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三上陽子②
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バス停に降りると、二人は少し離れた交差点へ向かった。
メガマートは反対側なので信号を渡らなければいけなかった。
「大丈夫?」
さすがに話し疲れたのと久しぶりに外に出て歩いているため、陽子の息が少しあがっていた。
「うん。・・・・・雪、だいぶ解けたんだね。」
「そうね。」
まだ、ずっと日陰になっているところには多少の雪は残っているものの、道路にもメガマートの屋根にも全く雪はなかった。
そうしてメガマートまで来ると、
「じゃあ、お母さんは中のミルフェにいるからね。」
と言った。
[ミルフェ]はメガマート内にある洋菓子屋さんだ。
「分かった。・・・・・・・少し顔を出したら行くから。」
陽子はそう言って従業員口に向かった。
(用事で来られなかったのと違って、何か・・・変な感じ・・・・・)
そう思いながら戸を開けた。
「陽子さん!!」
矢崎の声がした。
どうやら昼食を食べ終わったばかりのようだ。
「あっ、矢崎君・・・お疲れ様。」
(ちょうど休憩だったのね)
中に入りドアを閉めるときに少しふらっとした。
「大丈夫なんですか?・・まだフラフラしているようですが?」
そう言って矢崎が近付こうとしているので、
右手で、止まって、という合図をするようにして、
「えぇ、とりあえずはね。・・・だめよあんまり近付いちゃ・・・・風邪が移ってしまうわ。」
そう言いながら、コートのポケットから素早くマスクを出してつけた。
「ちょっと資料を取りに来たの。すぐに帰るわ。」
そう言いながら事務所の方へ向かおうとしていた。
(でも、まだ、そこにいてね)
「ダメよ、近づいたら!!」
更に近づこうとしている矢崎にむきになったように言い、差し伸べようとした手を見て、いらないわ、というように手を振った。
(まだ休憩時間そうだから、とりあえず必要な資料を取ってきてしまおう)
陽子は事務所へ向かった。
(あったは、これこれ)
10分ほどしてファイルを持って出た。
従業員の勤務表に目を通しもしたので少し時間がかかった。
事務所から出ると、矢崎はこちらが見えるように椅子をずらして座っていた。
「車で来たんですか?」
心配そうに聞いてきた。
「いいえ、バスで来たわ。・・・さすがに運転はまだ無理そうだから・・・」
「言ってくれれば届けたのに!」
「そうは言ってもこのファイルはあなたには分からないわ。」
「まぁそうですけど・・・・・無理しなくても・・・・」
「ちょっと顔を見たかったし・・・・」
(えっ・・・・・何を言ったの?私)
「えっ?」
「いえ、何でもないわ!・・・それじゃあ、お店の方よろしくね。」
「それは大丈夫ですけど・・」
「あっ、明後日から実家に戻るのよね?・・・気を付けてね。」
「はい。・・・・・具合が直ったらパソコン買いに行きましょうね?」
(また近づいてくる・・・・・・え?)
「えっ?パソコン?」
「店長に聞いてないんですか?・・・倉庫のパソコン新しくしていいってことになって、陽子さんと二人で買ってきてくれって・・」
「そうなの?・・・・あのケチな店長がね~・・・・なんか家でも矢崎君の話してるから気に入ったのね、きっと・・・」
「そうですか・・・・とにかく、陽子さんの具合が良くなったらでいいですよ、楽しみにしてます!」
「フフ、本当にパソコンとか好きなのね!」
そう言って笑った。
(さっきはあんなに近づくなと言ったのに、もう・・・・・)
「じゃあ、行くわね。」
やはりふらっとしたが、倉庫のドアを開けた。
「お疲れ様でした。」
矢崎の声を後ろに聞いて、ドアを閉めた。
「なんか・・・・・・かわいい・・・・・・」
軽く呟いてしまった。
陽子の顔は微熱でも出たのか、少し赤らんでいた。
メガマートは反対側なので信号を渡らなければいけなかった。
「大丈夫?」
さすがに話し疲れたのと久しぶりに外に出て歩いているため、陽子の息が少しあがっていた。
「うん。・・・・・雪、だいぶ解けたんだね。」
「そうね。」
まだ、ずっと日陰になっているところには多少の雪は残っているものの、道路にもメガマートの屋根にも全く雪はなかった。
そうしてメガマートまで来ると、
「じゃあ、お母さんは中のミルフェにいるからね。」
と言った。
[ミルフェ]はメガマート内にある洋菓子屋さんだ。
「分かった。・・・・・・・少し顔を出したら行くから。」
陽子はそう言って従業員口に向かった。
(用事で来られなかったのと違って、何か・・・変な感じ・・・・・)
そう思いながら戸を開けた。
「陽子さん!!」
矢崎の声がした。
どうやら昼食を食べ終わったばかりのようだ。
「あっ、矢崎君・・・お疲れ様。」
(ちょうど休憩だったのね)
中に入りドアを閉めるときに少しふらっとした。
「大丈夫なんですか?・・まだフラフラしているようですが?」
そう言って矢崎が近付こうとしているので、
右手で、止まって、という合図をするようにして、
「えぇ、とりあえずはね。・・・だめよあんまり近付いちゃ・・・・風邪が移ってしまうわ。」
そう言いながら、コートのポケットから素早くマスクを出してつけた。
「ちょっと資料を取りに来たの。すぐに帰るわ。」
そう言いながら事務所の方へ向かおうとしていた。
(でも、まだ、そこにいてね)
「ダメよ、近づいたら!!」
更に近づこうとしている矢崎にむきになったように言い、差し伸べようとした手を見て、いらないわ、というように手を振った。
(まだ休憩時間そうだから、とりあえず必要な資料を取ってきてしまおう)
陽子は事務所へ向かった。
(あったは、これこれ)
10分ほどしてファイルを持って出た。
従業員の勤務表に目を通しもしたので少し時間がかかった。
事務所から出ると、矢崎はこちらが見えるように椅子をずらして座っていた。
「車で来たんですか?」
心配そうに聞いてきた。
「いいえ、バスで来たわ。・・・さすがに運転はまだ無理そうだから・・・」
「言ってくれれば届けたのに!」
「そうは言ってもこのファイルはあなたには分からないわ。」
「まぁそうですけど・・・・・無理しなくても・・・・」
「ちょっと顔を見たかったし・・・・」
(えっ・・・・・何を言ったの?私)
「えっ?」
「いえ、何でもないわ!・・・それじゃあ、お店の方よろしくね。」
「それは大丈夫ですけど・・」
「あっ、明後日から実家に戻るのよね?・・・気を付けてね。」
「はい。・・・・・具合が直ったらパソコン買いに行きましょうね?」
(また近づいてくる・・・・・・え?)
「えっ?パソコン?」
「店長に聞いてないんですか?・・・倉庫のパソコン新しくしていいってことになって、陽子さんと二人で買ってきてくれって・・」
「そうなの?・・・・あのケチな店長がね~・・・・なんか家でも矢崎君の話してるから気に入ったのね、きっと・・・」
「そうですか・・・・とにかく、陽子さんの具合が良くなったらでいいですよ、楽しみにしてます!」
「フフ、本当にパソコンとか好きなのね!」
そう言って笑った。
(さっきはあんなに近づくなと言ったのに、もう・・・・・)
「じゃあ、行くわね。」
やはりふらっとしたが、倉庫のドアを開けた。
「お疲れ様でした。」
矢崎の声を後ろに聞いて、ドアを閉めた。
「なんか・・・・・・かわいい・・・・・・」
軽く呟いてしまった。
陽子の顔は微熱でも出たのか、少し赤らんでいた。
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