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終末編
逆流
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「はあ…はあ……助かった。」
トラヴィスは瓦礫から引き摺り出される。
「今度はヘマするなよ、僕は場所に向かう。」
「わかってるよ……。」
ヴェルサスは彼に背を向けると、その場から帰る。
「どこだ……どこだぁぁぁぁ!」
トラヴィスは天に吼えた。
「はあ…はあ……!よし、Mr.ケビンの用意した船はあそこだ。民間人を避難させよう。」
「わかってます。では皆さん、避難を。」
アンとレナ、メリッサは、車に乗っていた民間人を避難させる。
「………さて、行ったか?」
「ああ、行ったな。」
アンナ、ジーク、メリッサは、後ろを向く。
すると、上空から大量の人造人間が降り注ぎ始めた。
「クソッタレ……!ふざけてやがるぜ、毎度毎度!」
「とにかくここを耐えきゃな……頼むぜ、婆さん。」
「テメェも大概歳行ってんじゃねえか。」
2人は拳を合わせる。
そして二手に分かれると、攻撃を開始した。
ジークが上へと人造人間を弾き飛ばし、それを撃ち落とす。その繰り返し。10万を超える数の人造人間は、凄まじい勢いで削り取られていく。
「……師匠、生きてください。」
アンは後ろを向かなかった。向いてしまうと、後悔してしまうから。故にただ、祈ることしかしない。
「ふぅ……あとはメリッサどもが連れてきた奴らくらい…かな?」
シャーロットは汗を拭う。数100万人もの避難民が既に船には乗っている。
「………なんだ?!」
シャーロットは目を見開いた。国の中央部分から、仄暗い光が放たれたのだ。その光は全土を覆い尽くし、大量の人造人間を降り注がせていく。
「これは……くそ!ここを離れるわけにもいかねえか…!」
シャーロットは目の前に現れた人造人間達を、自身の魔能力で薙ぎ倒していく。
「なんなんだ……なんなんだこりゃあ!」
先ほどの10倍。100万を超える数の人造人間。それが2人の前には広がっていた。ジークとアンナは息を呑んだ。これを、どうにかしなければいけないのか。
「おおおおおおおお!」
無我夢中だった。ひたすらに敵を倒し、ひたすらに血を浴びる。一体何分経ったか、何時間経ったのかもわからない。
ただ一つわかるのは、これだけやっても、半数も削り切ることができないと言う事実だった。
「くそ……くそ……!」
ジークは膝をつく。一体、どれほど倒せばいいのだ。
「ジーク……!畜生……!一体どれだけ同胞を殺させれば気が済むんだ!」
忘れたふりをしていた。忘れようとしていた。だが、変えようのない事実。かつて人間として共に暮らしていた、かつて魔族として共に暮らしていた者。それを殺さなければいけない。そんな事実が、彼らにひしひしと纏わりつく。
「気なんざすまねえよ?人間。」
何者かの声が、上から聞こえる。
上空から降り注いだそれは、周囲に突風を巻き起こした。
「まさか……こいつ!」
それは、先ほど爆発に巻き込まれた者……トラヴィスだった。
「ギャハハハハ!あの人間は無駄死にだったなあ!さっさとここで死にやがれ!」
「………アン。」
咄嗟にアンナから出た言葉は、それだった。
自身の弟子にして、自身の子供同然の存在。
「ああ!」
ジークはドン、と膝を叩き、己を奮い立たせる。
「行くぞ、婆さん。」
「……ああ。」
はっと気付かされた。そうだ、ここで曲げちゃいけない。曲げて仕舞えば、あの子が死ぬ。死なせるわけにはいかない。
「済まねえな、アン。老いぼれの時代はここで終わりみてえだ。」
「師匠?」
アンはつい、振り返ってしまった。なんだか嫌な予感がして、後悔してしまった。涙がつい、流れ出す。もう止まる事はなかった。
「ジークさん…」
「ジーク…アン…」
シャーロットとケインも、ひっそりと彼らの死を感じ取った。もう、戻ってこないであろう彼らを。
「馬鹿野郎……馬鹿野郎!」
その怒りを、シャーロットは人造人間にぶつける。約束じゃないか、共にいると。あいつがいたから、自分はここまで来れたのに。なのに…なのに………。
「う…あああああ!」
涙を流しながらも、戦う。それでも、戦うしかない。
「はあ…はあ……」
「うう……」
ジークとアンナはその場に倒れ込んだ。もはや体の一つも動かない。ハズだった。
それでも、確かに動いた。動かないはずの体が、確かに動いたのだ。
「おおおおおおおおお!」
アンナは弾丸を、ジークは拳を叩き込む。
当然、効くはずがない。効くはずがないが、それでも意味はあった。
「…………ああ。」
「そうか。」
「「この為に、生まれてきたんだなあ。」」
一介の必要な犠牲であったかもしれない。だが、そんな生き方も悪くないだろう。そんな終わりでも、よかった。2人の命は、そう言い残して潰えた。
「………」
涙を流すレナとアンを前にして、メリッサは帽子を深く被る。
「………ああ、風が強い。帽子が飛ばされてしまうよ。」
彼女の頬に、一筋の涙が伝った。
空に向けて、敬礼する。忘れはしない、忘れはしないだろう、彼らの名前、顔は。
