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第3章 死者の都
起死回生 1
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……おお!……何と……
……異界船のあれだけの攻撃を、ものともせず……
……生者の魂一つ、飲み込まれた!……
……圧倒的ではないか、我が神は!!……
法師の亡霊らは、暗黒に渦巻く異空間、異界船を神へと捧げた"生贄の淵"の周辺を、悦にいったように高笑いしながら、鬼火となって舞う。
……うっ……くっ……林武よ、其方らの望みはなんだ?……あのような魔を呼び……何とするつもりか?……
戒めに抗いながら、神取は問う。
……望み……じゃと?……
鬼火の一つが、林武衆の長であった、小柄な老法師の姿を取り戻し、神取の目の前に浮かび上がる。
……たわけが……
老法師の右後ろには、神主風の初老の男が浮かび上がる。
……それは生者の理……この黄泉に望みなどありはせぬ……
生前は、仏門に帰依していた男らしい、坊主頭の男がさらにその後ろに現れる。
……我らは神に召されたのだ……この黄泉におわす神のご意志をただ成すのみ……
老翁の左手には、若い風貌の、老翁とほぼ同じ法衣を纏った男が並び立つ。
御所の中にあって、たとえ与えられた任務であっても、自ら信念と美学を持って使命を果たしてきた『林武衆』とは思えない言葉だ。
……うぬこそ……なぜそこまで生にしがみつく?……
……林武……其方ら……
神取も彼らには一目於いていた。それが迷いとなっていたが、もはや生き延びるためには戦うほかない。
……良かろう……ならば其方らの惑いし魂、鎮めるまで!……
亡霊らの顔が歪み出す。
……くくくっ………
………ふはははははは!!………
依然として彼らの戒めから抜け出せず、もがく事さえ儘ならない神子と神取。その神取が息巻いても滑稽でしかなかった。
……まあ、そう急くでない……
……あの異界船もじき、我らが神の供物となろう……
……その時こそ、我が神の復活の時……
……うぬらはそこでゆっくりと見物しているが良かろう……そのまま居れば、自ずと我等の仲間入りよ……
彼らの手にする金剛杵が、より一層の妙光に包まれていく。彼らの霊力と一体となっているようだ。それに反応するように、"みずち"の戒めが更に巻き付き、一方で、眼下の"生贄の淵"を作り出す力場が蠢きを見せる。
……"金生水"……
……やはり、この場は林武の……だが、どうする……
隣に吊るされた神子は、『みずち』が霊体に侵食され、同化が進みつつある。気丈なまでに意識を保っているようだが、限界に近い。
ここまで『みずち』の拘束が神子に働くのは、両者の親和性が高い故だろうと神取は見抜く。だからこそ、このままでは神子も危うい。
……この空間に、異常に満ちた水の気……これを……抑えぬ……こ、こと……には……
念体を形作る法力が徐々に削られている。いつまでも念体を異界に留めおけば、神取も現世で再び目を覚ますことはできない。かといって、戻ろうにも『みずち』の拘束が身動きを封じていた。
……何か……何か手立てがあるはず……考えろ……考えるのだ!……
リクライニング状態にしたシートに、直人は力なく横たわっている。腰を落としたサニは、垂れ下がる直人の腕を抱え上げ、彼のアームカバーに表示されたバイタルデータを確認していた。
「心拍数……呼吸……著しく低下……センパイ!」
応急キットのペンライトで瞳孔反応を確認するカミラも首を横に振る。
「そ……そんな!?」サニの顔が蒼ざめていく。持ち場を離れられないティムとアランも奥歯を噛み締める。
「……席に戻って。サニ」カミラは、さっと立ち上がると努めて冷徹に言い放った。
「えっ……で、でも!」「"戦闘"中よ。今はあの怪物を何とかする方が先決」
直人の元をなかなか離れようとしないサニに、カミラは静かに口を開いた。
「……ナオの心拍はまだある。おそらくPSI-Linkと深く繋がったまま、この空間のどこかに意識が遊離してしまったのよ……」「それじゃあ……あっ!」
何かに気づいたサニにカミラは頷いて答える。
「ナオを探せるのは貴女だけよ。もっともこの空間は『レギオン』の支配下……危険だけど……」
カミラが言い終える間に、サニは勢いよく立ち上がる。
「やります!ぜったい見つけてやるんだから!」
サニはすぐに自席へと戻ると、レーダーシステムをPSI-Linkダイレクト接続探索モードに切り替えた。
PSI-Linkモジュールに手をかけると、不快な吸引力が掌に伝わってくる。
「いい、危ないと思ったらすぐに引き返すのよ。貴女まで何処かへ行ってしまわないように」カミラは、釘を刺す。危険な捜索になるのは間違いない。
「気をつけろよ」ティムも声をかける。
