Heavens Gate

酸性元素

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魔人衝突編

予兆④

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「それで?…何が聞きたい?」
アンはソファに腰掛け、両手を合わせて下を向いた状態でゆっくりと口を開いた。
「えっと…まあ…単刀直入にいうと…」
「ゴクリ…」
ケインは唾を飲んだ。
「ガーターベルトって付けてるのかな?」
「は?」
「は?」
「は?」
「は?」
「は?」
「はあー…」
5人は顔を顰め、部下はため息をついた。
「えっとね…ほら…やっぱりシスターさんやらはガーターベルトを付けてるイメージがあるというか…いやないならいいんだよそれはそれで。結局別方面でオイシイ訳だから。あなたが聖職者って訳じゃないのはわかってるんです。それ故踏み行っても問題ないかと。…良い加減白状しろ!つけてるんだろうガーターベルトを!そうなんだろう?!」
「帰れええええ!」
ケインはアンを玄関へと押し込もうとする。
「待って!待ってよ!これは重大な問題なんだよ!ガーターベルトと言う誰がつけてもエロくなる神のような下着をスレンダー体型の彼女が着けているかどうか確かめない事には私は…」
「ガーターベルトは下着ではないのでは…」
「…あっやべ、俺下着すらつけてねえわ。」
シャーロットは独り言のように呟く。
「あんたはあんたで何をやってんだ!」
「まさか…まさかそう来るとは…。成程そっち方面ですか…。悪くない…むしろイイ!ガーターベルト付けてるよりも!とても…とりあえず服をたくし上げ…」
突如アンの後頭部に打撃音が鳴る。
「まーたあんたはそういう事を…」
後ろに付いていた部下の1人が、頭部に血管を浮かばせながらアンを睨んでいた。
「なんでよ!なんでなのレナ!ここに!ここに金髪修道服スレンダーヤニカス俺っ子ダメ親父エルフと言う性癖の権化が居るのに!それに!触れないなんて!私は耐えられない!」
「ヤニカスとダメ親父は性癖と呼べるのか?」
「だったらここで死ね!」
レナはアンを起き上がらせると、腹部に膝蹴りを叩き込んだ。
「ごっふぅー!はあ…はあ…ようやく目覚めたんだね…リョナに…」
「むやみやたらと!性癖に!結びつけるな!」
三度アンを立ち上がらせたレナは、間髪入れずに平手打ちを浴びせた。
「…帰ってくんねーかなー…帰ってくんねえかなああああ…」
シャーロットも頭を抱えてため息をついていた。
「ふう…先程はごめんなさい…なんというか…混乱していたんです…。ホラ…オタクなんですよ私…故に自分の衝動を抑えられないというか…。」
アンは再びソファへと戻ると、震えた声で懺悔を始める。
「遠回しにオタクが自分の衝動を抑えられない変態だと一括りにしてません?」
レドの一言が刺さったのか、アンは露骨に落ち込んだ態度を見せる。
「じ、じゃあ…本題なんですが…」
「ゴクリ…」
「マイクロビキニって付ける気ある?」
「帰れええええええええええ!」
ケインは反射行動のように瞬時にアンの肩を掴む。
「ほんっとにすいませんねぇ!このクズが!オラ!オラあ!」
レナは笑顔でアンを踏みつける。心なしか笑みが入っているように見えた。
「なんだこれ…」
レドは目を細める気すら起きなかった。
騒ぎが収まり、アンがソファに戻っても、もはや誰一人として彼女を信頼する者はいなかった。レナに至っては彼女に後ろから飛び蹴りを喰らわせるために柔軟体操をし、シャドーボクシングを始めていた。アンは恐る恐る口を開く。
「えっと…まあ…ホラ…テレビでやってた事についてなんですが…」
「テレビ?一応置いてるけど電気代の無駄だから見ねえよ。…ってかどこにあるよアレ?」
「さあ?埃かぶってぶっ壊れてるんじゃないですかね?」
ケインは首を傾げながらシャーロットに解答する。
「あっそう…まあ魔族関連なのは分かるでしょう?」
「…まあみなくても分かるわな。俺らの魔族との交戦による一連の被害が色々と問題になってるんだろ?魔人戦争がまた起きる~とか……あとは危険区域を広くするべきだの他の国に逃げるべきだの色々と話にゃ聞いてるよ。……『組織』が攻めてくるから協力しろって事かい?」
「…ええ、単刀直入にいうと。…後はもっと詳しく先日対峙した魔族についての話も。」
アンはやや冷淡さと笑みが入り混じった表情でシャーロットに言い放った。
「……お前さんはどうなんだ?…魔族に武力行使するべきだのと一部じゃ言われてるが、するべきだと思うかい?」
「ええ。するべきかと。」
「……それはどうしてだ?」
「…まあ邪魔をするなら魔族は死ぬべきですよ。私はここでいうのは恥ずかしいんですが…まあ際どい服を自作するのが趣味なんです。…それを壊すなら殺します。」
「……なるほど。それだけか?」
「ええ、それだけです。私も危険区域近隣に実家があるので…あそこに住む方々の気持ちも分かります。……自分だけ助かりたいと言う思考もありません。…妥協ですよ要するに。何を貫くかの妥協。正義を貫くのは飽きました。」
「…実家があったの間違いなんじゃないのかい?」
クレアが突然2人の会話に割って入る。すると、レナがクレアの言葉に反応し、遠目から彼女を睨んだ。
「ええ、良く分かりましたね。私の両親はとっくに魔族に殺されてます。心の拠り所が妥協点なんですよ私は。」
アンは笑顔でそう良い放つ。途端にクレアは吹き出し、高らかに笑い始めた。
「ははははははは!君たち国公は我々をイカれ集団扱いするが…彼女も大概ネジが外れている!」
「…まさか。私が国公でおかしいだけですよ。…本当はもっとまともです。」
「まあ誤解しないで欲しいんだけどね…別に私は君を馬鹿にしているつもりは無いんだ。自分に似た人間を見て少し嬉しかったんだよ。…故に興味が湧いた。」
「……似ているなんてめっそうな。私は養成時代に鼠でムカデ人間を再現したりしませんでしたよ。」
「ああ…あれは失敗だったね。しかし君は私が相当好きらしい。そんなことまで知っていようとは。」
「いいえ?好き嫌いを述べるなど烏滸がましいですよ。…ねえ?」
両者は一切目を逸らす事なく睨みう。
「あー…取り敢えずだ。ここで交渉しようとは考えてねえんだろ?…だったら取り敢えず国公の本部に行く。これで良いか?」
ため息を交えながら、シャーロットが話を遮断する。
「…話の分かる人で良かったですよ。…では準備ができたら車に乗り込んで頂きますので。」
アンはそういうと、ゆっくりと立ち上がり、玄関の方へと向かう。
「ふぅー…」
シャーロットは深いため息をついた。それが単に疲労だけによるものではない事は誰もが分かっていた。
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