同時に、エネルギー膜は弾け飛び、先行していたデコイ群は、一瞬にして光の球体に変わり、PSI情報素子へと還元されて消えてゆく。
デコイを失い、丸裸の<アマテラス>に、明明は、立て続けに照準を向ける。
「<天仙>第三波準備! 上部砲台にエネルギーを集中している模様!」「マジかよ! 本気で俺たちを殺る気かぁ⁉︎」
すでに二度目のアプローチ体勢をとる<アマテラス>は、今発砲を許せば、直撃は免れないだろう。
「ナオ! こちらもPSIブラスターを!」「えっ⁉︎ で、でも!」
「<天仙>にもPSIバリアはある! 一、二発で沈みはしない!」「りょ、了解!」
「よぉし! ナオ! キツめの目覚まし、かましてやれ!」ティムは嬉々として焚きつける。
「正面! 共工、及び<天仙>、突っ込んで来ます!」レーダー盤を睨みながらサニが叫ぶ。
「一時方向へ針路修正! すれ違い様に仕掛ける!」
『なおと! がんばって!』ワクワクと言いたげな炎のオーラが、亜夢を取り囲んで舞い踊る。対して、アムネリアは目を閉じ、自分の役割に備える。
「PSIパルス収束データ補正! PSIブラスターへ入力、いいぞ、ナオ!」「PSIブラスター全門、起動!」アランの合図で、変性意識深く集中を高めた直人は、PSIブラスターに自らの意志を落とし込む。
<アマテラス>の六門のブラスターが咆哮し、両舷上部に青白いエネルギーの気流を生み出す。
「‼︎ ……ガチんこ上等! ……な、なおと……お、お前なんかにぃいい‼︎」<天仙娘娘>のPSI-Linkシステムを通して、流れ込む気配の中に"直人"を感じ取った明明は、闘争心を剥き出しにして、大きく左に逸れていく、火の玉に見えている<アマテラス>への照準を絞り込む。
龍体を纏う<天仙娘娘>と、鳳凰の翼をはためかせる<アマテラス>——両者がちょうど、並んだその時。
「落ちろぉおおおお‼︎」
「てぇ!」「PSIブラスター、発射‼︎」
<天仙娘娘>と<アマテラス>は同時に発砲し、両者から放たれた、赤と白の光の矢が、互いに襲いかかった。
「ええ、何とか。<アマテラス>が多元量子マーカー置いていってくれて助かりましたよ」
同じ頃、本部IMCでは、アルベルトと田中が中心となり、<アマテラス>、及び<天仙娘娘>の、ミッション脱出準備を進めていた。残り時間は三〇分ほど。失敗は許されない。
アルベルトは、田中の準備したプログラムにさっと目を通し、頷く。
「うむ……これならいけそうだ。すぐにアイリーンに送ってやれ。China支部にも共有を」「了解です!」田中は、さっそく<イワクラ>に待機するアイリーンと、China支部に連絡をとる。
その様子を一瞥した東は、亜夢の生体維持監視を担当している真世の方を向き、声をかけた。
「亜夢の方は?」「は、はい……えっと……」
東は、真世の席にあるモニターを覗き込む。
『……怖くない……亜夢……死なないもん……』亜夢は、うわ言を口にしながら、身を捩っていた。
「うなされてますが……体の方は、安定域です」
「体温がずいぶん上がっているな。カプセル内の温度管理に注意してくれ。あの子のことだ、"熱くなり過ぎ"たら厄介だ」
モニターに映る亜夢の身体は、仄かに薄赤いオーラが視認できる。真世の脳裏には、特異な能力を暴走させ、無差別に襲い掛かってきた亜夢の姿が未だに残っていた。東の言葉に気を引き締め直し、亜夢の管理に再び集中する。
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長大な共工の背を辿り、その頭部へと徐々に近づく<アマテラス>。モニターに立ち上がった、通信ウィンドウに<イワクラ>のアイリーンが現れる。
『こちら<イワクラ>! 帰還時の誘導ビーコンを次元リレーして送り込みます! <天仙娘娘>を救出次第、捕まえに来てください!』
「了解よ、アイリーン!」
<アマテラス>の遥か上方、一面の闇の中にぼんやりとした陽だまりのような場が形成され始める。帰るべき道標となる誘導ビーコンが、この時空間に差し込んで来ている証だ。
インナーノーツは、ミッションが最終局面に入った事を改めて認識し、皆、覚悟をその顔に滲ませる。
