この荒廃した世界は何故?

ワルシャワ

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終わりし世界

怨霊の涙

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ギルスタッド一行は、その足で山を下り、北へ向かった。途中位牌が川沿いに現れた。よく見ると、そこに書いてあったのは、吉永菊この地に眠る。という文字。と、腐敗が進んだ看板があった。色々朽ちていて読めない部分もあったがこんな事が書かれていた。昔、ここの川に入水自殺をしたお菊という女性がいたと言う。その女性は、叶わぬ思いを背に入水自殺したというのだ。それは、生まれたばかりの息子の失踪。生まれた息子を大人になるまで育てると約束した亡き旦那。その息子は何者かに攫われ、生贄として捧げられてしまったのだ。母は今でも生贄の為に攫われた息子を探し求めながら、川を徘徊しているという文。突然、全員悪寒が走った。
と、流れる川の音が次第に女性の声に聞こえてくる気がした。だが、気のせいで川の音だけがしていた。そのまま、川沿いに北へ向かうと、突然ついさっきまで聞こえていた鳥の声が切れた。川の音もしない。最初は、耳がおかしくなったのかと思うと、今度は、オォという唸り声のような音がしてきた。それは、気のせいではなかった。次第に感覚もおかしくなり、そんな長くもない川が先の見えない無限に広がる川に見えてきたのだ。と、川が赤く染色していった。まるで血の川。また、目の前に侍のような首が折れ曲がった男が立っていた。その侍は、折れてしまってるからなのか話そうとしてるが話せておらず、喉を震わすのがやっと。そこへ、何者かの長い腕が川から現れて、侍を引きずり込んだ。川の方からお前じゃないと女の声が一瞬した。そうすると感覚が元に戻り、川も澄んだ色に戻った。
見てしまったものに驚愕した。だが、すぐに我に戻り足早に歩き始めた。しかし、またすぐあの感覚が戻った。川がまた赤くなり出した。急ぎ足でその場を離れようとしたが川に戻ってきてしまう。と、川からまたあの長い腕が伸びてきた。そして、どこにいるの~?私の子と声が聞こえた。と、声の主がついに川から顔だけ出してきた。異様に長い髪が顔を隠していたが次第に顔が見えてきた。ミオは完全に気絶していた。もうだめだと思ったが、どうやらギルスタッド達の事が見えてない様子。
こちらを見るが、そのまままた別のところを見るのだ。明らかに見えてなかった。どうやら、やはり異世界から来たギルスタッドのことが見えてない。そして、ギルスタッドといるとなのかミオのことも五十嵐咲良のことも見えてなかった。そのまま歩く事にした。だが、どうやら音だけは奴に聞こえてるようで、鳴る砂利には反応したようだった。だが、襲ってくる気配はなかった。そして、その女は逃げる鹿に取り憑いた。次第に鹿から髪の毛が生え始め、そして、顔つきも人間味が出始めた。禍々しいオーラを纏い、やってくる。
どうやら、見えているようだった。必死に走って逃げた。取り憑かれた鹿の足は早く、そして、人の発狂のようなうらめしいという声を発して襲いかかってきた。鹿は次第に人の形へと変えていった。そして、完全に女性の姿へと豹変した。女は血の涙を流し異様に長い爪で襲いかかった。納めていた宝剣が脈打ち始めた。そして、宝剣が鞘から勝手に抜いてその女の体を突き刺した。
それは鹿の姿へと戻り森の中へ逃げた。霊体に突き刺ささったままの宝剣は光り輝く。霊体となった女の怨霊は泣いていた。だが、宝剣にまとわりつく光から赤子の形の光が出てきた。
女は抱っこし始め、血の涙は光の涙へと変わっていった。その容姿は見つけた喜びで優しい顔になっていた。そして、赤子を抱っこしながら、こっちを見て女性は言った。怖い思いさせてごめんねという声が聞こえてきた。異世界より来たれり客人よ。持っていきなさい。私からの詫びです。なんと手元にアトランティスの心があった。そして、その女性は光と共に空へ消えた。
手元からアトランティスの心は宝剣に取り込まれた。宝剣がまた共鳴し始めた。と同時にギルスタッドにも異変が起きた。また、声が聞こえてきた。アトラスは来たれり破滅を招く。という、最初の共鳴より不気味な声で聞こえてきた。体が熱くなって、全身が痛くなっていった。宝剣は、大剣へと変わった。禍々しいオーラを纏わせた大剣の刀身は真っ黒になりグリップの部分はおびただしい数の手が絡み付いたグリップとなった。そして、ギルスタッドも姿の一部に変化があった。ギルスタッドの顔の半分が悪魔に一瞬なっていたが大剣に吸い込まれるように、瘴気が消え、元の顔になった。そして、意識を取り戻した。
意識を取り戻したギルスタッドは、そうか。そうだったのか。このままでは、母国は滅ぶであろう。エアリローゼも知っていたはずだ。息子とどうにかして話さなければならなくなったようだ。おい!いるのか?エアリローゼ!出てこい!と怒っていた。五十嵐咲良は、どうしたというのだ。何を怒っている?何があったというのだ。そう冷静にさせようとした。そこへ、エアリローゼが現れた。どうやら、様子がおかしい事を感じ出てきたようだった。
おい!エアリローゼ。貴様、知っていたのだな?我が母国オルテガミス共和国が滅ぶという事を。と、エアリローゼは、表情を曇らせた。落ち着け。ギルスタッドよ。あくまで、可能性があると言う事だ。確かに今のまま突き進めば滅ぶ可能性は十分にあり得る。しかし、問題はお前のいた世界に居てはいけない何かがいるということだ。そいつの正体、狙いがわからない以上、私も下手に動けない。ライセルが怯えているのはそいつが原因かもしれない。
だが、全て憶測だ。ライセルも身を隠している。だから、私も聞けないのだ。そっか。ここに棲みつく女の怨霊を鎮めたのだな。ここの女もミヤギユウキという男の犠牲者だ。赤子を取り上げ、生贄にした。目的は分からぬが。そいつは、得体の知れない奴であることはわかっているはず。かつては人であったがな。しかし、お前がそんな怒るとはな。分かった。ほんとは、いけないんだが。ライセルが私との盟約で渡した指輪を渡そう。まぁ、詫びとしてだ。すまなかった。だが、あまり怒るな。お前から感じたあの瘴気はお前を蝕む。上手くコントロールしろ。気をつけないと、周りを傷つける。と言って姿を消した。
五十嵐咲良が心配そうに見ていた。ミオも心配そうに見ていた。それで、自分を取り戻した。すまない。嫌なところ見せてしまったな。と、どこからか異臭がした。五十嵐咲良がどうやら近くに温泉が沸いているようだ。もしや、親父が言っていた施設があるかもな。と、川から離れ施設を発見したのである。
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