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魔人衝突編
1726②
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「はい早く食べちゃって!さっさと片付けたいから!」
食堂に行くと、まさに『食堂のおばちゃん』とでも言うような職員が料理をケインの前に突き出してきた。
「おかわりってできませんかね?」
「この状況でそれを言う奴は初めてだよ!」
「いえ、すごく美味しそうだなーと。」
「あら…そう?まあ良いよ?」
彼女は表情筋を緩めてそう言った。
「やはり食堂のおばちゃんは褒めに弱いな。」
不敵な笑みを浮かべてケインはトレーを運ぶ。
「ねーおばちゃんダメ?」
「別にアンタは訓練だので遅れたわけじゃないでしょうが!」
「下着作りも訓練ですよコンチクショウ!ダメですかアンジェラおばさま!」
「終わり!」
アンジェラは食堂のシャッターを閉めてしまった。
「食堂のおばちゃんは甘えに強い…。」
おかわりができる可能性を逃し、ケインは残念そうに細々と呟いた。
「恵んで…くれない?」
「ダメです!」
物欲しそうに隣に座るアンからケインは遠ざかる。
「末代まで呪ってやるう!」
「推しが結婚したら謎にキレてそう。」
「絶妙に傷つく偏見やめて?!」
「静まり返った食堂でよくそんなに大声で話せるねえ…。」
サリサは肘をつきながらスプーンで食事を口に運んでそう呟やく。
「あ、サリサちゃん。」
「アンー…疲れたー。」
サリサはスプーンから手を放し、机に顔を押し付ける。
「なんか…さっきまでとキャラが違うような…。」
「まさか…」
「ヒック」
サリサが横隔膜を痙攣させる。所謂しゃっくりである。
「サリサちゃん…酒飲んでない?」
「別に飲んでないし…単に泣いてるだけだし…ねーケイン君…青春してっかあ?!アタシ今年で26だからさあ…もう20代後半だからさあ…青春とか言ってらんないよ…。」
「俺も言うて23ですよ。青春とか古いし……そもそもそういうのはよく分からないっすよ。」
「へー…でもイケメンじゃん君。モテそうじゃん。……アタシかわいいって思う?タイプじゃないって言ってたけど…」
サリサはケインに顔を近づける。
「ちょっ…待って…!あの!助け…」
「眼福…眼福というほかありませぬ。」
アンは合唱していた。
「…コーフンしたね。ほら、色々正直な反応。」
そう言うとサリサはケインの下半身に視線を向ける。
「あーいや…これはその…」
「やっぱドキドキした?ねえねえ…」
「ご馳走様でした!」
ケインはトレーを手にすると、逃げるようにその場を去っていった。
「…チェッ、結構タイプだったんだけどなあ。」
「積極的すぎるからじゃない?」
「それが問題だったらアタシはなんでこうなってんだっての。」
アンに悪態をつくように、サリサは頬杖をつきながらそう言った。
ーーーーーー
「ふうー…」
ケインはたばこの煙を口に含む。特別多く吸うわけではない。シャーロットが吸っていたからではない。ただ満たされないだけ。満たされないがために満たされない行為をしている。ただそれだけ。
「…先輩。」
「レドか。……お前上手くやってるか?」
「戦術構築に関しての心得は殆ど無いのでメリッサ少将の話を聞くだけになっていましたね。」
「そっか、お前は司令部か。傀儡使いとさえ呼ばれてる冷酷無慈悲なメリッサ少将…実際どうだった?」
「話はまあ…聞いている分には面白かったですが……人と話している感じはしなかったですね。っていうかそんな名前ついてるんですか?」
「ああ、俺が資格取った5年前の時点で有名だぞ?当時は彼女が入って1、2年だったが…とある無知性魔族の集団襲撃を防ぐために兵数名を壁にしたとか…」
「……まあ他にないなら仕方ないんじゃないですか?」
「あっけらかんと言えるのはお前の長所だな。」
「……今日倒れたそうですね。何かあったんですか?」