「波動収束八十パーセント! 共工頭部を捕捉! 距離四千! アクセス予定ポイントまで、あと十! カウント、入ります!」
「九……八……七……」
サニのカウントの中、PSI-Linkシステムにダイレクト接続した直人、そしてアムネリアは、共工頭部に見え隠れする<天仙娘娘>へと意識を指向してゆく。
『ぅおおおぉおお!』亜夢の作り出す鳳凰の翼が、共工の暴風を退け、<天仙娘娘>への道筋を切り拓く。PSI-Linkダイレクト接続により、航路を見定め、ティムは、その狭間に船を導く。
「四……三……二……直上‼︎」
「掴まれ! <天仙>‼︎」タイミングを定め、直人は、誘導PSIパルスを一気に放射した。
『行きなさい……娃!』瞳を大きく見開き、アムネリアは、託された娃の意志を、誘導PSIパルスへと流し込む。
娃の意志の波動が<天仙娘娘>を包んでゆくと、船体は大きく揺さぶられる。まるで、動揺しているかのように……
「うぅうう‼︎」「イャぁ‼︎」静と智愛は、頭を抱え込んで、流れ込む何者かの気配に抵抗する。
次第に、闇に包まれていた全周モニターに、上方から光が差し込む。雨雲の切間から溢れ落ちる、日の光のように……
「……来るな……来るな……来るな……」明明は、その光を見上げて戦慄く。
「ギリ……ギリ……」顔を歪め、歯軋りする劉。
「……なん……だヨ……これ……」楊は、差し込む光を見上げたまま呆然となっていた。
『……天仙‼︎ ……こっちだ! ……』
<天仙娘娘>のブリッジに、直人の声が響く。その声に明明は、顔を顰め、眉を吊り上げる。
「……ちぃ……お前……かぁ⁉︎ ……なおとぉおおおお……」何かに突き動かされるように、明明は、PSI-Linkインターフェースモジュールに手をかけていた。
「明明⁉︎ ……」
直人は、PSI-Linkシステムを逆流してくる気配にハッとなって顔を上げた。
「……これは……憎しみ……いや…………恐れている⁉︎ オレたちを??」
「PSI-Link有効接続まであと七十パーセント! そのまま支えろ、ナオ!」「は、はい!」アランの指示に、直人はすぐに気持ちを立て直す。今は、とにかく<天仙娘娘>を連れ帰る事、その事だけに集中せねばならない。
『……娃よ……其方の想いを……』アムネリアが集中を深めていく。
<天仙娘娘>のブリッジを照らす光に呼応して、ブリッジ前方のフォログラム投写機が、ずんぐりとした小山のような造形を形作り始めた。
『……う……く……なんだ……これは……』
小山は、人の形を取り戻し始める。その姿は、鯀、その人だ。だが、<天仙娘娘>のクルーは、その姿を気にも留めていない。
『……何者だ……儂は……其方など……いや……儂は……』
亡くなった直後の魂に刻まれた記憶であろうか。鯀の頭は、かち割られ、大量の血液が、長い髪を赤く染め上げている。呻き呟きながら、何かを求め彷徨い歩く。
彼の正面のモニターが蠢き、霞が人の顔のようなものを形作る。
女のようだ。
その顔を見上げ、鯀は立ち止まり硬直した。
表情ははっきりとしないが、口元にあたる部分が、緩やかな弧を描き、静かな笑みを湛えているように見える。
『……くっ……なぜ……笑う……儂は……おそれぬ……其方……などに……』
鯀の身体が震え出し、呼応して<天仙娘娘>の船体も揺さぶられる。
揺れに即座に反応したのは、明明だ。鷲掴みにしたPSI-Linkインターフェースモジュールに、溢れ出る情動を叩き込む。
「お前なんかにぃいいい!」
<天仙娘娘>の両舷上部に赤い稲光が迸り、エネルギーストリームが形成されていく。
「<天仙娘娘>、PSI波動スプレッド発振器に高エネルギー反応!」
<アマテラス>の皆は、<天仙娘娘>を捉えた正面モニターに身を乗り出す。こちらへの攻撃意志は、明らかだ。
「やめろ! 明明!」直人は叫ぶ。だが、その声が届くはずもない。
「接続作業中断! 全速離脱!」カミラは即断した。
「チッ!」ティムは押し倒していた、操縦桿を一気に引き戻す。共工の頭部から上昇、離脱する<アマテラス>に向かって、<天仙娘娘>は、収束させたエネルギーの矢を射掛け始める。
回避行動をとる<アマテラス>は、数弾かわすも、一発が船体下部を掠めた。衝撃がブリッジを襲い、警報が鳴り響く。
