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レド編
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少年時代の思い出は何だ、と聞かれたら何も答えられないと思う。何せ僕のその頃の記憶といったら、失うか傷つけるかしかなかったのだから。きっと聞いたら軽蔑されるだろう。
「ダメ!可哀想でしょ?!」
「なんで…?母さんはゴキブリが怖いって言ってたよ?虫が邪魔なんでしょ?怖いんでしょ?」
客観的に見て、草むらの虫を枝で潰し続ける子供など悍ましいことこの上なかっただろう。だが当時の僕は無知で愚かで、そして人ではなかった。今でもそこまで変わらないだろう。
「いい?レド。どうあっても簡単に命を弄んじゃいけない。アンタは賢いからきっと分かる。」
「……うん。」
納得がいかなかった。だってその後も母さんは虫を見て怖がってたじゃないか。そうやって毎日恐怖に苛まれたら、いつか人は壊れてしまう。
僕は思考回路以前の何かが間違え、歪んでいた事に気づかなかった。その結果だ。その結果家族を失った。
ーーーーー
電話が鳴る。彼は飛び起きるでもなく、まるで電話など無いもののようにゆっくりと瞼を開くと、受話器を取った。
「国公魔導師の試験の合否の書類についてなのですが…」
「ああ…すいません…今行きます。」
彼は電話の相手に力無く返事した。遅れてしまった。というか今電話がかかってきたということはかなり遅れていたということになる。ボーッとし過ぎてしまったな。
そう彼は心の中で反省する。
「新年を迎えてもう1週間が経ちましたねー。」
切り忘れたテレビからはそんな声が聞こえてくる。そうか、もう新年なんだったっけ。彼はカレンダーの年号が未だに1989年であることに気がついた。まあどうでも良いや。と彼はその思考を切り捨てた。彼はふと古さを感じるこじんまりとした棚の上にある亡き母の写真を見た。そして頑なに拒むように、咄嗟に目を逸らし、テレビの電源を切って家を後にした。
「こちらが合否の書類になります。」
魔法省の職員が彼に封筒を渡す。受付の周りには殆ど人がおらず、彼と職員との会話のみが辺りに響きわたっていた。
「…」
彼は封筒の隙間から少しだけ書類を出し、合否を確認した。結果はやはり不合格である。
「…あの。これ不合格の場合どうするんでしたっけ。」
「また来年再試験して頂くか、魔導師の雇用先をその専門の会社に探して頂くかのいずれかになります。まあ魔法関係の仕事につかなくても結構ですが。」
職員は冷淡に言い放った。
「どうも…。その場所ってどこにあるんですか?」
「はあ…良いですか?ここに行って…」
職員はストレス混じりの話し方で彼に道を教えたが、彼の耳にはあまり入ってこなかった。
彼は重々しい足取りでその求人会社に向かった。
「どうもどうも、いやー済まないねえ。少し待たせてしまって。」
「あ、いえ…」
魔法省の受付同様、ほとんど人のいない状況ではあったが、そこの職員は先ほどとは打って変わって明るく、かつ慣れなれしかった。
「えっと…レド…ケニーシュタイン…だっけ?」
「…はい。」
「そんなに落ち込むこたあ無いよ!大体国公魔導師なんて成績上位の入るとこだしさ!魔導師なんて首都周辺じゃ国公が全部みたいなイメージだけどそこ以外じゃフリーランスの方が信頼度高いし…」
職員はレドのまるで表情の変化のない顔を見て言葉を止めた。
「あ、ああそっか…雇ってもらえるところは…1つだけなんだよね…一応君のデータ見せてもらえる?」
「あ、はい。」
期待をしていなかった分、思いの外雇用先が少ない事には特に驚きはなかった。
「何というか…ザ.平均オブ平均だね…凄いなこれ…魔力量の数値が平均中の平均の20.0000だ…。でも一般人並だな。」
「そうですか…」
自身の能力のなさを自覚していた分、これもまた驚きはなかった。
「いやー他の人たちが雇用先取って行っちゃったね。もうちょっと来るのが早かったらね…」
レドは合否の書類の受け取りをギリギリまで伸ばし続けたことを後悔した。最後に残ったこの1つは誰からも選ばれなかった、つまりは相当なゲテモノであると言うことは誰の目から見ても分かることだった。
「年々被害増えてるせいでフリーランスも減っちゃったからなあ…」
「被害?」
「ほら…魔族のことだよ。」