「まあ訓練がキツくて…」
「そういう事じゃないです。」
「……少し思い出したんだよ、色々と。何というか…どれだけ突き詰めても自分の信じる物が実際より歪んでいるってのはあるだろ?」
「ええ、ありますね。僕なんか殆ど全部がそうです。……分かってますよ、貴方の言いたいことは。…僕は最初は貴方は自己犠牲的な正義の持ち主だと思ってました。でも実際は違う。あなたのそれは自己犠牲でもなければ正義でもない。……掃除をした時出てきたテディベア、ありましたよね?本当に他人を大事に思ってるなら、生活能力が無いにしろ管理はする筈だ。でも貴方はそれがない。貰い物をあんなにするのを何回も繰り返してる。」
「……まあそうだな。」
「実際欲求不満ですって顔してますよ今。…女性との関係を断たれて色々と…」
「だから俺は別に複数の女ハシゴしてねえっての!」
「その割にバイト無い日も夜に外出てるじゃないですか。」
「あー…あれは筋トレだよ。屋上出て筋トレしてんの。」
「怖っ…不気味にも程がありますよ…闇夜に紛れて筋トレする人影とか。」
「ほっとけこの野郎。……幾ら鍛えてもほっそいまんまだがな。……結局昔と何も変わらない。俺は大した人間じゃないのさ。」
「別にどうでもいいですけどねそんなのは。僕が救われたのは事実ですし。…コレを言うのは2回目ですね。」
「ああ。はあ……その内闇落ちでもしそうな気分だよ。」
「安心してください、その時は僕が貴方をキッチリ殺しますから。」
「ありがとよ。まあ逆にお前が敵になっても俺はそうする事にする。…吸うか?」
「未成年です。」
「さいですか…。」
ケインは差し出したたばこを口元に戻した。
「じゃあ僕はもう寝ます。…それじゃ。」
レドはその場から去っていく。ケインは煙草を灰皿に擦り付け、風に靡く髪を振り払った。
ーーーーー
「ん…?組み手やりたい?戦術の説明で終わりなんだけど…」
「よお…今日も負けに来たか?」
エディがニヤニヤとケインを煽る。
「言ってろ。」
ケインはエディの腕を掴んで捻ると、迅速な動きで押さえつけた。
「な…!」
「昨日見ましたよその動きは。」
『1日で格段に動きが良くなってる…』
「シャアアアアア!私の!勝ちじゃあ!」
全体重をかけて潰そうとでも言うように花織がベロニカを押さえつける。
自分がどうしようもない人間だってのは分かってる。誰よりも腐ってるのも分かってる。でもどうすればいいって言うんだ。じゃあどうあったって食らいつくしかねえだろ?生きるしか取り柄がないんだから。
「へへ…」
ケインからは自然と笑みが溢れていた。
ーーー
食堂でケインは食事の置かれたトレーを運ぶ。
「よお、やるじゃねえのお前。」
ケインの隣にエディが座る。
「いえ…別に。」
「まあなんだ…すまんかったな色々と。俺のことは嫌いになってもよ…隊長の事は嫌いにならないでくれよ。あの人はああ見えて繊細なんだよ。」
「ああ…その…」
「その目は知ってんだな。……あの人はさ、厳しいだけの軍なんてやめようって心情なんだよ。自分が厳しい家で育ったからだろうな。」
「あの人は…多分本気で誰かに寄り添おうとしてるんだなとは思います。でも正直ちょっと怖いですね。…自分が惨めに感じるから。」
「……変に重い話はよそうぜ?まあお前にも事情があんだな。」
「そうですね…えっと…」
「エドワード.スミス。まあエディで良い。」
「なんか普通っすね。」
「お前らの名前がおかしいだけだわ!」
「ねー何の話してんの?」
ベロニカが割り込むように2人の間に顔を近づける。
「姉さん手洗って!」
「えー!ブーブー!環境汚染!」
「どっちかと言えば汚染してんのは姉さんだよ!」
「ZZZ…」
「アルス…あいつまた寝ながらトレーを…」
「夢遊病で片付けられるモンでもないですねー。」
メルケルとエディが日常の1風景を切り取るように呑気に言葉を交わす。
「アレがいつも通りなんだ…」
「ちょっと!離れて!順番が…」