『いぃっったぁあああああ‼︎』警報に混ざって、亜夢の悲鳴がとぶ。
「亜夢‼︎」直人が振り返り見ると、亜夢のフォログラムは、バランスを崩した体勢で、アムネリアに支えられ、両手を後ろに回し、尻を撫でている。
「左舷機関外殻、被弾!」「ダメージコントロール!」
アランは即対応し、被弾個所に、即座にPSIバリア、およびシールドの保護強化処置を施す。
『あいつ! 亜夢のお尻叩いたぁ‼︎ もう‼︎ なおと、あいつ、やっつけてぇ‼︎』
直人と視線が重なった亜夢は、ブリッジ後方モニターに映り込む<天仙娘娘>を指差しながら喚く。彼女のフォログラム周辺に広がるオーラは、俄然、闘志に燃え上がっていた。
呆れたような表情のアムネリアが、その隣で小さく首を振っている。
「……」直人は、目を細めて亜夢を一時見つめると、無言のまま前に向き直った。
『ねぇ、なおとぉ‼︎』
「うっさいよ、亜夢! 黙って! まだ撃ってくるよ!」棘を隠さず、サニが叫ぶ。
「デコイ、一番から八番、全て装填! 反転しつつ、射出。攻撃を散らしながら、再度接近する!」「了解!」
「コースターン! ナオ、亜夢のケツの仇、とりにいくぞ!」舵を切るティムの口元は、ニヤけた笑いを見せている。
「なんだよ……それ」直人は、バカバカしくなっていく気持ちを発散するように、デコイの射出を始めた。
共工の前方で反転し終えた<アマテラス>は、先発するデコイを盾にしながら、再び<天仙娘娘>へのアプローチを試みる。
『……暗闇が、あの船を飲み込んでいる……娃の想いも……まだ届かぬ……』アムネリアは、静かに呟く。
「くっ!」カミラは、共工を作る暗雲の中に見え隠れする<天仙娘娘>を睨め付ける。
「<天仙>第二波発射態勢!」「構うな! デコイに紛れて近づく!」
デコイ群は、ランダムな動きを見せながら<天仙娘娘>の周囲を掠め翻弄する。その間に<アマテラス>は、デコイと似た動きをとりながら、<天仙娘娘>との距離を狭めてゆく。
「チッ目眩しか⁉︎ そんなもの!」
<天仙娘娘>の全波動スプレッド発振器が発光し、赤く光る繭玉状のエネルギー膜を形成する。
「全周PSI波動スプレッドか‼︎」アランが叫んだと同時に、エネルギー膜は弾け飛び、先行していたデコイ群は、一瞬にして光の球体に変わり、PSI情報素子へと還元されて消えてゆく。
デコイを失い、丸裸の<アマテラス>に、明明は、立て続けに照準を向ける。
「<天仙>第三波準備! 上部砲台にエネルギーを集中している模様!」「マジかよ! 本気で俺たちを殺る気かぁ⁉︎」
すでに二度目のアプローチ体勢をとる<アマテラス>は、今発砲を許せば、直撃は免れないだろう。
「ナオ! こちらもPSIブラスターを!」「えっ⁉︎ で、でも!」
「<天仙>にもPSIバリアはある! 一、二発で沈みはしない!」「りょ、了解!」
「よぉし! ナオ! キツめの目覚まし、かましてやれ!」ティムは嬉々として焚きつける。
「正面! 共工、及び<天仙>、突っ込んで来ます!」レーダー盤を睨みながらサニが叫ぶ。
「一時方向へ針路修正! すれ違い様に仕掛ける!」
『なおと! がんばって!』ワクワクと言いたげな炎のオーラが、亜夢を取り囲んで舞い踊る。対して、アムネリアは目を閉じ、自分の役割に備える。
「PSIパルス収束データ補正! PSIブラスターへ入力、いいぞ、ナオ!」「PSIブラスター全門、起動!」アランの合図で、変性意識深く集中を高めた直人は、PSIブラスターに自らの意志を落とし込む。
<アマテラス>の六門のブラスターが咆哮し、両舷上部に青白いエネルギーの気流を生み出す。
「‼︎ ……ガチんこ上等! ……な、なおと……お、お前なんかにぃいい‼︎」<天仙娘娘>のPSI-Linkシステムを通して、流れ込む気配の中に"直人"を感じ取った明明は、闘争心を剥き出しにして、大きく左に逸れていく、火の玉に見えている<アマテラス>への照準を絞り込む。
龍体を纏う<天仙娘娘>と、鳳凰の翼をはためかせる<アマテラス>——両者がちょうど、並んだその時。
「落ちろぉおおおお‼︎」
「てぇ!」「PSIブラスター、発射‼︎」
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