「ああ…そっか…。確か魔族の発生率が広がってるとかなんとか聞きました。」
「そうそう。魔族討伐とか護衛とかに依頼回されてどんどん死んでくもんだからさ。雇用先が減ったり増えたりで不安定なんだよね。君の世代から16で魔導師資格取れるようになったろ?それもその影響だよ。」
「ああ…なるほど。」
「大体さー…そこまで人員困ってるならもっと国公の合格基準下げた方がいいと思うんだけど…」
マズイな。このままではこの人が愚痴を吐くだけの時間になる。そう思ったレドは遮るように職員に問いかけた。
「あの…その雇い先というのは?」
職員は目線を逸らし、気まずそうに説明した。
「ああ…その雇い先の名前は『ドラゴンクロウ』って言って…なんというか…個人運営だから会社として何人か雇ってるとこなんだけどね…実績はあってもそれ以外がちょっとヤバいというか…。」
「ええ…」
「事務所内は年中ゴミだらけ!洗濯機などピクリとも動かない!冷房は壊れて機能しない!そしてメンバーは全員変わり者も変わり者…。それに死者やら被害も多い!入って3日で辞める人が殆どだ。…と言っても何年に一回入るか入らないかだけど。しかもね…一説じゃ裏社会とも繋がりがあるとか…。」
「分かりました。そこにします。」
「躊躇いが少しも無いね…。」
「ただ魔導師で居られれば良いので…」
「…まあ止めないけどさ。あっそうだ!名刺渡しとくね!」
「いらないです。」
「受け取っといてよもう…まあいいや。取り敢えずその場所ね。ドラゴンクロウには俺から連絡しておくから。面接の日になったら連絡するね。」
「ありがとうございます。」
レドはそそくさと扉を開けて外に出た。一応は魔導師になることが出来そうで彼は安心し、同時に底のない虚無感も感じていた。
家族もいない、友人もいない、そんな人生に悲しみを覚える元気すら無かった。
レドは家の扉を開くと、ベッドに腰掛けた。古びたベッドの木がギシリと音を立てる。
母が死んでからこの体たらくだ。本当にどうしようもないな。とレドは自己嫌悪したが、本当にそう思っているかは微妙だった。
レドは目を覚ました。どうやら眠っていたらしい。時計は朝9時を迎えていた。
「…めんどくさ。」
朝食という三大欲求にしたがって行われる行動でさえも、彼は面倒に感じていたが、夕食を口にしていない分普段以上に空腹を感じていた。
「はあ…」
パンの1つでも買って帰ろう。とレドは家をでた。
彼は自身の家の近隣に店が全く無い事を思い出し、止むを得ず電車に乗ろうと駅に向かった。
「じゃあどうしてこの地図線より向こう側に行けないかわかる人いるかな?」
「はい!魔族が居るからです!」
「そう!50年前に人と魔族が争った魔人戦争って言うのがあったのね。…それでお互いに消耗し切っちゃったから戦いがなくなって、魔族がこっち側にいるの。ここだけじゃなくて世界中に魔族が住む地域っていうのはあるけど、この国はその中でも特に大きい。」
「先生!条約は結ばれていないから停戦になってないってお父さんが言ってました!」
「よく知ってるのね!そう、正式な停戦にはなっていないの。だから魔族も人間がいるってだけで襲ってくるから、ものすごく危険なの。…それと特に気をつけるべきなのが…なんだと思う?」
「はい!無知性魔族です!」
「正解!魔族には知性があるタイプとないタイプがいて、ないタイプは自我がないから、人間を度々襲うの。その時に魔道士さんたちが頑張ってるの!」
小学校5年生ほどの生徒たちが授業を受けている様子を、レドは一瞬眺めていた。危険だと言いつつも実際は誰も緊張などしていない。誰もが自分は生き残ると思っている。そして僕もまたどこかでそう思っているのだろう。とレドは思った。
電車内の席でサラリーマンが新聞を広げて読んでいた。
『セリアム新聞』
セリアム。この国の名前である。
言葉の響きがヘンだな。とレドは思う。セリアムというのはなんだか言葉の響きがヘンだ。ムが付くことで絶妙な言葉のキレの無さを醸し出している。そこに新聞なんてついたらダサいのなんの。とまたしても戯言を並べていた。
その時、ふと見た窓から、巨大な瞳がこちらを覗いているのにレドは気がついた。本能的に彼は下に伏せた。その瞬間、電車の上半分が乗客の上半身と共に吹き飛び、同時にその勢いで電車が激しく横転した。宙を舞う体を制御しようと彼は手すりにつかまった。金属音と叫び声がトンネルに鳴り響く。停止した電車からレドは顔を出した。彼がその時始めて目に捉えたのは、四足歩行の怪物。すなわち魔族だった。魔導師専門学校で幾度となく教科書で見たその姿がそこに居た。
