Heavens Gate

酸性元素

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終末編

REDO

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「やあ、ケイン氏。」
クレアは、いつもと変わらぬ様子で挨拶する。
「クレア……本当なのか。お前がナンバーズだってのは。」
「本当だよ?
1682年、1726年、1824年。この年代がわかるかい?
……これは全て、我々が生まれた歳のことだ。我々は度々名を変えて時代に潜伏し続けた。シンディ、マリィ、アナスタシア…色々と名前を変えたさ。
シュタイン氏はいわば、我々の0号機……人の原型を保てない不良品だった。だからこそ、人として生きることができなかった、と言うわけだね。そして、シャーロット氏を改造した国にでも適当にそれは渡された。彼女が起こした大爆発によって、0は無くなったかのように思われていた…だが、生き残っていたんだよ。
0は、死者の遺体を取り込んで人に変身する。彼は本来死産する予定だった。だが子宮に居た彼に0が乗り移って代わりに生きることとなった。…彼はレド.ケニーシュタインなどではない。自分を人と思い込んだ、人造人間の失敗作だったと言うわけだ。……と言う話は、既にドレイク氏から聴いているよね?」
「………」
周囲は沈黙を保ち続けていた。
「さて……ここからが話の根幹だ。これもドレイク氏からも聴いているかもしれないが……我々は0を監視する必要があった。それは何故か分かるかい?天界が乱れるからさ。
天界を利用するのが我々の計画だからね。
ああ…まず天界の仕組みについて話す必要があるか。
天界というのは、即ち自然界と一緒さ。一つの巨大なイレギュラーの出現により、容易に破壊されてしまう。はっきり言って、0の存在は未知数だった。魂の構造が違う可能性のある彼が死にでもしたら、せっかく調節した魂の規律が乱れて、それこそ計画がおじゃんだからね。
だから、詳細が分かるまで監視する必要があった。私はその監査役に遣わされた。彼が生前の記憶を持っているか、彼がどれほど人造人間の能力を使えるか、それをある程度測った。そして都合が悪い記憶は、私が任意で消した。」
「お前は……俺たちのことをどう思っていたんだ?」
ケインは、悲しげな表情で彼女に質問する。
「危険な存在だ、とは思っていたよ?現にこうして脱出してしまっているわけだからね。」
「………!」
彼は、何も答えられなかった。彼女に微塵も罪悪感がないことを悟ってしまったのだから。
「次は…魔族の正体について、だ。彼らは数百年前、突然現れた。単刀直入に言おう。…アレはね、人造人間の副産物さ。フラメル氏が産み出した、ね。」
「…………え。」
「そんな。」
周囲の魔族達がどよめき始める。
「その地に眠る悪魔の力を吸い取り、目覚めた人造人間の亜種…それこそが魔族だ。
人造人間には、ある程度こちらに従う力を持たせる必要があった。上のものに従属する魔族の習性とは、そこから生まれたものだよ。
そして、悪魔の名称に関しても、ソロモンの72柱以外の名がつく悪魔は、フラメル氏が生み出したもの。その力を取り込んだものがその名の魔族となる。
ドラリガント、と言う血筋が魔族には存在するが、彼らは我々人造人間の力をより濃く受け継いだ者だ。故に、人間の判定を受け、危険区域周辺の結界を抜けることが出来た。
そして、我々ナンバーズは、人と魔族の両方の性質を併せ持つ。我々には適応能力があってね…攻撃を受ければ受けるほど、その力を無効化できる。
そこのノーマン氏、君もその力を持っているはずさ。
……さて、ではフラメル氏は何をしようとしたのか、についてだね。彼は、魔族と人との争いを勃発させて天界を乱し、それを利用して天界の構造を作り変えようとしているんだよ。
天界を作り替え、そして人造人間達に魔族と人の魂が複合したものを憑依させる。そうする事で、他者を尊重し、自身の意見を持つことのできる新たな魂構造を生み出そうとしているのさ。」
「お前は…どうなんだ?それがいい事だと思っているのか?」
ドレイクの質問に、クレアは笑い始めた。
「はははははははは!やめてくれよドレイク氏!我々に意見などないだろう!!どうせ憑依対象になるだろうに!
まあでも、悪い話ではないさ。魂が定着し、新たな生命が降りるまでの間に数千年、数万年かかる。するとどうなるのか。死体達が化石へと変わっていく。近年魔法科学と同時に科学の発展が著しい。石油の枯渇問題もあるだろう。そうすると人類はどうなる?資源を使い古すだけになる。そう言った問題も、これは解決できるのさ。
だから、こうやって地表の全ての生命を一度全て滅ぼすのは悪くないと思うよ。」
「そんな事……素晴らしい訳ないだろう!自分が自分で無くなるなんて……それは殺しているのと同然だ。そりゃあ俺の理念に反する。」
ジハイドはクレアに向かって怒号を浴びせた。
「ふむ…なるほど、それが君の答えか。
安心した前、私は君たちを殺しはしない。既に準備は完了したからね。」
「……」
ドレイクは、光を放つ国土の方を見る。

「さて……準備はいいかい?」
「ええ…わかっていますよ。」
ニコラ.フラメルは、ヴェルサスの身体中に装置を取り付けると、そのスイッチを押した。
彼の体から魔力が放たれていく。

「…3日後、セリアムを中心として、植物を除いた生物の全滅を図る。止めてみた前、皆の衆。」
凄まじい衝撃波が辺りに伝わる。
「うおおおおお?!ケイン、入れ!」
放心状態のケインを連れ、ジハイドは船の中に入る。船は真横に傾き、乗り込んでいたもの達を転がらせる。
「では…さらばだ。」
クレアはそう言うと、その場から姿を消した。


ヤマトにて………
「おい…ケイン、ここに置いとくぞ。」
サスケは、ケインの閉じこもる部屋をノックし、食事を置いた。
「……お前が必要なんだ、ケイン。こんな事は言いたくないが、なんとかして立ち直って欲しい。」
そう言い残すと、サスケはその場を後にする。
「どうだった、あいつ。」
「ダメだね、あれは。完全に心が折られてる。むしろ平気でいるあんたがおかしい。」
「平気なわけないさ、いつも通り、平気なフリをしてるだけだ。強がりだよ。」
シャーロットは煙草を吹かす。
「ははっ!なんだそれ。」
サスケは、力無く笑った。

「………」
部屋の中、1人ケインは蹲っていた。
腹は減っているのに、食欲はない。何も、食べたくない。
何も………
そう言えば、レドの作った料理は美味かったな。でもあいつは、1人で勝手に死んでしまった。あいつは不幸な………
彼の死に際の顔を、思い出した。
彼は、笑顔だった。そうだ。あいつは満足して死んだんだ。
既に日は沈んでいる。深夜0時ごろだろう。
「………行かなきゃ。」
アイツは満足して死んだんだ。俺が勝手に罪悪感なんか感じちゃいけない。
やり直しだ。ここから俺の、やり直しだ。
ガチャリ、とドアを開ける。
「よ、ケイン。」
そんな彼を、ジハイドが出迎えた。
「あー。」
オーガスタスが、一つの銃を手渡した。
「これは……」
「あいつのだ。持っときな。
……着いてこい、お前に更に渡したいものがある。」
ケインは、ジハイドの後についていった。
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