Heavens Gate

酸性元素

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地獄編

秩序、回天③

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「おいシャーロット!まだか?!」
『クソッタレ………最悪だ。』
「?!」
アンナはシャーロットの震えた声に困惑する。
「何があるんだ!そこに!一体何があるってんだ!」
シャーロットの視界には、大量の人型が広がっていた。
「アレは1体残らず倒したと聞いたのに…取り逃がした?いや、だとしたらもっと被害が広がっているはず‥まさかこれを狙って増殖を抑制していたのか?」
「おいレド、こいつを逃したらどうなる?」
「間違いなく避難所に行きます。そうなるとスタンフォードさんの今までの尽力が無駄になります。」
「クソ…!やるしかねえのか!」

「どうすれば……」
アンナは後ろに視線を移す。
すると、とある異変に気がついた。
「おい、あのガキは?」
「え?…あ!オーガスタスがいない。」
デボラは周囲を見渡す。
「まさか…」

「あああああ!」
人型は何者かによって吹き飛ばされていく。
「あれは……!」
「おい、誰だあのガキ。」
「大丈夫です。彼は味方ですから。」
「あー!」
オーガスタスは塔を指差す。
「ありがとうございます!」
「うー!」
彼は人型の方へと向き直ると、攻撃を再開した。

「シャーロットさん!ここから吹き飛ばせますか?!」
「いや…塔にもここの周辺にも防壁が貼られている。それも3重にな。巻き込まないように慎重に撃ったらまず間違いなく逸らされる。破壊可能な位置にまで移動した方がはやい。」
「クソ…今までの対策はこのためか…」
レドは拳を強く握った。

「どうする…!どうする…悪魔の対処を見逃す方がもっとまずい事になる…だが…だからと言って奴を見逃すわけには…」
アンナが葛藤する中、突如何者かからの無線機が繋がる。
『こちらが受け持とう。』
「?!」
その声は間違いなく、クレア.アインベルツの声であった。


「君達は…死んでいなかったのか。」
ベクターは椅子から降りる。
「良いのかい?椅子から降りては魔力も送れないだろう。」
「どうせ壊すのだろう?」
「君達のこの余裕…そして塔が破壊される間際でありながらこの落ち着きよう……明らかにおかしいでしょ?」
「何が言いたいんだい?」
「シュタイン氏、魔力の吸収場所は別にある。」
『別…?』
「ああ、魔力感知機で吸収源を調べさせてもらった。これは周囲の魔力を吸収する場所ではない、
恐らく送るのは半分以上完了している。
もはや、ここと受け取る側の両方を破壊しなければ止められない。
二手に別れてくれるかい?」
「なるほど…そんなこともできるのか。」
「悪いが私の作り出したものは特注生でねえ、本来のものとは精度が段違いなんだよ。それも再現不可能なレベルで。」
「シュタイン氏、君にその場所を今から提示する。向かってくれた前。残っているのは君だけだ。」

「了解しました。シャーロットさん、あとは頼みます。」
「行けるのか?」
「ええ、やってみせます。」
レドは指定された場所へ向かっていった。


「さて…シャーロット氏が来るまで…止めさせてもらおうじゃないか。」
「ふむ…だが、君1人でどうする?聞くと君は戦闘要員では無いと聞く。」
「私1人だと本当に思っているのかい?」
「そうか…やはりな。アイルアドラくん!」
アイルアドラに、人影が1人飛びかかった。
「…!」
「はははは!初っ端から殺される私じゃあ無いぞ!」
花織はアイルアドラの右腕を切り落とすと、続け様に首元に刀を振り上げる。
「失笑!」
アイルアドラは即座に右手を再生させると、両腕で刀をガードする。
「はははは!そうこなくっちゃ!」
「さて…やろうか。」
「なるほど…そう言うわけか。」
「…?」
「聞いたことがあるかい?この世の魂は転生している、と言う話を。
魂は自然界と同じように変化し、時には固まり、時には霧散する。
そうして練り合わされたもの同士が次の器へと移っていく。
その場所を天界と呼ぶらしい。」
「何の話をしている?」
「ふふふ…魔殲に魔導師が目覚める仕組みは、一説では絶望した事により魂が死に近づき、その天界に接続するからだとか。」
「………」
「人にはそこに接続しない為のストッパーがある。
それを
Heavens ヘブンズ.gateゲートと呼ぶらしい。
それがどうかは知らないが、少なくとも天界は存在する。
私がやろうとしているのはそういうことだ。
死者の魂…ここではテロで殺された民間人だね。それが放った魔力を使用し、天界から魂を引き摺り出すことで死者を甦らせる。」
「そうか…君が大変なカルト宗教家と言うことはわかった。死ね。」
クレアの瞳に灯りが灯る。
「カルトかどうかは試してみるといい!」
ベクターは右腕に注射を打ち、魔力を展開した。
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