レドは電車から離れ、魔族の視界に回り込んだ。その直後、魔族はレドを無視し、未だ乗客が中に居る電車へと視線を向けた。そして物凄い速度で電車の目の前に迫り、中から乗客を引きずり出して殺していった。
「嫌だ…嫌」
1人の男は言葉の途中で壁に叩きつけられる。
「なんで…なんで…こんな…あっあっあっあっ!」
1人の女は両手で体をゆっくりと引き裂かれる。
このような事がひたすら繰り返されていく。すでに暗闇の空間には血と臓物の臭いが充満し切っていた。
「あー…これ僕が狙われる奴だ…ちょっとまずいなぁ…」
レドはこの場から退散すべきか悩んだ。そこそこの人数の国公魔導師がここの近くに居るからそろそろ来るはずだし…よし、逃げよう。まあ魔族用の武器が用意出来るかは分からないけど。そう彼は自己完結し、魔族に背を向け退散を図ろうとした。が、その先に魔道士が駆けつけるのを見て、彼の中からその選択肢が消えた。
「魔族…?!何故ここに!」
「構えろ!」
6、7人程の国公魔導師が魔装銃を魔族に向ける。他が険しい表情で警戒する一方、ここで一般人として逃げたら事情聴取とかでまずいことになるよなあ…どうしよう。隙を見て逃げようかな。とレドは物陰に隠れて考えていた。
「発砲許可は降りていないです!それにこれは魔族用のものじゃない!」
「構わん! 撃て!」
魔族に弾が次々と打ち込まれる。魔族の剥がれた肌の中から黒い玉が露出する。
「あれだ!あの核を狙えば魔族は殺せる!畳み掛け…」
指示を仰いだ魔導師の体は一瞬にして距離を詰めてきた魔族によって上下に分断された。
「あ…ああああ!」
魔族は錯乱して弾を乱射する魔導師の弾を片手で防ぎ、そのまま握りつぶした。あたり一帯に血液が飛び散る。
次々と魔導師が殺されていくのを見て、レドはまたしても悩んでいた。どうしようかなあ…協力すべきか否か…でも協力するって言ったってなあ…。
レドが様子を物陰からふと見ると、残った最後の1人の魔導師が魔族に襲われる直前にまで差し迫っていた。
「あー…クソ!もう良いや!」
彼は床に転がっていた魔装銃を手に取ると、魔族の背中に向けて発射した。
「やっぱ僕程度の魔力じゃ効かないか…」
レドはそう呟くと、魔族が襲ってくることを予期して、後ろを向いて走り出した。
巨大な物がトンネルの壁にぶつかるのが分かる。それがトンネルの曲がり角に激突した魔族である事は容易にわかった。
「グオオオオ!」
魔族の雄叫びが響き渡る。レドは魔族の方へ向き直ると、四足の足の空間へと滑り込み、魔族の振り下ろされる手をかわした。
「あっぶね…見てから避けるの無理だなこれ…」
レドは魔装銃をトンネルの天井と壁に向かって連射した。崩れたコンクリートが魔族へとのしかかる。
「少し動いてるけどまあ…時間稼ぎにはなるよな…」
レドは元居た場所へと戻り、生き残っていた魔導師の元へと駆け寄った。
「生きてます?」
まるで日常会話のように話しかけるレドに驚きを見せた魔導師だが、それ以上に、先ほどの魔族への恐怖が彼の表情には現れていた。
「な、なんなんだ君は!いきなり現れたかと思ったら魔装銃を…」
「一応魔導師の資格持ってますので!恐怖で冷静な思考ができないのか知らないですけど時間ないんで!」
「君は…怖く無いのか…?」
「死ぬのは嫌ですけど…別に怖くは無いです。」
「嫌なのに怖く無いのか…?」
「あなたは嫌なことと怖いことが必ず結びつくと思ってるんですか?」
「ああ…いや…もういい…」
会話が終わったと同時に何か固いものが吹き飛ぶような音が鳴り響く。魔族が再び彼らの前に姿を現わす。
「じゃあ取り敢えず僕が囮になるのであなたは核を壊してください。」
「な…!君は俺にそれが出来ると…?」
「分かりません。でも少なくとも…僕の命よりあなたの命の方が価値がある。だから僕が囮になります。」
レドは、魔族の注目を自身に引きつけるために、魔族へ攻撃を浴びせながら走り回る。
「俺には…出来ない…」
魔道士は恐怖で動けなかった。途端に、途方も無い自己嫌悪が彼を包んだ。本当に彼は俺を信じて居るのか…?そんな疑問と恐怖が渦巻いていた。
「あーくそ!やってやる!」
魔導師は魔族の後ろに回り込み、魔装銃の引き金を一心不乱に引き続けた。
「ああああああ!」