「うん。……行ってきます!」
気持ちの悪い湿気に包まれる感覚に、嫌悪感を覚えながらも、サニは変性意識深くへと入り込んでいく。
……異界船のあれだけの攻撃を、ものともせず……
……生者の魂一つ、飲み込まれた!……
……圧倒的ではないか、我が神は!!……
法師の亡霊らは、暗黒に渦巻く異空間、異界船を神へと捧げた"生贄の淵"の周辺を、悦にいったように高笑いしながら、鬼火となって舞う。
……うっ……くっ……林武よ、其方らの望みはなんだ?……あのような魔を呼び……何とするつもりか?……
戒めに抗いながら、神取は問う。
……望み……じゃと?……
鬼火の一つが、林武衆の長であった、小柄な老法師の姿を取り戻し、神取の目の前に浮かび上がる。
……たわけが……
老法師の右後ろには、神主風の初老の男が浮かび上がる。
……それは生者の理……この黄泉に望みなどありはせぬ……
生前は、仏門に帰依していた男らしい、坊主頭の男がさらにその後ろに現れる。
……我らは神に召されたのだ……この黄泉におわす神のご意志をただ成すのみ……
老翁の左手には、若い風貌の、老翁とほぼ同じ法衣を纏った男が並び立つ。
御所の中にあって、たとえ与えられた任務であっても、自ら信念と美学を持って使命を果たしてきた『林武衆』とは思えない言葉だ。
……うぬこそ……なぜそこまで生にしがみつく?……
……林武……其方ら……
神取も彼らには一目於いていた。それが迷いとなっていたが、もはや生き延びるためには戦うほかない。
……良かろう……ならば其方らの惑いし魂、鎮めるまで!……
亡霊らの顔が歪み出す。
……くくくっ………
………ふはははははは!!………
依然として彼らの戒めから抜け出せず、もがく事さえ儘ならない神子と神取。その神取が息巻いても滑稽でしかなかった。
……まあ、そう急くでない……
……あの異界船もじき、我らが神の供物となろう……
……その時こそ、我が神の復活の時……
……うぬらはそこでゆっくりと見物しているが良かろう……そのまま居れば、自ずと我等の仲間入りよ……
彼らの手にする金剛杵が、より一層の妙光に包まれていく。彼らの霊力と一体となっているようだ。それに反応するように、"みずち"の戒めが更に巻き付き、一方で、眼下の"生贄の淵"を作り出す力場が蠢きを見せる。
……"金生水"……
……やはり、この場は林武の……だが、どうする……
隣に吊るされた神子は、『みずち』が霊体に侵食され、同化が進みつつある。気丈なまでに意識を保っているようだが、限界に近い。
ここまで『みずち』の拘束が神子に働くのは、両者の親和性が高い故だろうと神取は見抜く。だからこそ、このままでは神子も危うい。
……この空間に、異常に満ちた水の気……これを……抑えぬ……こ、こと……には……
念体を形作る法力が徐々に削られている。いつまでも念体を異界に留めおけば、神取も現世で再び目を覚ますことはできない。かといって、戻ろうにも『みずち』の拘束が身動きを封じていた。
……何か……何か手立てがあるはず……考えろ……考えるのだ!……
リクライニング状態にしたシートに、直人は力なく横たわっている。腰を落としたサニは、垂れ下がる直人の腕を抱え上げ、彼のアームカバーに表示されたバイタルデータを確認していた。
「心拍数……呼吸……著しく低下……センパイ!」
応急キットのペンライトで瞳孔反応を確認するカミラも首を横に振る。
「そ……そんな!?」サニの顔が蒼ざめていく。持ち場を離れられないティムとアランも奥歯を噛み締める。
「……席に戻って。サニ」カミラは、さっと立ち上がると努めて冷徹に言い放った。
「えっ……で、でも!」「"戦闘"中よ。今はあの怪物を何とかする方が先決」
直人の元をなかなか離れようとしないサニに、カミラは静かに口を開いた。
「……ナオの心拍はまだある。おそらくPSI-Linkと深く繋がったまま、この空間のどこかに意識が遊離してしまったのよ……」「それじゃあ……あっ!」
何かに気づいたサニにカミラは頷いて答える。
「ナオを探せるのは貴女だけよ。もっともこの空間は『レギオン』の支配下……危険だけど……」
カミラが言い終える間に、サニは勢いよく立ち上がる。
「やります!ぜったい見つけてやるんだから!」
サニはすぐに自席へと戻ると、レーダーシステムをPSI-Linkダイレクト接続探索モードに切り替えた。
PSI-Linkモジュールに手をかけると、不快な吸引力が掌に伝わってくる。
「いい、危ないと思ったらすぐに引き返すのよ。貴女まで何処かへ行ってしまわないように」カミラは、釘を刺す。危険な捜索になるのは間違いない。
「気をつけろよ」ティムも声をかける。
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