この荒廃した世界は何故?

ワルシャワ

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終わりし世界

語られる真実

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病室に突然入ってきた男は、付呪をかけたあと、フードを外した。知らない男だった。しかし、男は、
おっと。失礼。人間の時はこの姿でな。と、言ってきた。次第に顔が変わっていく。ギルスタッドはしかめっ面になった。
ギルスタッドは静かに怒った表情を見せ、今更何のつもりだ。
ライセルよ。お前の仕業なのだろ?私をこの世界に飛ばしたのは。何故だ?私には息子を守る義務がある。
そういうとライセルは、
いや、落ち着け。仕方がなかったんだ。ギル、お前あの時何故落ちたのだ?
と、言った。
ギルスタッドはあの時は、確か馬が暴走して崖から落ちたはず。
と、返した。
ライセルは唾を飲む仕草をした。
ならば、言おう。
あれはお前を殺す為に仕組まれた事だと。実はな、私の手元にこんなものが届いた。私の信者がどうやら届けてくれたようでな。
そう言うライセルをよそに、ギルスタッドはまだ怒ってる表情をしていた。
ライセルはその表情に、
悪かった。お前にはまだ死んでもらう訳にはいかなかったのだ。あのまま落ちていたらお前は死んでいた。私の都合で、この世界に飛ばしたことは悪かったと思ってる。だが、聞いてくれ。私はいつも兄貴の影に怯えてる。兄貴が、いつか復讐しに来るのではないかと。それに、ミヤギユウキの背後にいる影はどことなく兄貴と似ている気がして、怖いのだ。だが、違う。兄貴では無いのは確かだ。似てはいるのだが、兄貴とも違うようなんだ。その経緯を話したい。聞いて貰えないか?
そう、ライセルは言った。
ギルスタッドは、
あぁ、分かった。良いだろう。
と言うと、
ライセルは2人きりで話したいのだ。五十嵐咲良さん、申し訳ないがと言いかけたら、
ギルスタッドは、
いや、彼女は私の旅仲間だ。居てもらう。なんなら、ミオも呼びたいが難しいだろうか?と、言った。
ライセルが、
待ってくれ。ミオと言ったか?
そいつはここにいるのか?
と言う。
いいか?良く聞け。あの女は信用ならない。怪しすぎる。
と、言い続ける。
ギルスタッドは、
何を言っているのだ?彼女はここに来て何も知らない私に色々と教えてくれた。
恩人だ。
なんてことを言うんだ。だろ?咲良君。と言ったが、五十嵐咲良は、先程から無言で聞いていただけだった。最初は、ライセルとお目通り出来て無言なのかと思っていたら、顔色がおかしい。
ライセルは、
やはりな。五十嵐殿、お主はあの女の異質な物を感じ取っていたのだな。それは、いつからだ?
そう聞くと、
初めて見た時です。とだけ、要件だけ話した。

ギルスタッドは、
おいおい、咲良君まで何を言っている?彼女と一緒に共にしてきた仲間だろ?仲間を信じないのか?