魔族の肌が剥がれ、核が再び露出する。が、それと同時に、レドの右腕が吹き飛び、彼はバランスを失う。魔族の尾がレドへと向かう。魔導師の体は自然と動いていた。彼はレドを突き飛ばし、彼に向き直った。
「君はまだ若い…だから死ぬのは俺で良い。君で倒してくれ。」
魔族の尾が魔導師の腹部を貫き、同時にレドは魔族の核を撃ち抜いた。
再生能力を失った魔族の体は砂状に崩れ去る。それを見て安堵した魔導師は細い声でレドに話しかける。
「少年…俺は…役に立てたか?」
「さあ。立てたんじゃないですか?」
「そうか…。一つ聞いていいか?」
「なんです?」
「君は…俺が死んで悲しいか?」
「…さあ。どうかわからないです。」
「そうか…」
不思議と魔導師は安心感に満たされ、間も無くして彼の呼吸は止まった。
「……?」
レドは、魔導師の遺体のポケットから出た写真を見た。魔道士の子供時代らしき姿と、その家族が写っていた。妹か娘か、仲が良さそうに並んでいる姿が確認できる。…どうでもいいか、そんな事は。レドはすぐにそれらから目を逸らした。
「ああもう…なんでいきなり四肢欠損しなきゃいけないんだよ…」
彼は失った右腕を抑えてトンネルを出ようと足を運んだ。
が、次の瞬間、天井が広範囲に崩れ去る。天井から先ほどと同様の魔族6体が地に足をつけ、レドの前に立ちふさがった。
「ああ…ダメだなこれ。はー…まあ死ぬにはちょうど良い日だな…」
レドはため息をつくと、その場であぐらをかいた。6体の魔族が一斉にレドに襲いかかる。
魔族の爪がレドを捉える直前で止まり、彼らの腕は切り落とされた。
「よお。無事かい?」
若い男の声がし、レドは声の方向を見る。声の主と思しき人物は、東洋と西洋の特徴を両方持った中性的な顔立ちをしていた。
「ま、ちょいと待っててな。」
魔族6体は即座に腕を再生させると、青年へと再び襲いかかる。
「ったくお前らはよー…なんで直ぐに素手で攻撃したがるよ。馬鹿の一つ覚えだぞ?」
青年はそういうと高く飛び上がり、両手に持った刀を構えた。
「普通の魔法じゃあそこまで飛べない…そうか魔能か。」
と、レドは独り言のように自己完結した。
青年は落下を利用して、魔族一体の背中に刃を突き立て核を破壊し、すぐ近くにいた魔族を左足で蹴り上げた。激しい衝撃音と共に魔族の体が宙に浮き、青年の魔能によって空中に浮遊する。
「よーし…そのまま浮いててくれよ?」
青年は浮遊する魔族の背中に乗り上げると、襲い来る魔族4体を日本の刀の斬撃で切り裂いた。
「隙は十分に作れたな…んじゃ…使いますか。黒牙冥滅!」
黒球体がそれぞれ4体の魔族の間近に出現する。魔族の核は一瞬にしてその球体に飲み込まれていった。そして残りの一体を青年は倒し、レドの元へと歩み寄る。
「んで…この痕跡を見るに他にも魔族がいた感じだが…まさかお前がやったのか?にしちゃ魔力が少ないが…。まあいい。名前聞いとく。俺はケイン・クロシキ。お前は?」
「レド・ケニーシュタインです。」
「はあ?お前が?!」
「はい?」
「はあ…まあドラゴンクロウについては聞いてるだろ?今朝新メンバーについての話でお前の名前を耳にしたが…まさかこんな雑魚とはねえ…」
「雑魚だという自覚はあります。」
「っつーかお前片腕ねーじゃん!応急処置するからこっち…」
ケインがレドに向き直った頃には、既にレドは意識を失っていた。
「あーあ。だからこうなる…。まあ飛ばせば間に合うかな?」
ケインはそういうと、レドを抱えてドラゴンクロウの本部へと戻った。
「…」
「起きたか。」
目を覚まして聞こえてきたケインの声に、レドは無意識にため息が出た。
「おいなんでため息ついた。」
「やあやあやあ!君が新しいメンバーかい宜しく頼むよところで血液型は?体重は?性別は…一応聞いておこう。」
ケインの言葉を遮るように女性の早口な声がレドをまくし立てた。
「なんでいつもお前は初対面の人間に所構わず質問責めするんだよ!」
「嫌だなあ友好関係さ。」
「あの…ここはドラゴンクロウの本部って事で良いんですか?」
「ああ…まあそうだ。」
そこに広がっていたのは、おびただしい数のゴミ類だった。話に聞いていた以上の不衛生空間にレドは目を細めた。
「あ、電話だ。」
ケインはそういうと受話器を手に取った。
「ねーえー。今夜遊びに行かなーい?」
「あー…どーだろーなー。」
「最近全然構ってくれないじゃなーい!」
「いやーすまんな…予定立て込んでて…」
女性との会話が聞こえる。