「少なすぎますよ!もっと!この十倍くらいは!」
「世界中のステーキ肉無くなるわ!」
食堂のガラスにへばりついてアンジェラに食ってかかっていたのは、紛れもなく花織だった。
「おえケイン。あれ…」
エディは花織を指差す。
「ん…?ただの猿じゃないですか。」
「手慣れたしらばっくれ方だなあ…」
「僕の…僕のお昼…」
花織の後ろでは龍が狼狽えていた。
ーーーーーーー
『ケイン.クロシキ…少々攻撃に粗はあるが成長速度が速く、判断能力、魔力構築力共に異常とも呼べる潜在能力を持つ』
『ハナオ.クロシキ…身のこなし、攻撃のキレ、共に白兵部隊全ての方面から見ても最上位クラス。だが少々性格に難があり、戦闘を前にすると集団行動全てを無視してしまい、慎重さに欠ける』
「こんな辺りかな…。うん、良い感じになりそう。」
サリサは書類を片手に微笑んだ。
ーーーーー
「……!これは!動きがありました!魔力の塊が一斉に動いています!推定魔族数…およそ4万!」
「ハハハ!随分な量じゃあないか!分かっているねヴェルサス氏!」
「分かっているよクレア。……やる事は全部ね。」
眠りについていたケインは、突如辺りに鳴り響いたサイレンで飛び起きる。
「来たか。」
ケインは廊下を走り、集合場所へと向かう。
「ケインさん、準備は?」
「出来てるよ。……相変わらず楽しそうだなあテメエは。」
「当たり前だ。…祭りが始まると言うのに楽しまずにいられるか?ケインよ。」
「怖いに決まってんだろ?死ぬのが楽しい訳…いやそう言う人間にこの前会ったが、俺は思わんね。」
「それ自体は同感だ。」
外に用意された車に部隊員が乗り込んでいく。
「始まっちゃう…始まっちゃう…はあ…はあ…」
龍は隅でガタガタと震えていた。
「…いい目してんじゃねえのお前。」
エディが入ってきたケインを見てそう言った。
「……知性魔族とは一応3回やってますからね。」
「そこ、喋らない。……出来るだけ体力は温存して。」
そう注意喚起したサリサは、まるで別人のようだった。
「…はい、了解。白兵第二部隊、一班、二班、三班、四班出発!」
車は区域の外へと走り出した。
食堂に行くと、まさに『食堂のおばちゃん』とでも言うような職員が料理をケインの前に突き出してきた。
「おかわりってできませんかね?」
「この状況でそれを言う奴は初めてだよ!」
「いえ、すごく美味しそうだなーと。」
「あら…そう?まあ良いよ?」
彼女は表情筋を緩めてそう言った。
「やはり食堂のおばちゃんは褒めに弱いな。」
不敵な笑みを浮かべてケインはトレーを運ぶ。
「ねーおばちゃんダメ?」
「別にアンタは訓練だので遅れたわけじゃないでしょうが!」
「下着作りも訓練ですよコンチクショウ!ダメですかアンジェラおばさま!」
「終わり!」
アンジェラは食堂のシャッターを閉めてしまった。
「食堂のおばちゃんは甘えに強い…。」
おかわりができる可能性を逃し、ケインは残念そうに細々と呟いた。
「恵んで…くれない?」
「ダメです!」
物欲しそうに隣に座るアンからケインは遠ざかる。
「末代まで呪ってやるう!」
「推しが結婚したら謎にキレてそう。」
「絶妙に傷つく偏見やめて?!」
「静まり返った食堂でよくそんなに大声で話せるねえ…。」
サリサは肘をつきながらスプーンで食事を口に運んでそう呟やく。
「あ、サリサちゃん。」
「アンー…疲れたー。」
サリサはスプーンから手を放し、机に顔を押し付ける。
「なんか…さっきまでとキャラが違うような…。」
「まさか…」
「ヒック」
サリサが横隔膜を痙攣させる。所謂しゃっくりである。
「サリサちゃん…酒飲んでない?」
「別に飲んでないし…単に泣いてるだけだし…ねーケイン君…青春してっかあ?!アタシ今年で26だからさあ…もう20代後半だからさあ…青春とか言ってらんないよ…。」
「俺も言うて23ですよ。青春とか古いし……そもそもそういうのはよく分からないっすよ。」
「へー…でもイケメンじゃん君。モテそうじゃん。……アタシかわいいって思う?タイプじゃないって言ってたけど…」