五十嵐咲良は、しばらく黙ってたが、
話し出した。

すまない。許してくれ。ギル。
私はただ、監視していただけなんだ。
あの女が、ギルになんかする気がしてな。
ギルスタッドは、
そんな!何を言う?ミオは、私を信じてくれてる良い子だ。
そう言い放った。
と、五十嵐咲良は、
それだよ。飲み込みが早すぎる。普通、疑い、距離を置くものだ。それも、異世界からやってきた得体の知れない見たこともない男を、どういきなり信じられると言うのだ?
第一、ギルはそう言うが何故?ミオとしか名乗らない?ギルも、これまで出会った人たち、苗字も名乗ってたのは知ってるだろ?なら、ミオにも苗字があるはず。よく考えてみろ?おかしなことが結構あったはずだ。それに、私は見た。
初めて彼女を一瞬山姥のような姿に見えたんだ。
あれは、人では無い。
と、まるで、見てはいけないものを見たような目つきで興奮気味に咲良が言った。
ギルスタッドは、
ヤマンバ?だれだ?それは。
と言った。
ライセルは、頷き、
ギル、お前はあまり知らないだろうがお前の世界でいう悪魔だ。
だが、妖姫に近い。
ギルスタッドは、
妖姫だと?そんな馬鹿な。そんな名前二度と聞きたくもない。
ライセルは、
確かにそうだな。お前にとってはお前の世界にある妖姫伝説の話は聞きたくもない話だろう。
確か、お前幼い頃見たんじゃなかったか?
五十嵐君にも話そう。
妖姫伝説と言うのが彼の世界にあってな。確か、オルテガミス共和国の西の果てにある森の民たちの間で伝わる話に妖姫伝説と言うのがある。
かなり大昔の話だ。
森となる前はある国があったと言われてる。その名はヤマフシノミコトと言う神から着想を得て名付けたヤマフシタイコクという国。建国者であるアーノリオンと言う男は、ヤマフシノミコトと言う神の名のもとに建国したと言う。
このアーノリオンには、跡継ぎとなる子宝に恵まれずヤマフシノミコトにお祈りをし続けたと言われてる。
巷では、太陽の国なんて言われたこともあったそうだ。それなりに、絹の名産国としても知られていたんだ。
ついに、生まれた子にはヤマフシノミコトへの感謝の意を意味して、美琴と言う名前をつけたのだ。この美琴と言う女性は、たいそう美しく育ち、ある男と結婚をした。政略結婚だ。当時、1番絶大な権力を持っていた国、の第二王子との結婚だった。アルレイディアの第二王子であったウィリアム王子は大層美しい美琴を溺愛していた。政略結婚ではあったがお互いに愛し合っていた。ウィリアム王子と、美琴の間に男の子と女の子が生まれた。男の子には、スティーブと名付け、女の子には澪と名付けた。
そして、時は流れて、スティーブ王子は跡を継いだ。父親ウィリアム王(通称:太陽王アナリアス)の死によって、継ぐことになった。そして、父親初代太陽王アナリアスから、太陽王アナリアス二世となった。だが、一方で、姫でもある澪には黒い噂が飛び交ってた。澪姫の周りで頻発したまちむすめの失踪事件。皆が澪を怖がった。
澪の美しさは母を超える。もしや、澪の美しさは自分より若い女を食ってるからではないのか?ってね。太陽王アナリアス二世はこの事態を終息させるため、議会のもの達含めて、この議会の中に、後に七頭ナナズの龍と呼ばれる組織の権力者が連なっていた。