「ああ…彼は忙しいんだよ…色々とね。」
先ほどレドに質問責めをした彼女がボソリと呟く。
レドは既に、自身の嫌な予感が的中しつつある事に絶望しかかっていた。
「ダメ!可哀想でしょ?!」
「なんで…?母さんはゴキブリが怖いって言ってたよ?虫が邪魔なんでしょ?怖いんでしょ?」
客観的に見て、草むらの虫を枝で潰し続ける子供など悍ましいことこの上なかっただろう。だが当時の僕は無知で愚かで、そして人ではなかった。今でもそこまで変わらないだろう。
「いい?レド。どうあっても簡単に命を弄んじゃいけない。アンタは賢いからきっと分かる。」
「……うん。」
納得がいかなかった。だってその後も母さんは虫を見て怖がってたじゃないか。そうやって毎日恐怖に苛まれたら、いつか人は壊れてしまう。
僕は思考回路以前の何かが間違え、歪んでいた事に気づかなかった。その結果だ。その結果家族を失った。
ーーーーー
電話が鳴る。彼は飛び起きるでもなく、まるで電話など無いもののようにゆっくりと瞼を開くと、受話器を取った。
「国公魔導師の試験の合否の書類についてなのですが…」
「ああ…すいません…今行きます。」
彼は電話の相手に力無く返事した。遅れてしまった。というか今電話がかかってきたということはかなり遅れていたということになる。ボーッとし過ぎてしまったな。
そう彼は心の中で反省する。
「新年を迎えてもう1週間が経ちましたねー。」
切り忘れたテレビからはそんな声が聞こえてくる。そうか、もう新年なんだったっけ。彼はカレンダーの年号が未だに1989年であることに気がついた。まあどうでも良いや。と彼はその思考を切り捨てた。彼はふと古さを感じるこじんまりとした棚の上にある亡き母の写真を見た。そして頑なに拒むように、咄嗟に目を逸らし、テレビの電源を切って家を後にした。
「こちらが合否の書類になります。」
魔法省の職員が彼に封筒を渡す。受付の周りには殆ど人がおらず、彼と職員との会話のみが辺りに響きわたっていた。
「…」
彼は封筒の隙間から少しだけ書類を出し、合否を確認した。結果はやはり不合格である。
「…あの。これ不合格の場合どうするんでしたっけ。」
「また来年再試験して頂くか、魔導師の雇用先をその専門の会社に探して頂くかのいずれかになります。まあ魔法関係の仕事につかなくても結構ですが。」
職員は冷淡に言い放った。
「どうも…。その場所ってどこにあるんですか?」
「はあ…良いですか?ここに行って…」
職員はストレス混じりの話し方で彼に道を教えたが、彼の耳にはあまり入ってこなかった。
彼は重々しい足取りでその求人会社に向かった。
「どうもどうも、いやー済まないねえ。少し待たせてしまって。」
「あ、いえ…」
魔法省の受付同様、ほとんど人のいない状況ではあったが、そこの職員は先ほどとは打って変わって明るく、かつ慣れなれしかった。
「えっと…レド…ケニーシュタイン…だっけ?」
「…はい。」
「そんなに落ち込むこたあ無いよ!大体国公魔導師なんて成績上位の入るとこだしさ!魔導師なんて首都周辺じゃ国公が全部みたいなイメージだけどそこ以外じゃフリーランスの方が信頼度高いし…」
職員はレドのまるで表情の変化のない顔を見て言葉を止めた。
「あ、ああそっか…雇ってもらえるところは…1つだけなんだよね…一応君のデータ見せてもらえる?」
「あ、はい。」
期待をしていなかった分、思いの外雇用先が少ない事には特に驚きはなかった。
「何というか…ザ.平均オブ平均だね…凄いなこれ…魔力量の数値が平均中の平均の20.0000だ…。でも一般人並だな。」
「そうですか…」
自身の能力のなさを自覚していた分、これもまた驚きはなかった。
「いやー他の人たちが雇用先取って行っちゃったね。もうちょっと来るのが早かったらね…」
レドは合否の書類の受け取りをギリギリまで伸ばし続けたことを後悔した。最後に残ったこの1つは誰からも選ばれなかった、つまりは相当なゲテモノであると言うことは誰の目から見ても分かることだった。
「年々被害増えてるせいでフリーランスも減っちゃったからなあ…」
「被害?」
「ほら…魔族のことだよ。」
「ああ…そっか…。確か魔族の発生率が広がってるとかなんとか聞きました。」
「そうそう。魔族討伐とか護衛とかに依頼回されてどんどん死んでくもんだからさ。雇用先が減ったり増えたりで不安定なんだよね。君の世代から16で魔導師資格取れるようになったろ?それもその影響だよ。」