サリサはケインに顔を近づける。
「ちょっ…待って…!あの!助け…」
「眼福…眼福というほかありませぬ。」
アンは合唱していた。
「…コーフンしたね。ほら、色々正直な反応。」
そう言うとサリサはケインの下半身に視線を向ける。
「あーいや…これはその…」
「やっぱドキドキした?ねえねえ…」
「ご馳走様でした!」
ケインはトレーを手にすると、逃げるようにその場を去っていった。
「…チェッ、結構タイプだったんだけどなあ。」
「積極的すぎるからじゃない?」
「それが問題だったらアタシはなんでこうなってんだっての。」
アンに悪態をつくように、サリサは頬杖をつきながらそう言った。
ーーーーーー
「ふうー…」
ケインはたばこの煙を口に含む。特別多く吸うわけではない。シャーロットが吸っていたからではない。ただ満たされないだけ。満たされないがために満たされない行為をしている。ただそれだけ。
「…先輩。」
「レドか。……お前上手くやってるか?」
「戦術構築に関しての心得は殆ど無いのでメリッサ少将の話を聞くだけになっていましたね。」
「そっか、お前は司令部か。傀儡使いとさえ呼ばれてる冷酷無慈悲なメリッサ少将…実際どうだった?」
「話はまあ…聞いている分には面白かったですが……人と話している感じはしなかったですね。っていうかそんな名前ついてるんですか?」
「ああ、俺が資格取った5年前の時点で有名だぞ?当時は彼女が入って1、2年だったが…とある無知性魔族の集団襲撃を防ぐために兵数名を壁にしたとか…」
「……まあ他にないなら仕方ないんじゃないですか?」
「あっけらかんと言えるのはお前の長所だな。」
「……今日倒れたそうですね。何かあったんですか?」
「まあ訓練がキツくて…」
「そういう事じゃないです。」
「……少し思い出したんだよ、色々と。何というか…どれだけ突き詰めても自分の信じる物が実際より歪んでいるってのはあるだろ?」
「ええ、ありますね。僕なんか殆ど全部がそうです。……分かってますよ、貴方の言いたいことは。…僕は最初は貴方は自己犠牲的な正義の持ち主だと思ってました。でも実際は違う。あなたのそれは自己犠牲でもなければ正義でもない。……掃除をした時出てきたテディベア、ありましたよね?本当に他人を大事に思ってるなら、生活能力が無いにしろ管理はする筈だ。でも貴方はそれがない。貰い物をあんなにするのを何回も繰り返してる。」
「……まあそうだな。」
「実際欲求不満ですって顔してますよ今。…女性との関係を断たれて色々と…」
「だから俺は別に複数の女ハシゴしてねえっての!」
「その割にバイト無い日も夜に外出てるじゃないですか。」
「あー…あれは筋トレだよ。屋上出て筋トレしてんの。」
「怖っ…不気味にも程がありますよ…闇夜に紛れて筋トレする人影とか。」
「ほっとけこの野郎。……幾ら鍛えてもほっそいまんまだがな。……結局昔と何も変わらない。俺は大した人間じゃないのさ。」
「別にどうでもいいですけどねそんなのは。僕が救われたのは事実ですし。…コレを言うのは2回目ですね。」
「ああ。はあ……その内闇落ちでもしそうな気分だよ。」
「安心してください、その時は僕が貴方をキッチリ殺しますから。」
「ありがとよ。まあ逆にお前が敵になっても俺はそうする事にする。…吸うか?」
「未成年です。」
「さいですか…。」
ケインは差し出したたばこを口元に戻した。
「じゃあ僕はもう寝ます。…それじゃ。」
レドはその場から去っていく。ケインは煙草を灰皿に擦り付け、風に靡く髪を振り払った。
ーーーーー
「ん…?組み手やりたい?戦術の説明で終わりなんだけど…」
「よお…今日も負けに来たか?」
エディがニヤニヤとケインを煽る。
「言ってろ。」
ケインはエディの腕を掴んで捻ると、迅速な動きで押さえつけた。
「な…!」
「昨日見ましたよその動きは。」
『1日で格段に動きが良くなってる…』
「シャアアアアア!私の!勝ちじゃあ!」