ラーズグリーズ卿、アーベスト卿、ルーガス卿、ハルスブルグ卿、ロッシュフォール卿、グリフォン卿、魔王ゴルエデノアだ。この7人も連ねる。トータルで、25名もの議員たちが招集された。
そして、澪姫の裁判がかけられた。
だが、あの日私は主より預かりし言葉を現王に伝えるため初めて太陽国の元へ行った。
遅かったの一言としか言えない。実は見習いとして、太陽王の元を訪れた際に、見てしまったのだ。死刑宣告を受け、生首だけが横たわった澪姫をな。その場で、死刑宣告され実行された。犯人は別にいた。それは、太陽国が信仰の対象だった、自称、神と偽った怨霊、ヤマフシノミコトは、そもそも怪しさ満載の正体不明の怨霊。怨霊と分かったのは、その神と言われてるヤマフシノミコトの調査をしたからだ。調べたら、別の名前で知られていることが分かった。祟り神だ。元々、怨霊であったものが祟りをなして神となった女の怨霊、お吟。
お吟は、そもそも村娘の一人にすぎなかった。だが、運良く彼女の元に皇太子が嫁にしたいと誘いが来た。勿論、お吟は、受け入れた。だが、それが始まりとなった。皇太子の許嫁いいなづけになったお吟は村から卑しい目で見られるようになった。そんな目立たないお吟が将来安泰になることへの嫌味が増えてしまったのだ。そして、披露宴が執り行われたのだが、皇太子は村の連中を披露宴に参加させるよう言った。それもあって、披露宴には今まで卑しい言葉を言い放った連中もいた。披露宴の最中、村の長であった隆吉が皇太子を殺害した。皇太子は、即死だったようだ。そして、村の民衆はそれをキッカケに屋敷を襲った。お吟に隆吉は、良くやった。君は役立ってくれたよ。と、言ってきたそうだ。それでお吟は悟った。全て皇太子殺害の為に利用されたこと。だが、このお吟と皇太子は初対面ではなかったのだ。隆吉から語られた話は、到底信じられなかった。お前は元々王族の血筋がある。隠し子なのさ。お前さんの父親は、この皇太子の父親でもあるのさ。腹違いの兄弟ってわけよ。勝手なことを隆吉は言い出した。ニヤニヤ笑いながら、お前は生き別れた兄も含めて復讐のために殺したのだ。酷いことをするのぅ。でも、見捨てた皇太子一家が悪いから、同情するよ。
と、しわくちゃの顔で不気味に笑った。
遺言は預かってある。見届けてやるから、安心してあの世に行きなさいと、短刀を渡した。そして、最後にこう言った。お前の父親から受けたこの仕打ちは許しませぬと、隆吉はお吟の耳元で囁いた。
お吟がどう出るかは分からなかったが、隆吉の賭けは狙い通り、お吟は失意のうちに自殺を選んだ。
そして、隆吉は謎の吐血死。いつしか、こう言われるようになった、鬼首村と。この鬼首と言うのは、お吟の事らしいのだ。皇太子が帰ってこないことを受け、父親が率いる軍勢が村に来た時には村人は皆死んでいて、村の長と思われる隆吉らしき男が吐血して死んでいたのも目撃。そして何より、皇太子の亡骸に父親は嘆きに悲しんだ。だが、肝心の花嫁がいない。花嫁を探していたところ、軍勢の何人かが山姥のような鬼女の生首が浮遊してさまよってる姿を目撃。これが、鬼首村と呼ばれる所以となった。このお吟は、厄介なことに新たな犠牲を求めて、世界中を浮遊した。そこで出会った謎の男、その男はおそらく七頭ナナズの龍の信仰の対象であるタナベ様と呼ばれる男だろう。
タナベ様と言われてる男は、あろう事か、始祖の人ダンテなのではないかと私は勘づいてる。そして、その力を与えたのはヤマフシノミコトだろう。そして、始祖の人のうちの1人であるフォリアが力を貸した。フォリアが信仰していたのは時の神クロノス。ヤマフシノミコトは、クロノスにきっと変なことを吹き込んでいたかもしれないのだ。なぜなら、時の神クロノスは、主をよく思ってない神の1人だったから。
そして、これだ。
と、お前の元々の住んでた国に幽閉されていた男が信者でな。お前もよく知る男だ。シャガードを覚えてるか?
彼が、送ったんだ。
このハンカチがあったんだよ。お前が突き落とされた森で何人かがいたらしいのだ。
見てみろ。ハンカチの紋章を。
と、見ると鏡の中のある太陽を象った紋章だった。ギルスタッドには、すぐに分かった。その紋章のハンカチが意味するものを。
そもそも、ハンカチは、地球で作れるもの。ギルスタッドがそもそもいた世界にはハンカチはかなりの貴重品、いや国宝と言ってもいい。過去に、別世界からやってきた地球人が持ってきたものが国宝という扱い。そう。ギルスタッドの世界ては作れない代物。そして、紋章はヤマフシノミコトを信仰した国ヤマフシタイコクの紋章そのもの。つまり、それが意味するのは、この世界のどこかにギルスタッドをよく知る暗殺を目論んだ何者かがいる可能性があるという事だ。そして、おそらくそいつがミヤギユウキ、ヤマフシノミコト、ダンテ、タナベとも繋がっているということになる。
ただ、問題なのはそれが誰なのかだ。一番怪しいやつ、ずっと監視できる存在、すなわちそのミオって子だ。いいか?お前は彼女を信じてるかもしれないが警戒するに越したことはないということだ。
気をつけろ。色々不審なことが多い行動をしていたようだからな。彼女の行動も見させてもらったが今のところ変な行動はしてない。ただ、妙にお前に懐いてる事だ。そして、お前に殺されかけたと今入院していたな。それも嘘かもしれん。
用心した方がいい要注意人物であることに変わりはないのだ。そして、五十嵐君もちゃんと彼女を見張っとけ。後だ。言っておく。皆、お前の国ではお前は死んだものと思われてる。つまり、お前の国に介入してくる奴が現れる可能性もまたある。この前、私の信者が言ってたよ。次々に王室に仕えるものが死んでるそうだ。この一連の出来事はもしや世界の破滅への兆候かもしれない。私が信頼を置く神官が、それを調べてるから分かり次第私がまた来ることになるだろう。後、息子は元気に生きとるぞ。この前、あんたの妹が自分の息子に会いに来ていた。念の為、釘を刺したがきっと話してるだろう。仕方ないさ。
でも、息子がどう捉えるかが肝だな。まぁ、要件は以上だ。
じゃあ、またな。と、またついさっきの知らない顔になり、灰のように消えるのだった。

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