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第3章 死者の都
継承 3
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ナギワは直人の背後に、数多の魂の影を見る。
それを呑み込む圧倒的な存在が、まるで全ての死を一身に引き受けているかの様だ……だが不思議と恐怖はない……全ての穢れを洗い流す存在がそこに居る。
……想い出して!貴女の願い、貴女の使命を!……
直人と叫びに、ナギワの瞳を覆い隠していた青緑の光が薄らぐ。
……私の……願い…………継なぐ……
……!?……嗚呼、母様!!……
ナギワの手から黒曜石の刃が溢れ落ちると同時に、半身を覆っていた水場が、徐々に何処かへ消えてゆく。
……そう……私は……私の願いは………………
水場が引き、ナギワの足元が露わになりかけたその時。
……ならぬ……逃げ……ては……ならぬ……逃げた……い……逃がさ……ん……逃げ……て……逃げ……たら……逃げ……ら……れ……ぬ……
翡翠の大岩から溢れる妖光が、染み出す影を作り、蛇の様な形を取って、ナギワの足首に巻きついた。
「じ、次元深度に感!!波動収束フィールド全域ごと引きづられています!!LV4突破、LV4.2……4.5!!」焦りを顕にサニが叫ぶ。
<アマテラス>ブリッジに警報が鳴り響く。
「直人!!早くPSI波動砲を!!」東がモニター越しに目を血走らせる。
「ナオ!」「センパイ!」
「急いでちょうだい……」
波動収束フィールドごと、高次元へと飲み込まんとする力に抗う術は無い。ただただ祈らんばかりに、直人のPSI波動砲発射を待つ。
……逃げ……たい……逃げ……よう……逃げ……ては……逃がさん……逃げられ……ない……
延々と呪文のように繰り返される不気味な呟きが、直人の腹の底でモゾモゾと蠢いているかのようだ。
……そう……嗚呼、ならぬ……
…………私は……罪人……
その声が繰り返される度、ナギワは身を捩らせ、苦悶する。
……赦されぬ……逃れてはならぬ……
…………この罪から……この穢れからぁああぁ!!……大珠よ……嗚呼、大珠よ!!……お赦しくだされ……私を導きくだされぇえ!!……
翡翠の大岩が形を変えていく。ちょうど、戸愚呂を巻いた青緑に光る蛇のような雲……あの『レギオン』とそっくりだ。
…………ナギワ姫を……こんなにしたのも…………
……この街の……人たちを苦しませ続けているのも……
…………全て、"お前"なのか!?………
直人は、呼吸を整えると再度、PSI波動砲の照準を絞りこんでいく。
『……逃げ……なら……ぬ…………逃が……さん……逃げ……たい……逃げ……る……な……』
直人が感じ取っていた延々と繰り返される呟きが、<アマテラス>ブリッジにも音声変換されて現れてくる。
「違う!逃げなんかじゃない……お前は、ただの呪いだ!!」
「そんな呪いは!!」
直人の左手に包まれた発射装置付属のPSI-Linkモジュールが俄に、青白く発光する。
「オレが断つ!!」
連動して、アランが監視する波動共振フィールドの同調率が急激に回復していく。
「船首共振フィールド形成、同調率80、90、100!」
船首共振フィールドが形成されるのと同期して、特異点の中央が、急速に一つの塊に収束し始めていた。
「出た!!特異点中央、収束強反応!!『レギオン』求心部と推定!!センパイ、やっちゃって!!」
ナギワを形作っている部位の腹のあたりが波動共振フィールドと共鳴するかのように振動し、直人が心象ターゲティングで捕捉していた翡翠の大岩が浮かび上がる。青緑の岩模様は、黒々と変色し、首をもたげ、あるいは這いずり廻るヘビのような妖気を放っていた。