「ああ…なるほど。」
「大体さー…そこまで人員困ってるならもっと国公の合格基準下げた方がいいと思うんだけど…」
マズイな。このままではこの人が愚痴を吐くだけの時間になる。そう思ったレドは遮るように職員に問いかけた。
「あの…その雇い先というのは?」
職員は目線を逸らし、気まずそうに説明した。
「ああ…その雇い先の名前は『ドラゴンクロウ』って言って…なんというか…個人運営だから会社として何人か雇ってるとこなんだけどね…実績はあってもそれ以外がちょっとヤバいというか…。」
「ええ…」
「事務所内は年中ゴミだらけ!洗濯機などピクリとも動かない!冷房は壊れて機能しない!そしてメンバーは全員変わり者も変わり者…。それに死者やら被害も多い!入って3日で辞める人が殆どだ。…と言っても何年に一回入るか入らないかだけど。しかもね…一説じゃ裏社会とも繋がりがあるとか…。」
「分かりました。そこにします。」
「躊躇いが少しも無いね…。」
「ただ魔導師で居られれば良いので…」
「…まあ止めないけどさ。あっそうだ!名刺渡しとくね!」
「いらないです。」
「受け取っといてよもう…まあいいや。取り敢えずその場所ね。ドラゴンクロウには俺から連絡しておくから。面接の日になったら連絡するね。」
「ありがとうございます。」
レドはそそくさと扉を開けて外に出た。一応は魔導師になることが出来そうで彼は安心し、同時に底のない虚無感も感じていた。
家族もいない、友人もいない、そんな人生に悲しみを覚える元気すら無かった。
レドは家の扉を開くと、ベッドに腰掛けた。古びたベッドの木がギシリと音を立てる。
母が死んでからこの体たらくだ。本当にどうしようもないな。とレドは自己嫌悪したが、本当にそう思っているかは微妙だった。
レドは目を覚ました。どうやら眠っていたらしい。時計は朝9時を迎えていた。
「…めんどくさ。」
朝食という三大欲求にしたがって行われる行動でさえも、彼は面倒に感じていたが、夕食を口にしていない分普段以上に空腹を感じていた。
「はあ…」
パンの1つでも買って帰ろう。とレドは家をでた。
彼は自身の家の近隣に店が全く無い事を思い出し、止むを得ず電車に乗ろうと駅に向かった。
「じゃあどうしてこの地図線より向こう側に行けないかわかる人いるかな?」
「はい!魔族が居るからです!」
「そう!50年前に人と魔族が争った魔人戦争って言うのがあったのね。…それでお互いに消耗し切っちゃったから戦いがなくなって、魔族がこっち側にいるの。ここだけじゃなくて世界中に魔族が住む地域っていうのはあるけど、この国はその中でも特に大きい。」
「先生!条約は結ばれていないから停戦になってないってお父さんが言ってました!」
「よく知ってるのね!そう、正式な停戦にはなっていないの。だから魔族も人間がいるってだけで襲ってくるから、ものすごく危険なの。…それと特に気をつけるべきなのが…なんだと思う?」
「はい!無知性魔族です!」
「正解!魔族には知性があるタイプとないタイプがいて、ないタイプは自我がないから、人間を度々襲うの。その時に魔道士さんたちが頑張ってるの!」
小学校5年生ほどの生徒たちが授業を受けている様子を、レドは一瞬眺めていた。危険だと言いつつも実際は誰も緊張などしていない。誰もが自分は生き残ると思っている。そして僕もまたどこかでそう思っているのだろう。とレドは思った。
電車内の席でサラリーマンが新聞を広げて読んでいた。
『セリアム新聞』
セリアム。この国の名前である。
言葉の響きがヘンだな。とレドは思う。セリアムというのはなんだか言葉の響きがヘンだ。ムが付くことで絶妙な言葉のキレの無さを醸し出している。そこに新聞なんてついたらダサいのなんの。とまたしても戯言を並べていた。
その時、ふと見た窓から、巨大な瞳がこちらを覗いているのにレドは気がついた。本能的に彼は下に伏せた。その瞬間、電車の上半分が乗客の上半身と共に吹き飛び、同時にその勢いで電車が激しく横転した。宙を舞う体を制御しようと彼は手すりにつかまった。金属音と叫び声がトンネルに鳴り響く。停止した電車からレドは顔を出した。彼がその時始めて目に捉えたのは、四足歩行の怪物。すなわち魔族だった。魔導師専門学校で幾度となく教科書で見たその姿がそこに居た。
レドは電車から離れ、魔族の視界に回り込んだ。その直後、魔族はレドを無視し、未だ乗客が中に居る電車へと視線を向けた。そして物凄い速度で電車の目の前に迫り、中から乗客を引きずり出して殺していった。