全体重をかけて潰そうとでも言うように花織がベロニカを押さえつける。
自分がどうしようもない人間だってのは分かってる。誰よりも腐ってるのも分かってる。でもどうすればいいって言うんだ。じゃあどうあったって食らいつくしかねえだろ?生きるしか取り柄がないんだから。
「へへ…」
ケインからは自然と笑みが溢れていた。
ーーー
食堂でケインは食事の置かれたトレーを運ぶ。
「よお、やるじゃねえのお前。」
ケインの隣にエディが座る。
「いえ…別に。」
「まあなんだ…すまんかったな色々と。俺のことは嫌いになってもよ…隊長の事は嫌いにならないでくれよ。あの人はああ見えて繊細なんだよ。」
「ああ…その…」
「その目は知ってんだな。……あの人はさ、厳しいだけの軍なんてやめようって心情なんだよ。自分が厳しい家で育ったからだろうな。」
「あの人は…多分本気で誰かに寄り添おうとしてるんだなとは思います。でも正直ちょっと怖いですね。…自分が惨めに感じるから。」
「……変に重い話はよそうぜ?まあお前にも事情があんだな。」
「そうですね…えっと…」
「エドワード.スミス。まあエディで良い。」
「なんか普通っすね。」
「お前らの名前がおかしいだけだわ!」
「ねー何の話してんの?」
ベロニカが割り込むように2人の間に顔を近づける。
「姉さん手洗って!」
「えー!ブーブー!環境汚染!」
「どっちかと言えば汚染してんのは姉さんだよ!」
「ZZZ…」
「アルス…あいつまた寝ながらトレーを…」
「夢遊病で片付けられるモンでもないですねー。」
メルケルとエディが日常の1風景を切り取るように呑気に言葉を交わす。
「アレがいつも通りなんだ…」
「ちょっと!離れて!順番が…」
「少なすぎますよ!もっと!この十倍くらいは!」
「世界中のステーキ肉無くなるわ!」
食堂のガラスにへばりついてアンジェラに食ってかかっていたのは、紛れもなく花織だった。
「おえケイン。あれ…」
エディは花織を指差す。
「ん…?ただの猿じゃないですか。」
「手慣れたしらばっくれ方だなあ…」
「僕の…僕のお昼…」
花織の後ろでは龍が狼狽えていた。
ーーーーーーー
『ケイン.クロシキ…少々攻撃に粗はあるが成長速度が速く、判断能力、魔力構築力共に異常とも呼べる潜在能力を持つ』
『ハナオ.クロシキ…身のこなし、攻撃のキレ、共に白兵部隊全ての方面から見ても最上位クラス。だが少々性格に難があり、戦闘を前にすると集団行動全てを無視してしまい、慎重さに欠ける』
「こんな辺りかな…。うん、良い感じになりそう。」
サリサは書類を片手に微笑んだ。
ーーーーー
「……!これは!動きがありました!魔力の塊が一斉に動いています!推定魔族数…およそ4万!」
「ハハハ!随分な量じゃあないか!分かっているねヴェルサス氏!」
「分かっているよクレア。……やる事は全部ね。」
眠りについていたケインは、突如辺りに鳴り響いたサイレンで飛び起きる。
「来たか。」
ケインは廊下を走り、集合場所へと向かう。
「ケインさん、準備は?」
「出来てるよ。……相変わらず楽しそうだなあテメエは。」
「当たり前だ。…祭りが始まると言うのに楽しまずにいられるか?ケインよ。」
「怖いに決まってんだろ?死ぬのが楽しい訳…いやそう言う人間にこの前会ったが、俺は思わんね。」
「それ自体は同感だ。」
外に用意された車に部隊員が乗り込んでいく。
「始まっちゃう…始まっちゃう…はあ…はあ…」
龍は隅でガタガタと震えていた。
「…いい目してんじゃねえのお前。」
エディが入ってきたケインを見てそう言った。
「……知性魔族とは一応3回やってますからね。」
「そこ、喋らない。……出来るだけ体力は温存して。」
そう注意喚起したサリサは、まるで別人のようだった。
「…はい、了解。白兵第二部隊、一班、二班、三班、四班出発!」
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