「PSI波動砲、最終セーフティー解除!発射10秒前!!対ショック防御!」
<アマテラス>の船首に、稲光を発する光球が、膨れ上がる。
「9……8‥…7……6……」
『……逃げ……なら……ぬ…………逃が……さん……逃げ……たい……逃げ……る……な……』
呪いの呟きは、まだ続いている。ターゲットとの強が深まるたびに、「呪い」もまた、直人の心に深く染み込んでくる。
ナギワは、狂ったように身を振り乱し、直人を縛る髪の束縛を強めていった。
……なぜ……お前……ばかり……
…………償え……死んで……償え…………
……お前のせいで……
…………人……殺し………
……逃が……れる……な……
……逃れ……ては……ならぬ……
ターゲットとの同調が深まるほど、『呪い』は、直人の"原罪"に働きかけてくる。直人の呼吸は乱され、その度にPSI波動砲の照準が狂う。
「うっ!……座標……修正!上下角、2」
直人はなんとか抗い、外れた照準を何度も引き戻す。
「5……4……3……2……」
……お前は……人殺し……
……父を殺したのも……お前……
「……違う……父さんは……オレを生かしてくれた……」
「父さんだけじゃない……オレは……皆に生かしてもらってる……」
<イワクラ>のデッキで静かな微笑みを投げかけてくれた、藤川の眼差し……
窮地から自分の意識を引っ張り上げようと奮闘していたサニの呼び声……共に闘う仲間達……
大珠の実から沈みゆく意識を解き放ってくれた亜夢の生命の炎……
そして、今こうして自分と共にあり、<アマテラス>と一体となって力を貸している『アムネリア』……
彼らの姿が、想いが胸の裡を駆け巡る。
「だから……オレは、まだ……死ねない!!」
……!?……
身を振り乱していたナギワが、一瞬、我に返ったかのように動きを止めた。
直人の眼が見開かれ、ターゲットスコープの中央に、目標の翡翠巨岩を捉える。その中心に、穢れを知らない、翡翠輝石の煌めきが浮かび上がるのを、直人は逃さない。
「PSI波動砲……発射ぁああ!!」
それを呑み込む圧倒的な存在が、まるで全ての死を一身に引き受けているかの様だ……だが不思議と恐怖はない……全ての穢れを洗い流す存在がそこに居る。
……想い出して!貴女の願い、貴女の使命を!……
直人と叫びに、ナギワの瞳を覆い隠していた青緑の光が薄らぐ。
……私の……願い…………継なぐ……
……!?……嗚呼、母様!!……
ナギワの手から黒曜石の刃が溢れ落ちると同時に、半身を覆っていた水場が、徐々に何処かへ消えてゆく。
……そう……私は……私の願いは………………
水場が引き、ナギワの足元が露わになりかけたその時。
……ならぬ……逃げ……ては……ならぬ……逃げた……い……逃がさ……ん……逃げ……て……逃げ……たら……逃げ……ら……れ……ぬ……
翡翠の大岩から溢れる妖光が、染み出す影を作り、蛇の様な形を取って、ナギワの足首に巻きついた。
「じ、次元深度に感!!波動収束フィールド全域ごと引きづられています!!LV4突破、LV4.2……4.5!!」焦りを顕にサニが叫ぶ。
<アマテラス>ブリッジに警報が鳴り響く。
「直人!!早くPSI波動砲を!!」東がモニター越しに目を血走らせる。
「ナオ!」「センパイ!」
「急いでちょうだい……」
波動収束フィールドごと、高次元へと飲み込まんとする力に抗う術は無い。ただただ祈らんばかりに、直人のPSI波動砲発射を待つ。
……逃げ……たい……逃げ……よう……逃げ……ては……逃がさん……逃げられ……ない……
延々と呪文のように繰り返される不気味な呟きが、直人の腹の底でモゾモゾと蠢いているかのようだ。
……そう……嗚呼、ならぬ……
…………私は……罪人……
その声が繰り返される度、ナギワは身を捩らせ、苦悶する。
……赦されぬ……逃れてはならぬ……