「嫌だ…嫌」
1人の男は言葉の途中で壁に叩きつけられる。
「なんで…なんで…こんな…あっあっあっあっ!」
1人の女は両手で体をゆっくりと引き裂かれる。
このような事がひたすら繰り返されていく。すでに暗闇の空間には血と臓物の臭いが充満し切っていた。
「あー…これ僕が狙われる奴だ…ちょっとまずいなぁ…」
レドはこの場から退散すべきか悩んだ。そこそこの人数の国公魔導師がここの近くに居るからそろそろ来るはずだし…よし、逃げよう。まあ魔族用の武器が用意出来るかは分からないけど。そう彼は自己完結し、魔族に背を向け退散を図ろうとした。が、その先に魔道士が駆けつけるのを見て、彼の中からその選択肢が消えた。
「魔族…?!何故ここに!」
「構えろ!」
6、7人程の国公魔導師が魔装銃を魔族に向ける。他が険しい表情で警戒する一方、ここで一般人として逃げたら事情聴取とかでまずいことになるよなあ…どうしよう。隙を見て逃げようかな。とレドは物陰に隠れて考えていた。
「発砲許可は降りていないです!それにこれは魔族用のものじゃない!」
「構わん! 撃て!」
魔族に弾が次々と打ち込まれる。魔族の剥がれた肌の中から黒い玉が露出する。
「あれだ!あの核を狙えば魔族は殺せる!畳み掛け…」
指示を仰いだ魔導師の体は一瞬にして距離を詰めてきた魔族によって上下に分断された。
「あ…ああああ!」
魔族は錯乱して弾を乱射する魔導師の弾を片手で防ぎ、そのまま握りつぶした。あたり一帯に血液が飛び散る。
次々と魔導師が殺されていくのを見て、レドはまたしても悩んでいた。どうしようかなあ…協力すべきか否か…でも協力するって言ったってなあ…。
レドが様子を物陰からふと見ると、残った最後の1人の魔導師が魔族に襲われる直前にまで差し迫っていた。
「あー…クソ!もう良いや!」
彼は床に転がっていた魔装銃を手に取ると、魔族の背中に向けて発射した。
「やっぱ僕程度の魔力じゃ効かないか…」
レドはそう呟くと、魔族が襲ってくることを予期して、後ろを向いて走り出した。
巨大な物がトンネルの壁にぶつかるのが分かる。それがトンネルの曲がり角に激突した魔族である事は容易にわかった。
「グオオオオ!」
魔族の雄叫びが響き渡る。レドは魔族の方へ向き直ると、四足の足の空間へと滑り込み、魔族の振り下ろされる手をかわした。
「あっぶね…見てから避けるの無理だなこれ…」
レドは魔装銃をトンネルの天井と壁に向かって連射した。崩れたコンクリートが魔族へとのしかかる。
「少し動いてるけどまあ…時間稼ぎにはなるよな…」
レドは元居た場所へと戻り、生き残っていた魔導師の元へと駆け寄った。
「生きてます?」
まるで日常会話のように話しかけるレドに驚きを見せた魔導師だが、それ以上に、先ほどの魔族への恐怖が彼の表情には現れていた。
「な、なんなんだ君は!いきなり現れたかと思ったら魔装銃を…」
「一応魔導師の資格持ってますので!恐怖で冷静な思考ができないのか知らないですけど時間ないんで!」
「君は…怖く無いのか…?」
「死ぬのは嫌ですけど…別に怖くは無いです。」
「嫌なのに怖く無いのか…?」
「あなたは嫌なことと怖いことが必ず結びつくと思ってるんですか?」
「ああ…いや…もういい…」
会話が終わったと同時に何か固いものが吹き飛ぶような音が鳴り響く。魔族が再び彼らの前に姿を現わす。
「じゃあ取り敢えず僕が囮になるのであなたは核を壊してください。」
「な…!君は俺にそれが出来ると…?」
「分かりません。でも少なくとも…僕の命よりあなたの命の方が価値がある。だから僕が囮になります。」
レドは、魔族の注目を自身に引きつけるために、魔族へ攻撃を浴びせながら走り回る。
「俺には…出来ない…」
魔道士は恐怖で動けなかった。途端に、途方も無い自己嫌悪が彼を包んだ。本当に彼は俺を信じて居るのか…?そんな疑問と恐怖が渦巻いていた。
「あーくそ!やってやる!」
魔導師は魔族の後ろに回り込み、魔装銃の引き金を一心不乱に引き続けた。
「ああああああ!」
魔族の肌が剥がれ、核が再び露出する。が、それと同時に、レドの右腕が吹き飛び、彼はバランスを失う。魔族の尾がレドへと向かう。魔導師の体は自然と動いていた。彼はレドを突き飛ばし、彼に向き直った。
「君はまだ若い…だから死ぬのは俺で良い。君で倒してくれ。」
魔族の尾が魔導師の腹部を貫き、同時にレドは魔族の核を撃ち抜いた。
