地獄の道の罪人ども

酸性元素

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天界決戦編

血筋

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 朝になり、カンダタはベッドから起きた。見慣れない部屋だ。汚れひとつない真っ白な壁に、しつこい程に窓から差し込む光。そして、俺をニタニタと見つめるガブリエル……。ん?ガブリエル?

 カンダタは嫌な予感を感じ、部屋から飛び出した。そんな彼を、ガブリエルは追いかける。

「おいおい待てよカンダタぁ!あん時の決着もっかい付けようぜぇ?!」

「勘弁してくれ朝っぱらから!なんでお前と戦わなきゃなんねーの!」

 ドタドタと建物を駆け回り、2人はひたすらに追いかけあった。だが、そんな2人の後頭部を、待ち構えていたアレスが殴りつけた。ゴーン、と言う鈍い音と共に2人は地面に叩きつけられた。

「朝から何をしてるんだ君たちは!まだ寝てる者たちもいると言うのに……」

 はぁ、とため息をついてアレスは言う。だが既に2人の追いかけ合いは皆を起こしてしまったらしく、それぞれがあくびをしながらその場に集まってきた。

「ったく……なんなのよドタドタと……」

 アテナは欠伸をしながら、愚痴をブツブツと呟く。

「アレス……貴方も貴方ですよ?もっと静かに止められないのですか?」

 デメテルは、どう言うわけかアレスを叱りつけている。

「ガハハハハ!まあ良いじゃねえの!……お、アンタはあの時の……」

 ヘファイストスは、額を見つけるや否や彼に駆け寄ると

「いやー、アンタにゃコテンパンにやられちまったよ!アンタのその刀、今度見せてくれねえか?」

 と彼の背中をバン、と叩いた。額は明らかにその衝撃に痛みを覚えたような表情をすると、

「まあ……とりあえず後でね」

 と若干気まずそうに答えた。

「うるさい」

「同感です」

 牛頭と馬頭は、ムスっと顔を顰めながら言う。

「はははははぁ!寝起きのマカも美しいね!」

 美琴はクルクルと体を回転させながら、マカに近寄る。そんな彼の頭に、マカは強くチョップを浴びせた。

「神様と一緒……怖い……」

 納言は、皆に挟まれた状態でガタガタと震えている。

「お、君たち……良い戦いぶりだったよ!また手合わせ願いたいね!」

 アレスは美琴、牛頭、馬頭、納言の方へと近寄ると、両手を大きく広げた。4人は気まずそうに後ろに下がり、彼から距離を取った。

「ガブリエル……どうしてあなたはいつも……」

 ウリエルはガブリエルの耳を引っ張ると、まるで子を叱りつける母のように説教を始める。ミカエルとラファエルは、その様子を気まずそうに見ていた。

 その時、マカは何かを思い出したようで、あっと声を漏らして手のひらに拳をポンと置くと、

「そう言えば、ゼウス神が集まるように言っていましたね」

 と呟くように言った。それを聞いた神々はギョッとしたような表情を浮かべると、ゼウスのいる塔の方へと一目散に向かっていった。取り残された六道のメンバーたちは、ポカーンとその場に立ち尽くす。

「ゼウスってそんなに怖がられてるのか?」

 カンダタは、疑問を口にする。

「さあ……絶対神と言うからにはそうなんでしょうね」

 マカは、皮肉にも聞こえる回答をした。

 …………………………………………………

「さて……よく集まってくれたな」

 和やかに微笑みながら、ゼウスは言う。だが、神々の方は跪いたままで、何も答えない。相変わらず、六道のメンバーはそれをぼーっと眺めている。

「ほら!お前も跪けって!」

 ガブリエルは、小声でカンダタに向かって言う。だが、対するゼウスは

「跪かずとも良い。……さて、六道の諸君。今回のこと、深く感謝している。というわけで、お詫びをさせて欲しい」

 お詫び?どう言う形でするのだろうか。カンダタは首を傾げた。そして、ゼウスが出した回答はこうだった。

「風呂に入るのだ!」

 天高らかにゼウスは言い放った。

「……は?」

 カンダタは、思わず口に出していた。

 ………………………………………………
 カンダタ達が連れ込まれた風呂場は、男、女、そして天使に分かれていた。そう言えば天使に性別は無かったのだった。とカンダタは心のうちで納得した。

