Heavens Gate

酸性元素

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終末編

世の摂理

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「はあ…はあ…はあ…!」
ノーマンは走っていた。早く、早く魔族たちを避難させなければ。
「はあ…おい!早く!こっちに避難するんだ!」
生き残った魔族に向かって、張り裂けんばかりの声で彼は叫ぶ。
「何……?人間?人間が何故ここに?」
「騙されるな!どうせ俺たちを殺す気だ!」
魔族らは、ノーマン達に石を投げる。
彼の頭にそれは命中し、そこから一筋の血が垂れる。
「先輩!」
ヘルガは、彼の頭にハンカチを当てる。
「大丈夫……わかってくれるはず。」
ノーマンは帽子を脱いだ。
「僕は魔族と人間のハーフだ。人でも魔族でもない。でも、だからこそ、分かり合えると信じている。」
彼は魔族らに向かって叫び続けた。しかし、思惑通りにはいかない。
「だからなんだというんだ!お前が人間の軍服を着ているのは知っている!信じられるものか!」
「だから……危ないんだ!ここは……」
「俺に任せろ。」
彼の肩を、何者かがポンと叩く。
見ると、それはアダムだった。
「アダム……殺してきたのか。」
「ああ……どうか聞いてくれ!彼の言っている事は本当だ!」
「アダム……あのアダムだ!そうだ、あそこだよな?行こう!」
アダムが呼びかけた途端、魔族たちは手のひらを返し、避難所へと走り始めた。
「………確信したよ。魔族ってのはこうも気持ち悪い生き物なんだな。
……俺の守ってきた物って……なんだったんだ?」
「ああ、大丈夫だ。あんたが守った意味はあった。」
ノーマンは、アダムの肩を叩き返した。

「さあ……行こう。」
ノーマン達はは、魔族達の乗り込んだ車へと向かった。
そして全員が乗り込んだ後、車は発進を始める。
「なんで人間なんかがこの車に……」
「くそ……ここで殺してしまおうか…」
共に乗り込んでいたシーラに、冷たい視線が向けられる。
「………?なんだ、あれ。」
ノーマンは遠くを指差す。そこには、何かの人影があった。
「……やばい、あれは。構えろ!ノーマン!」
「ヘルガちゃん、運転頼んだよ。」
ノーマンとアダムは、車から降りる。その瞬間、その人影が彼らに襲い掛かった。
「…速い!」
アダムは魔能力でそれを弾く。その瞬間、凄まじい電撃が周囲には謀った。
2人は着地し、その正体を見定める。
それが判明し、ノーマンはその場に放心した。
「劉……龍…?」
かつての部下。かつての自分の嘘の犠牲者。その少年が!そこには立っていたのだ。
「ひさしぶりです、ノーマンさん。」
いつもと変わらぬ笑顔で、彼は言った。
「あの人……もしかして……」
シーラは車の窓から彼を見る。まだ親がいた頃、ニュースで取り上げられていた。
「知っているのか?」
「うん……確かたくさんの人を救って…それで大量殺人したとか……」
「大量殺人……?!うわぁ!」
車は、突如巻き起こった衝撃により、車は横転する。
「何を……する気だ?」
「何って……全員救うんです。ここで貴方方に魔族を救われたら、色々手間がかかって面倒だ。さっさとやった方がいい。」
ノーマンの質問に、自分は至って正常だと言うような顔で答える。
「お前……奴らの側についたのか!」
「ええ…そうですよ。別にナンバーズでもなんでもないですがね……」
「俺は……お前の葛藤に表面上でしか触れられなかった!俺がお前に向き合わなかったがために…!だから今度こそお前を理解したい!」
「ああ、良いんですよ、そんな話。もうどうでも良いんです。全部解決するから。」
最早ノーマンの訴えなど通じない。完全に狂ってしまっている状態だった。
「俺たちは…お前を殺さなきゃいけないのか?そこははっきりしたい。」
アダムが2人の間に割って入る。
「ああ、黙って殺されるなら、ね。大丈夫、魔族も救って見せますから!」
龍は大きく手を広げ、高らかに言い放った。
「辞めないか…?お前と俺は戦いたくない。」
ノーマンがそう言った瞬間、龍の顔つきが険しいものへと変わる。
「じゃあどうすりゃ良かったんだよ?
どうすりゃ良かったってんだよ!!!
どれほど助けたって!どれほど訴えたって!奴らは手のひらを返しやがる!表面上でしか物を見ない!!
そして事が終わるとどうだ?すぐにそいつの事なんか忘れやがる!!同じさ!!人も魔族も同じくクズばかりだ!汚れてる!狂ってる!!こんな生き方間違っている!!!
だから正すんだ……絶対に……僕が、僕らが正して見せる。」
涙を流しながら、龍は武器を構える。
「そうか……わかった。戦うしか、ないんだな?なら……死んでくれ。」
ノーマンは彼に応えるように武器を生成する。
「こっちのセリフだ、偽善者!!」
「どれほど汚れていようと…守るしかない。それが俺たちだ。」
アダムはノーマンの後方で魔力を構える。
2対1、一進一退の攻防が、今開始された。
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