再生能力を失った魔族の体は砂状に崩れ去る。それを見て安堵した魔導師は細い声でレドに話しかける。
「少年…俺は…役に立てたか?」
「さあ。立てたんじゃないですか?」
「そうか…。一つ聞いていいか?」
「なんです?」
「君は…俺が死んで悲しいか?」
「…さあ。どうかわからないです。」
「そうか…」
不思議と魔導師は安心感に満たされ、間も無くして彼の呼吸は止まった。
「……?」
レドは、魔導師の遺体のポケットから出た写真を見た。魔道士の子供時代らしき姿と、その家族が写っていた。妹か娘か、仲が良さそうに並んでいる姿が確認できる。…どうでもいいか、そんな事は。レドはすぐにそれらから目を逸らした。
「ああもう…なんでいきなり四肢欠損しなきゃいけないんだよ…」
彼は失った右腕を抑えてトンネルを出ようと足を運んだ。
が、次の瞬間、天井が広範囲に崩れ去る。天井から先ほどと同様の魔族6体が地に足をつけ、レドの前に立ちふさがった。
「ああ…ダメだなこれ。はー…まあ死ぬにはちょうど良い日だな…」
レドはため息をつくと、その場であぐらをかいた。6体の魔族が一斉にレドに襲いかかる。
魔族の爪がレドを捉える直前で止まり、彼らの腕は切り落とされた。
「よお。無事かい?」
若い男の声がし、レドは声の方向を見る。声の主と思しき人物は、東洋と西洋の特徴を両方持った中性的な顔立ちをしていた。
「ま、ちょいと待っててな。」
魔族6体は即座に腕を再生させると、青年へと再び襲いかかる。
「ったくお前らはよー…なんで直ぐに素手で攻撃したがるよ。馬鹿の一つ覚えだぞ?」
青年はそういうと高く飛び上がり、両手に持った刀を構えた。
「普通の魔法じゃあそこまで飛べない…そうか魔能か。」
と、レドは独り言のように自己完結した。
青年は落下を利用して、魔族一体の背中に刃を突き立て核を破壊し、すぐ近くにいた魔族を左足で蹴り上げた。激しい衝撃音と共に魔族の体が宙に浮き、青年の魔能によって空中に浮遊する。
「よーし…そのまま浮いててくれよ?」
青年は浮遊する魔族の背中に乗り上げると、襲い来る魔族4体を日本の刀の斬撃で切り裂いた。
「隙は十分に作れたな…んじゃ…使いますか。黒牙冥滅!」
黒球体がそれぞれ4体の魔族の間近に出現する。魔族の核は一瞬にしてその球体に飲み込まれていった。そして残りの一体を青年は倒し、レドの元へと歩み寄る。
「んで…この痕跡を見るに他にも魔族がいた感じだが…まさかお前がやったのか?にしちゃ魔力が少ないが…。まあいい。名前聞いとく。俺はケイン・クロシキ。お前は?」
「レド・ケニーシュタインです。」
「はあ?お前が?!」
「はい?」
「はあ…まあドラゴンクロウについては聞いてるだろ?今朝新メンバーについての話でお前の名前を耳にしたが…まさかこんな雑魚とはねえ…」
「雑魚だという自覚はあります。」
「っつーかお前片腕ねーじゃん!応急処置するからこっち…」
ケインがレドに向き直った頃には、既にレドは意識を失っていた。
「あーあ。だからこうなる…。まあ飛ばせば間に合うかな?」
ケインはそういうと、レドを抱えてドラゴンクロウの本部へと戻った。
「…」
「起きたか。」
目を覚まして聞こえてきたケインの声に、レドは無意識にため息が出た。
「おいなんでため息ついた。」
「やあやあやあ!君が新しいメンバーかい宜しく頼むよところで血液型は?体重は?性別は…一応聞いておこう。」
ケインの言葉を遮るように女性の早口な声がレドをまくし立てた。
「なんでいつもお前は初対面の人間に所構わず質問責めするんだよ!」
「嫌だなあ友好関係さ。」
「あの…ここはドラゴンクロウの本部って事で良いんですか?」
「ああ…まあそうだ。」
そこに広がっていたのは、おびただしい数のゴミ類だった。話に聞いていた以上の不衛生空間にレドは目を細めた。
「あ、電話だ。」
ケインはそういうと受話器を手に取った。
「ねーえー。今夜遊びに行かなーい?」
「あー…どーだろーなー。」
「最近全然構ってくれないじゃなーい!」
「いやーすまんな…予定立て込んでて…」
女性との会話が聞こえる。
「ああ…彼は忙しいんだよ…色々とね。」
先ほどレドに質問責めをした彼女がボソリと呟く。
レドは既に、自身の嫌な予感が的中しつつある事に絶望しかかっていた。
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