…………この罪から……この穢れからぁああぁ!!……大珠よ……嗚呼、大珠よ!!……お赦しくだされ……私を導きくだされぇえ!!……
翡翠の大岩が形を変えていく。ちょうど、戸愚呂を巻いた青緑に光る蛇のような雲……あの『レギオン』とそっくりだ。
…………ナギワ姫を……こんなにしたのも…………
……この街の……人たちを苦しませ続けているのも……
…………全て、"お前"なのか!?………
直人は、呼吸を整えると再度、PSI波動砲の照準を絞りこんでいく。
『……逃げ……なら……ぬ…………逃が……さん……逃げ……たい……逃げ……る……な……』
直人が感じ取っていた延々と繰り返される呟きが、<アマテラス>ブリッジにも音声変換されて現れてくる。
「違う!逃げなんかじゃない……お前は、ただの呪いだ!!」
「そんな呪いは!!」
直人の左手に包まれた発射装置付属のPSI-Linkモジュールが俄に、青白く発光する。
「オレが断つ!!」
連動して、アランが監視する波動共振フィールドの同調率が急激に回復していく。
「船首共振フィールド形成、同調率80、90、100!」
船首共振フィールドが形成されるのと同期して、特異点の中央が、急速に一つの塊に収束し始めていた。
「出た!!特異点中央、収束強反応!!『レギオン』求心部と推定!!センパイ、やっちゃって!!」
ナギワを形作っている部位の腹のあたりが波動共振フィールドと共鳴するかのように振動し、直人が心象ターゲティングで捕捉していた翡翠の大岩が浮かび上がる。青緑の岩模様は、黒々と変色し、首をもたげ、あるいは這いずり廻るヘビのような妖気を放っていた。
「PSI波動砲、最終セーフティー解除!発射10秒前!!対ショック防御!」
<アマテラス>の船首に、稲光を発する光球が、膨れ上がる。
「9……8‥…7……6……」
『……逃げ……なら……ぬ…………逃が……さん……逃げ……たい……逃げ……る……な……』
呪いの呟きは、まだ続いている。ターゲットとの強が深まるたびに、「呪い」もまた、直人の心に深く染み込んでくる。
ナギワは、狂ったように身を振り乱し、直人を縛る髪の束縛を強めていった。
……なぜ……お前……ばかり……
…………償え……死んで……償え…………
……お前のせいで……
…………人……殺し………
……逃が……れる……な……
……逃れ……ては……ならぬ……
ターゲットとの同調が深まるほど、『呪い』は、直人の"原罪"に働きかけてくる。直人の呼吸は乱され、その度にPSI波動砲の照準が狂う。
「うっ!……座標……修正!上下角、2」
直人はなんとか抗い、外れた照準を何度も引き戻す。
「5……4……3……2……」
……お前は……人殺し……
……父を殺したのも……お前……
「……違う……父さんは……オレを生かしてくれた……」
「父さんだけじゃない……オレは……皆に生かしてもらってる……」
<イワクラ>のデッキで静かな微笑みを投げかけてくれた、藤川の眼差し……
窮地から自分の意識を引っ張り上げようと奮闘していたサニの呼び声……共に闘う仲間達……
大珠の実から沈みゆく意識を解き放ってくれた亜夢の生命の炎……
そして、今こうして自分と共にあり、<アマテラス>と一体となって力を貸している『アムネリア』……
彼らの姿が、想いが胸の裡を駆け巡る。
「だから……オレは、まだ……死ねない!!」
……!?……
身を振り乱していたナギワが、一瞬、我に返ったかのように動きを止めた。
直人の眼が見開かれ、ターゲットスコープの中央に、目標の翡翠巨岩を捉える。その中心に、穢れを知らない、翡翠輝石の煌めきが浮かび上がるのを、直人は逃さない。
「PSI波動砲……発射ぁああ!!」
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