そう言って、一同はヘリに乗り込んでいった。
トラヴィスは瓦礫から引き摺り出される。
「今度はヘマするなよ、僕は場所に向かう。」
「わかってるよ……。」
ヴェルサスは彼に背を向けると、その場から帰る。
「どこだ……どこだぁぁぁぁ!」
トラヴィスは天に吼えた。
「はあ…はあ……!よし、Mr.ケビンの用意した船はあそこだ。民間人を避難させよう。」
「わかってます。では皆さん、避難を。」
アンとレナ、メリッサは、車に乗っていた民間人を避難させる。
「………さて、行ったか?」
「ああ、行ったな。」
アンナ、ジーク、メリッサは、後ろを向く。
すると、上空から大量の人造人間が降り注ぎ始めた。
「クソッタレ……!ふざけてやがるぜ、毎度毎度!」
「とにかくここを耐えきゃな……頼むぜ、婆さん。」
「テメェも大概歳行ってんじゃねえか。」
2人は拳を合わせる。
そして二手に分かれると、攻撃を開始した。
ジークが上へと人造人間を弾き飛ばし、それを撃ち落とす。その繰り返し。10万を超える数の人造人間は、凄まじい勢いで削り取られていく。
「……師匠、生きてください。」
アンは後ろを向かなかった。向いてしまうと、後悔してしまうから。故にただ、祈ることしかしない。
「ふぅ……あとはメリッサどもが連れてきた奴らくらい…かな?」
シャーロットは汗を拭う。数100万人もの避難民が既に船には乗っている。
「………なんだ?!」
シャーロットは目を見開いた。国の中央部分から、仄暗い光が放たれたのだ。その光は全土を覆い尽くし、大量の人造人間を降り注がせていく。
「これは……くそ!ここを離れるわけにもいかねえか…!」
シャーロットは目の前に現れた人造人間達を、自身の魔能力で薙ぎ倒していく。
「なんなんだ……なんなんだこりゃあ!」
先ほどの10倍。100万を超える数の人造人間。それが2人の前には広がっていた。ジークとアンナは息を呑んだ。これを、どうにかしなければいけないのか。
「おおおおおおおお!」
無我夢中だった。ひたすらに敵を倒し、ひたすらに血を浴びる。一体何分経ったか、何時間経ったのかもわからない。
ただ一つわかるのは、これだけやっても、半数も削り切ることができないと言う事実だった。
「くそ……くそ……!」
ジークは膝をつく。一体、どれほど倒せばいいのだ。
「ジーク……!畜生……!一体どれだけ同胞を殺させれば気が済むんだ!」
忘れたふりをしていた。忘れようとしていた。だが、変えようのない事実。かつて人間として共に暮らしていた、かつて魔族として共に暮らしていた者。それを殺さなければいけない。そんな事実が、彼らにひしひしと纏わりつく。
「気なんざすまねえよ?人間。」
何者かの声が、上から聞こえる。
上空から降り注いだそれは、周囲に突風を巻き起こした。
「まさか……こいつ!」
それは、先ほど爆発に巻き込まれた者……トラヴィスだった。
「ギャハハハハ!あの人間は無駄死にだったなあ!さっさとここで死にやがれ!」
「………アン。」
咄嗟にアンナから出た言葉は、それだった。
自身の弟子にして、自身の子供同然の存在。
「ああ!」
ジークはドン、と膝を叩き、己を奮い立たせる。
「行くぞ、婆さん。」
「……ああ。」
はっと気付かされた。そうだ、ここで曲げちゃいけない。曲げて仕舞えば、あの子が死ぬ。死なせるわけにはいかない。
「済まねえな、アン。老いぼれの時代はここで終わりみてえだ。」
「師匠?」
アンはつい、振り返ってしまった。なんだか嫌な予感がして、後悔してしまった。涙がつい、流れ出す。もう止まる事はなかった。
「ジークさん…」
「ジーク…アン…」
シャーロットとケインも、ひっそりと彼らの死を感じ取った。もう、戻ってこないであろう彼らを。
「馬鹿野郎……馬鹿野郎!」
その怒りを、シャーロットは人造人間にぶつける。約束じゃないか、共にいると。あいつがいたから、自分はここまで来れたのに。なのに…なのに………。
「う…あああああ!」
涙を流しながらも、戦う。それでも、戦うしかない。
「はあ…はあ……」
「うう……」
ジークとアンナはその場に倒れ込んだ。もはや体の一つも動かない。ハズだった。
それでも、確かに動いた。動かないはずの体が、確かに動いたのだ。
「おおおおおおおおお!」
アンナは弾丸を、ジークは拳を叩き込む。
当然、効くはずがない。効くはずがないが、それでも意味はあった。
「…………ああ。」
「そうか。」
「「この為に、生まれてきたんだなあ。」」
一介の必要な犠牲であったかもしれない。だが、そんな生き方も悪くないだろう。そんな終わりでも、よかった。2人の命は、そう言い残して潰えた。
「………」
涙を流すレナとアンを前にして、メリッサは帽子を深く被る。
「………ああ、風が強い。帽子が飛ばされてしまうよ。」
彼女の頬に、一筋の涙が伝った。
空に向けて、敬礼する。忘れはしない、忘れはしないだろう、彼らの名前、顔は。
そう言って、一同はヘリに乗り込んでいった。
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