「いやー!良い湯だねー!」

 湯船に浸かりながら、額は嬉しそうに言う。こいつ、風呂に入れればなんでも良いのか。親父っぽさ丸出しじゃないか。とカンダタは目を細める。

「おっさんだらけで嫌になるっすよ……ねえ、時にそこのアンタ」

 ヘルメスは、ニヤリと笑みを浮かべ、カンダタを見る。彼は何かを察したようで、同様に笑い返す。

「よっしゃ、ノゾくか」

 カンダタはパン、と頬を叩くと、ヘルメスと共に風呂場の壁をよじ登り始めた。

「あーあーあー……またこう言う事しちゃって……」

 それを見ていたアポロンは、苦笑いを浮かべながら呟く。それを見ていたゼウスは、

「ふむ……英雄色を好むとは言うからの……私も若い頃は……」

 と何かを思い浮かべながら鼻血を垂らし始めた。

「止めないの?!ねえ止めないの?!仮にも神様だよね!なんだったら覗いたら殺されるよね!」

 納言は、その場にいる神様に総ツッコミを入れる。それを聞いたポセイドンは、

「ったく……ノゾキなんざくだらねえ」

 と言う。良かった、この人はまともだ、と納言が安心したのも束の間、彼はこう言葉を続けた。

「ヤりてぇんなら真正面からヤり合えってんだ」

 だめだ、こいつもヤベェ奴だ。神様全員やべぇ奴だ。納言は両手で顔を覆うと、心底失望したように湯の中に沈んでいった。

「よーし……もう少しで……」

 ヘルメスとカンダタは、壁の向こうへと手を伸ばす。塀の向こうにある、女の裸というロマンス。それを、今掴み取る……その時だった。

「おい、貴様ぁ……!」

 その手を、美琴が掴み取っていた。しまった、こいつはダメだった。

「マカの裸なんぞ君に見せてたまるか!この変態どもめ!」

 ヘルメスは、美琴によってはたき落とされてしまった。

「あーれー」

 と声を漏らし、彼は下に落ちていった。生き残ったのは俺1人。俺には、向こうの景色を見て!伝える義務がある。

「ああおおおお負けるかああああああ!!」

 カンダタは、美琴の静止を振り切り、塀の向こうへと顔を出した。よっしゃあ、来た来た来た。これで女の裸……を……

 塀の向こうにいたのは、ドライガルだった。彼は体をひねって

「やだ、えっち♡」

 と言った。ああ、そう言う事か。隣は女湯ではなく、天使湯だったのだ。カンダタは、ドサリと下に落ちた。


「……何をしてるのかしら、あいつら」

 ヘラは、ため息混じりに言う。

 昨日蘇生されたアフロディーテは、どう言うわけかマカの隣に座ってしまい、互いに沈黙してしまった。

「「気まずい……」」

 つい先日まで殺し合っていた仲。そうなるのは当然であった。

 ……………………………………………
 食事になり、カンダタはガツガツと食事を口に運んでいく。そのあまりにも野蛮な食事風景に、神々は顔を顰めていた。

「お前もうちょっとマナーってのを弁えろよ」

 ポセイドンは、そんな彼に対して言うが、本人は聞く耳を持たなかった。

「おい!それ僕の奴だぞ!」

 自身にもられた食事を取られた美琴は、カンダタにつかみかかる。ドンガラガッシャン、と食器の倒れる音がする。

「あなた達は……食料への感謝と言うものがないのですかーーー!」

 それに続くように、デメテルは、2人に覆い被さった。食事のマナーなど微塵も感じられないその状況に、先ほどまで厳格さを保っていたポセイドンはゲラゲラと笑い始めた。

「ギャハハハハハハハ!まあこう言うのもアリじゃねえか?」

「ま、見慣れてるっちゃ見慣れてるか」

 アテナは、どこか嬉しそうにそう言った



 食事が終わり、それぞれが自由行動が取れるようになった時、マカに対して、ウリエルは彼女の名前を呼んだ。

「マカさん……ちょっと良いですか?」

 マカは、ウリエルの手招きした方へとついていった。



「何ですか?何か話でも……」

 首を傾げるマカに対して、ウリエルは言い放った。

「単刀直入に言います。貴方は、普通の天使の生まれじゃない」

「……?!」

 マカは、驚いた。自分の不明な生まれについての話をされるのは、初めてだった。
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